「旧西廣家住宅」の一般公開を見学。銚子漁業を支えた西廣家の近代建築 -銚子38
「旧西廣家住宅」を念願の見学!
銚子漁業を支えた船主の一人である西廣治郎吉。その主屋や納屋、缶詰工場が現在も銚子の裏通りに現存しています。
旧西廣家住宅の見学会
千葉県銚子市川口町1丁目6271。銚子電鉄「笠上黒生駅」から歩いて、旧西廣家住宅へは、歩いて20~30分くらい。駐車場もあるので車でもOK。
一般公開日:毎月第2・第4日曜日 10時~15時30分
見学料:無料
国登録有形文化財に登録されている旧西廣家住宅は、月に二回ほど公開されている。
以前訪問した際は、外観だけ撮影して記事をまとめた。→銚子漁業を支えた国登録有形文化財「旧西廣家住宅」と缶詰工場 -銚子32
しかし、やはりどうしても訪れたい!と母と思ったので前回から2か月後に再訪問したのだった。今回は歴史は割愛し、見学の様子をレポートします。
旧西廣家住宅 主屋
旧西廣家住宅は、4棟1基(主屋、缶詰工場、倉庫(北倉)、倉庫(南倉)、煉瓦塀)が国の登録有形文化財に登録されている。
敷地の南側にある主屋へ。
門を通り、右手に主屋がある。見学会の際は扉が開いており、スタッフの方が数名いるので案内していただける。
主屋の向かいにある比較的新しい建物は、10年ほど前まで住まいだったそう。
主屋は、入るとまず広い土間が広がる。右手は後で紹介する倉庫と繋がっている。
土間に大きくあいた穴と、網。かつてはここで捕獲した魚を広げていたのだろうか。スタッフの方に聞いたが用途はよく分からないという。
土間から数段高い主屋の座敷。ここから先は、昔働いていた一般の従業員等は入れず、目線が高い座敷から、創業家が指示を出していたという。
土間を入ると二間。左手に縁側、台所や浴室があったと思われる。
昔の銚子の写真展が開かれていた。
こちらは、大正生まれで御嶽丸(西廣家の船)で働いていた方が保管していた羽衣。
色褪せることなく、鮮やかな鶴と亀が描かれていて素敵。
奥のふすま、障子には歌が描かれている。
廊下を進み、奥の部屋へ。1階は3室ある。
廊下の真ん中あたりにお手洗いがある。扉も「WC」のプレートも全部良い…
主屋も最近までご家族が住まわれていたので、お手洗い自体は新しいものだった。が、壁がタイルなのは昔の名残だろう。
6代目が幼少期住んでいたそうで、柱には落書き等も残る。最近になってこの建物を売却したそうだが、銚子資産活用協議会事務局(銚子市教育委員会社会教育課文化財・ジオパーク室)が管轄しているようだ。
1階の奥の部屋にはエアコンや大きな箪笥がそのまま残っている。この部屋である洋館1階~2階は増築部分となる。
次は2階へ。階段は昔ながらの急な階段だ。
増築部分についての詳しい説明は以下の通り。
2階は先ほどの雰囲気とガラっと変わって、洋風に。
見所は角にせり出した洋間。応接間のようなモダンな雰囲気…
赤い絨毯に縦長の窓。完全に洋館だった。
立派な桐たんすが残っていたが、こちらは重すぎて運搬が難しいとのこと。
かつてはどのような部屋として使われていたのだろう。
洋館2階はさらに贅を凝らしたつくり。
船と海…銚子の風景が表現されているのだろう。
こちらは、犬吠埼灯台が描かれている。中央にある三角のものは網を広げている様子だろうか。
こうした風景が表現された建具は、稀に見かけることがあるが、滅多に無い。
大きな窓から入る陽射しが心地よい。うーん、見学を忘れてぼーっと景色を眺めていたい。初めて訪れたのに、なんだか落ち着く空間だった。
二階からは缶詰工場の奥にあった建物を解体している様子が見えた。今後さらに整備する予定とのこと。
人懐っこい猫がうろうろ。銚子は人も優しいが、猫もまた同じ…
昭和初期のレトロな旧缶詰工場
主屋の隣には昭和初期に建てられた旧缶詰工場が残っている。
2階は増築、従業員の部屋として使われていたそうだ。
旧缶詰工場の平面図。
主屋と隣接。すぐに行き来できる。
柱が少し曲がっているのはご愛嬌…
中央にはコンクリート製の四角い水槽?
建物内から見た二階。
江戸時代の納屋
旧缶詰工場の向かい、東側には江戸時代末期に建てられた納屋が2棟残っている。
特に瓦。これらは銚子で生産された「銚子瓦」だという。「銚子時間」を見ると正式名称は「黒生瓦」?
江戸時代末期、福井県から移住した柳屋が黒生から産出する粘土を利用し、瓦作りを始めたといわれ、当時、黒生瓦は三州瓦に匹敵するとの評判でした。市内には、今なお黒生瓦を葺いた住宅が僅かに残っています。
粘土地層でつくられた瓦は、現在も2軒瓦屋があるというが、貴重な物である。外川の街並みでも使用されている。
2棟は双子のように同じ外観、かと思いきやよく見ると作りが異なっているので実際に違いを観察してほしい。
それぞれ「北倉」「南倉」と名称がある。
今回は納屋の内部も見学させていただいた。
内部は暗いので懐中電灯で照らしながら見学。最近まで、倉いっぱいに荷物が入っていたという。
また、建物だけでなく敷地を囲む外壁はレンガ造りなのだが、その下部が石造り。こちらは銚子の「銚子石」が使用されているらしく、先ほどの瓦と同様に貴重なもの!
「銚子時間」より銚子石
約1億3,000万年前に堆積した砂岩のことで、犬吠埼周辺から長崎海岸を中心に愛宕山中腹で採掘されました。古くは砥石や供養塔、建築資材として使用されていました。1856年(安政3)には江戸へ3万斤の砥石が送られた記録が残っています。
地産地消ではないが、銚子で生産された瓦や石を使用した旧西廣家住宅は、まさに銚子を代表する近代建築だった。
(訪問日:2022年1月)
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