長南町「笠森観音」。本来の表参道沿いに残る茶屋や旅館の面影
長南町の「笠森観音」、表参道をご存知でしょうか?
歴史ある寺院は門前の街並みや旅館に注目してしまいたくなるのは歴史好きの方であれば共感してくださりますよね…ということで、今回はネット上でもあまり情報が無い裏?参道的な道を歩いて境内へ向かいます。
「笠森」国道沿いのバス停より
千葉県長生郡長南町笠森。笠森観音は駐車場が参道前にあるので、車で訪れる人が多いと思うが、国道409号沿いに小湊バスの「笠森」バス停がある。茂原駅東口行き。
バス停の裏にあるのは元石材店。周辺には元商店と思われる建物がいくつかあったが、国道は交通量が多くて立ち寄る人もほとんどいないだろう。「鈴木食堂」も営業していなかった。
歩道も狭いので歩くときは注意。
私は郷土史を研究していて、寺院自体にではなく周囲の門前や旅館に興味があるタイプなので、笠森観音の周辺にも知られていない裏参道や旅館があるのではないかと推測した。
そして、バス停から少し東側に笠森観音の表口とは異なる門柱が二本建っているのを見かけた。
門柱には「笠森寺」と名称が彫られている。もしかしたら、車が通るのに邪魔になって表口側から移設したものかもしれないが。
門柱の横には金具がついていたような痕跡が見られるので、門の扉が昔は存在したのではないだろうか。そういう想像をするのが楽しい。
そして門柱を通って、笠森観音へ。笠森観音の古い案内看板を見るとここから先が、表参道になっている。
笠森観音について記事を書いている人はたくさんいるのに、この通りについて触れている人がいないのは不思議。
とはいえ、閑静な住宅街でひっそりとしている。郵便ポストと長谷川商店が唯一営業している。
自然災害の影響か、屋根瓦が剥がれてしまっている土蔵。
残念ながらタバコ屋も営業していない。
元旅館?表参道の門前的街並み
長谷川商店からゆるやかな上り坂になっていく。
何も門前の痕跡を見つけられないのかな…と思っていたところ、
こちらに入り口を向ける扉があった。石畳と門扉が良い雰囲気!
これは門前旅館では?!
そう思ったのが、まずは趣のある雰囲気。門扉の意匠も一般の民家にしては凝っているなと思った。屋根上には屋号?「ヤマニ」かな?
そして、門扉だけではなく道沿いに広い入り口と中央に大きく玄関がある二階建ての建物。そして時代を重ねてきたであろう松の木などが中庭を彩っている。
外からでは玄関先が良く見えないが…
中庭には灯篭らしきものも。今は草木で茂っていて、空き家なのかもしれない。惜しいな。
検索しても全く情報が無いが、遠方から訪れる人も多かったと思うので旅館があると親切。町営駐車場そばにある建物は元旅館のようだが…
もし営業していたら泊まりたかったなと思う。
1949年発行『全国市町村便覧』(全国教育図書)「全国旅館等級別一覧表」にて旅館を調べてみる。(ランク1が最高)
廳南村 6 野村屋
水上村 6 笠森電気温泉
廳=庁。関係がありそうな場所を挙げたみたが、笠森電気温泉とは何だろう。旅館が意外と少なくて驚いた。もっと昔の戦前の資料を調べないと分からないかもしれない。
そして並びには、もう一軒気になる建物があった。
衛生デー。茂原保健所管内食品衛生組合の看板があるので、元飲食店だろうか。このホーロー看板自体も古そう。
そのほかに店名が分かるようなものは残っていなかったが、参道側の飲食店として昭和期は営業していたのだろう。もし覚えている方がいたら教えてください!
追記:『房総の街道繁盛記』(山本鉱太郎)より
『房総の街道繁盛記』の笠森観音の項に、上記の飲食店に関連すると思われる情報が載っていた!
茶店で甘酒を飲んで一休みしてから急な坂道を登る。
急な坂道というのがこの後の崖の切通氏の事を指しているので、甘酒が飲める茶店が存在したことが判った。嬉しい。本が出版されたのが1999年なので、20年以上前は茶店が営業していたのだ…
左てんいは駐車場?と防空壕のような穴が開いていた。
笠森寺 参道切割り
そしてここからは、県立自然公園笠森山の入り口。
参道は山を開いて通した、切通になっているようだ。観光客の姿は他にいなかった。
熊野神社近くのこちらの道が表参道で、町営駐車場がある方は女人坂とのこと。確かに女人坂の方がなだらかなので、広い駐車場も女人坂の方につくったのかも。
というと、昔からの参詣道は切通のある表参道ということになる。が、現代の人はそんなことを気にしている人も少ないのだろう。
深くて少し急な表参道をのぼって、笠森観音へ。
次は、一般的なルートを辿る参拝ルートから歴史探索へ。続きます。
(訪問日:2021年12月)
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