近代建築「銚子市公正市民館」。大正築、空襲を生き残った建物 -銚子⑼

銚子を代表する近代建築、そして戦争遺跡としても貴重な建物である「銚子市公正市民館」。
現在も市民の憩いの場として活用されており、歴史を感じる建物内を見学しました。
銚子の巨大レンガ壁へ
千葉県銚子市新生町2丁目1−5。「銚子市公正市民館」、私はその裏手に来た。

石碑には、皇太子…と文字が書いてあるがよくわからず。

そして、圧倒される光景が広がっていた。新緑の緑と煉瓦。この組み合わせはなんて美しいんだろう…

写真だとわかりづらいが、かなり高さのあるレンガ壁。3m以上ありそうなくらい。

所々に、部品が残っている。また、レンガが焼けたような跡も。

そしてそのレンガ壁は、表通りまで続いている。
公正市民館からは距離が離れているので、もしかしたら隣の邸宅のために造られたレンガ壁なのかもしれない。壁の向こうに建物が見える。

公正市民館の裏にある建物は、銚子公正図書館。

レンガ壁のことを調べても記事に書いている人がいなかったのだが、こんなに素敵なレンガ壁が綺麗に残っていて感動した。

表通りにはレンガ壁が無いので、図書館の横だけ一部残っていることになる。

レンガ壁がある邸宅は、地図で見ると広大な敷地。入り口はレンガ壁とは反対側にあった。
表札には公正市民館を建てた濱口氏と同じ名前。もしかしたら現在も変わらずにご家族が住まわれているのかもしれない。
銚子市公正市民館の歴史
そして、ここからは見逃せない「銚子市公正市民館」について。最寄り駅は銚子電鉄「仲ノ町駅」?銚子駅からも歩いて行ける。ヤマサ醤油本社の北側にある。

手前の橋も含めて、ここだけ時代が止まったかのような空間。時空の歪みを感じるようだった。というのも、この建物は銚子空襲を免れて残った建物。

橋は、「復興橋」と呼ばれ、昭和31年竣工の橋だそうだ。
旧公正會館として、文化庁の説明看板が設置されている。

旧公正會館は、財団法人公正會によって1926年(大正15)4月10日に竣工し、同年4月12日に開館した「公正會館」(図書館機能を含む)という社会教育施設です。財団法人公正會は、現在のヤマサ醤油株式会社の10代目濱口儀兵衛が中心となり、社会教育事業の経営を目的に私財を投じて1925年(大正14)に設立した財団法人です。ここでは、夜間中学公正學院と公正圖書館の設置運営、講堂利用による各種社会教育活動が行われました。1948年(昭和23)に財団法人公正會は解散し、全施設が銚子市へと寄贈されました。
現在のヤマサ醤油株式会社の10代目が建てた建物。濱口氏の胸像も建っている。

鉄筋コンクリート造2階建てで、銚子市内で現存するものでは最古だと考えられているという。
昭和20年7月20日の空襲で、銚子の街の大半が焼け野原になったそうだが、この建物は奇跡的に残り、臨時病院として利用された。戦争遺跡としても注目したい建物。
銚子市公正市民館(旧公正會)の魅力
シンプルながら、魅力的なつくり。一つ一つ丁寧に見て行こう。
上を見上げると、小さなファサードにはレリーフ装飾。

丸みを帯びたフォントも可愛らしい。

縦長の窓がずらり。入り口は太い円柱が構えており、重厚感のある造り。

建築当時からあまり変わっていないという外観。当時の状態のまま、綺麗に保存されていることが素晴らしい。
入り口の天井。照明は新しいものになっている。

銚子市公正市民館の館内へ
銚子市公正市民館の館内へ!
入り口
入り口にある円柱。こんなに太い橋はなかなか見れるものではない…
入り口を囲む雷紋…圧倒されるなあ。

銚子市シルバー人材センターの看板。左には案内図があった。3階まで利用されているらしい。


公正とは、私事を捨て大衆を基とし、最も公平に正しく運営して行くために、公正の名称を用いた。
100年近く前に大衆のことをこれほどまでに考えて力を尽くしていた方が銚子にいたとは…現在の日本はどうだろうか。
ステンドグラスが美しい
入り口で思わず目を見張ったのは、ステンドグラス。

裏から見ると、光に照らされて美しく浮かび上がっている…天女と3人の子供?桜の木に集まる姿が微笑ましい。

よく見ると、木製の扉の金具にもデザインが…!ベルと草木みたいな細かい意匠。

扉も良い味を出している…

入り口の床。手前は大理石かな?褒め言葉だけど、完璧に綺麗にしすぎていないところが建物の本来の良さを引き出している気がする。

館内の様子
館内を少しだけ見学。廊下には珍しい木製の長椅子。

2階へと続く階段。ワクワク。

この日は利用客が少ないようで、館内にはほとんど人がいなかった。とても静か。
2階を上がると、講堂があった。

会議やイベントが行われるのだろうか。シックな椅子が素敵。
隣の部屋に置いてあった丸いテーブルは何に使うのだろう。

館内は特に印象的な意匠などはなかったが、昔ながらの公民館、ビルの雰囲気で懐かしく感じた。
少し歩くと、ミシミシと廊下の軋む音。もしかしたら、板の下は木製のままなのかもしれない。

お手洗いを借りた。外観だけでなく、館内も綺麗に保存されていて地域で愛されている建物だと感じる。

銚子の近代建築
戦災に免れた貴重な近代建築。

建物の周りの塀が一部だけ残っていた。

いつまでも残ってほしいな…
そういえば、国登録有形文化財には登録されいない様子。これからの動向をチェックしたい。
マルミ洋傘店
旧公正市民館の向かい側で気になった建物。マルミ洋傘店。

洋傘の専門店って珍しいなと思っていたら、看板に「雨具のデパート」と書いてあり、時代を感じる。
背後には、ヤマサ醬油株式会社の工場。


次回は飯沼観音方面へ。
(訪問日:2021年6月)
-
前の記事
本通り商店会、裏道の「マルフク味噌」蔵、新生仲通りへ -銚子⑻ 2021.11.11
-
次の記事
「銚子銀座通りココロード」飯沼観音の門前商店街として発展 -銚子⑽ 2021.11.12
コメントを書く