銚子漁業を支えた国登録有形文化財「旧西廣家住宅」と缶詰工場 -銚子32

銚子漁業を支えた国登録有形文化財「旧西廣家住宅」と缶詰工場 -銚子32

銚子漁業を支えた西廣家。その旧西廣家の住宅と昭和初期の缶詰工場、さらに江戸時代末期の納屋が、現在は一般公開されている。平成30年には国の登録有形文化財に登録され、近代建築が好きな方にも訪れてほしい場所。

銚子電鉄「笠上黒生駅」・御嶽神社

千葉県銚子市笠上町。銚子電鉄「笠上黒生駅」から歩いて、旧西廣家住宅へ。歩いて20~30分はかかるかもしれないが、途中の散策も含めて楽しもう。

「笠上黒生駅」は皆さん読めますか?

笠上黒生駅

「かさがみくろはええき」です。

笠上黒生駅構内

大正14年に開業し、なかなかレトロな駅舎だ。

また、廃車となった車両が物置として利用されているらしい。

奥には廃車

駅から旧西廣家住宅へ向かうまでの道中は比較的新しい街なのか特に発見は無く。旧西廣家住宅の隣にある御嶽神社に辿り着いた。

御嶽神社

こんな鬱蒼とした小高い山に神社が…夏だったら進むのを躊躇しそうな竹林を進む。

御嶽神社の境内

こんな原風景がまだ残っているとは…土を踏みしめる感覚が嬉しい。街灯とかは無いので夜は真っ暗だろう。

参道沿いには大正時代の古い石碑も。この佇まいは、人工的に作り出せる技ではない…!

大正時代の碑

竹林を抜けた先に御嶽神社の本堂があった。こちらは整備され、参道も舗装されている。どうやら私が歩いたのは裏参道のようで、表の鳥居はまた別にあるらしい。

整備されていた
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旧西廣家住宅の歴史

そして、御嶽神社の西側すぐ隣にあるのが旧西廣家住宅。道路沿いに案内があるので迷わずに済むと思う。

ちょっと分かりづらいかもしれないが、この細い道を奥に進むと旧西廣家住宅。以前は手前にも住宅が並んでいたようだが更地になって見晴らしがよくなった。

奥に旧西廣家住宅

まず、旧西廣家住宅の歴史について。千葉県教育委員会の「旧西廣家住宅(治郎吉)主屋ほか」のページが詳しい。平成30年に4棟1基(主屋、缶詰工場、倉庫(北倉)、倉庫(南倉)、煉瓦塀)が国の登録有形文化財に登録された。

概要
銚子を代表する船主の住居および作業場。初代は江戸末期に紀州から移住。2代目治郎吉(じろきち)が漁業を始め、イワシ漁を営みながら鰹節製造や、一時期はイワシ、サンマ、サバの缶詰加工を行った。漁業を始めた2代目の名から、屋号を「治郎吉」という。
主屋は平屋建の「本館」と増築部分の2階建、「総檜」「洋館」からなる。豪壮な本館と、付書院(つけしょいん)に犬吠埼の風景をあしらうなど細部意匠を凝らす増築部分が対照的である。缶詰工場は2階に事務室や座敷を配する2階建部分と工場部分からなり、工場部分は木造トラスの大空間とする。倉庫(北倉・南倉)は慶応年間建築の伝承を持ち、正側面三方に深く下屋を延ばし開口部の少ない閉鎖的な構成。漁業の歴史を今に伝える特徴的な漁網倉庫である。

治郎吉漁業倉庫。屋号の「治郎吉」が使用されている。

治郎吉漁業倉庫

銚子は1945年の大空襲によって多くが焼失しているが、ここ西廣家住宅は火を免れて現在も主屋、納屋2棟、缶詰工場の建物が残っている。

毎月第2・第4日曜日、10時~15時30分に一般公開が行われているので気になる方はぜひ。

江戸時代末期の納屋

敷地の東側にあるのが、江戸時代末期に建てられたという納屋2棟。漁網の保管場所として建てられた木造瓦葺の建物である。その後は貯蔵庫に。

全く同じではないが、対になっているつくり。

夕陽に照らされて

向かいの西側にあるのが、昭和初期に建てられた缶詰工場。痛みの早い鰯を保存することを目的として、水産缶詰工場が稼働を開始したそうだ。

一般公開の際は内部も見学することが可能。この日は外からのみ見学した。

昭和初期の缶詰工場
窓が良い~~

手前の木造2階建ての2階部分は事務室や従業員が寝泊まりする部屋をつくるため、昭和10年に増築。

缶詰工場の裏手

レンガ塀も一部現存。こちらは、大正末期から昭和初期にかけて建立されたそうだ。

大谷石と銚子石(砂岩)製の基礎にも注目!銚子石が現存しているのは珍しいと聞いた事がある気がする。

大谷石と銚子石(砂岩)製の石積基礎

西廣家住宅主屋の裏側。

明治10年に建てられた木造平屋桟瓦葺寄棟造の本館と、昭和12年築の総檜の洋館。また次回の見学会の際に詳しくご紹介します。

本館の裏側

最近まで住まいとして使用されていたそうで、保存や一般公開の道を選んでくださったことに感謝!外観だけでは足りず、後日一般公開日に改めて訪問することを母と決意したのだった。

煉瓦塀と本館

その後、旧西廣家住宅の近くの裏道を歩いていると野良猫がたくさん。地図上には道すらも無い場所。ディープなエリアだった。

 

(訪問日:2021年11月)

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