「大宗旅館」。築地に残る木造旅館!昭和初期の商人宿へ宿泊した記録-築地

「大宗旅館」。築地に残る木造旅館!昭和初期の商人宿へ宿泊した記録-築地

築地に「大宗旅館」という昭和初期の旅館が営業しているのをご存知でしょうか?

実は、1年前に築地周辺を探索した際に気になっていた旅館。宿泊したツイートをするとかなりの反響があったので、前倒しして記事を書くことにしました!ぜひ気になった方は宿泊してみてください!

築地「大宗旅館」に宿泊してみよう!

東京都中央区築地7丁目10−5。東京メトロ日比谷線「築地駅」から徒歩10分ほど。閑静な住宅街の中にひっそりと佇む旅館がある。

築地7丁目

ここが今回宿泊した「大宗旅館」。なんと左には新しいアパホテルが建っている…

隣はアパホテル

元々気になっていたものの状況が落ち着いたら宿泊しようと思って1年が経過してしまった。

電話予約しか受け付けていないので、約1週間前に電話すると愛想の良いおばあちゃんが出た。予約はすんなりと出来て、その後に「どこから来るの?」「その街は○○だわ~」などと世間話も進んだ。予約の際に長話になる旅館は珍しい…

夜も風情がある

そして宿泊当日、17時頃に到着。何度見ても素晴らしい佇まいだ…ワクワク。

入り口

ガラガラ…と扉を開けて建物内へ。

玄関

入っても静かで「あれ?不在?」と思っていたら、壁にキツツキの仕掛けが…

呼び鈴的な

文字通り強く叩いてみると奥からおばあちゃんが出てきて、部屋へと案内してくれた。

素泊まり6千円。予約は電話のみ。

料金
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「大宗旅館」の歴史について

まず、大宗旅館の歴史についてご紹介。

大宗旅館

1年前に記事にまとめたので詳しく知りたい方は↓を確認ください。
築地「大宗旅館」路地裏にひっそり残る築90年の老舗旅館。築地の旅館に泊まりたい -築地⑴

看板

現在の建物は昭和3~4年。約90年の歴史がある木造2階建て。旅館としての創業は昭和5年(1930)。

ぼくの近代建築コレクション」には昭和60年の貴重な写真が掲載されている。「ブラタモリ」などテレビでも紹介されたことがある。

元々は民家だった建物であるため客室は2組…と聞いていたが、実際に確認したら4室あった。思ったより部屋数多いと思ってびっくりした。

旅館大宗

住所が書かれたホーロー看板が残っている。
「中央區 小田原町1丁目3番地7」と書いてあるのが旧町名。

ホーロー看板

そして、近くに聖路加国際病院があったため、第二次世界大戦の空襲を逃れたといわれている地域。都心で木造2階建ての商人宿が残っているなんて信じられない光景だけど、令和の現在も営業中なのだ。

部屋

元々は海産物問屋、仲買人として仕事をしておりそこから旅館業を始めたという経緯を聞いた。築地市場も近いので関係者が宿泊に来たのかもしれない。

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宿泊した部屋

今回宿泊した部屋は、階段を登ってすぐの8畳和室。扉が思ったよりもスムーズに開閉できるので驚いた。

宿泊した部屋

広角レンズで撮影した部屋の様子。

広角レンズで撮影

エアコンもコタツもあるので寒さも平気!木造2階建てなので寒さを心配していたが一安心…

コタツ
暖かい~

水色のガラスの灰皿も美しい…

ガラスの灰皿

浴衣の羽織も用意されている。これでしっかり暖かい!

羽織

入り口の近くにテレビ。

テレビも

テレビの上の壁には竹に透かし彫り。

竹の透かし彫り

部屋の欄間にも細工。こちらは流れる川を表現しているのかな。

細工に惚れ惚れ

そして奥にあるのは広縁(ひろえん)。テーブルと椅子が2つ置いてある。夜はここで団らんしようと決めた。

広縁

朝撮影した広縁の様子。太い一本の柱が印象的だった。

広縁の天井

広縁から見た外の景色。
うーん、向かいは高層マンションで味気無さを感じるが、昔はどのような景色が見えたのだろうか。

広縁からの景色
手摺

庭にある木に鳥が来た。広縁に座りながら鳥のさえずりに癒される。

庭に鳥が

鍵は内鍵のみ。

内鍵

他にお客さんもいなかったので特に鍵は気にしなかった。鍵が無い旅館もあるし、鍵がついているだけましかなと。

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廊下&階段

2階から見た階段の様子。壁はピカピカの状態。最近新しくしたのだろうと思う。

階段

もちろん旅館全体は古いけれど、埃や汚れなどは一切気にならず。古いけれど綺麗に保たれ、修理されている状態に感動した。

2階の廊下

階段の勾配はあまり気にならなかったので、昔にしてはなだらかな階段なのかもしれない。

手すり付き階段

部屋の目の前にある棚に歯ブラシセットやドライヤーなどが置かれていた。

宿泊した部屋の奥にもさらに階段があり、そちらはベランダへ繋がっているとのこと。

ベランダへ

廊下には左右に押し入れ、中央に洗面所がある。

廊下の様子
洗面所の天井

洗面所は、白と水色の丸いタイル張り。石鹸も用意されている。

洗面所

ちなみに、2階には男性用の和式便所のみ。女性は1階しかないのでご注意を。

男性用のみ
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他の客室へ

廊下の奥には他に3部屋ある。今回宿泊している人がいなかったので「どの部屋を使っても良いよ」言われた。一人占めできるなんて贅沢!

廊下の奥

まず手前にある部屋。6畳の和室。

6畳和室

黄色の紅葉?が全面に描かれた襖が部屋に良いアクセントを残している。

襖が綺麗
紅葉の襖

さらに奥の部屋へ。右の部屋は3号室で店員は2名と書いてあった。一応部屋には番号が振り分けられているようだ。

部屋の番号

襖の上の部分についている内鍵。回転させる仕組み。

内鍵

8畳の和室。床の間もついている。今回はこの部屋に蒲団を敷いていただいた。

8畳和室

窓が2か所、角部屋なので風が強いとガタガタと音が鳴ってしまうが、普段から旅館に泊まっているので慣れていて気にならず。

その隣は6畳の洋室。洋室には椅子が置いてあり、妙に落ち着く部屋だった。

6畳洋室
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1階、洗面所&風呂

順番が逆になってしまったが、1階を御案内。

階段

階段の近くに小さな洗面所と男性、女性用の和式トイレ。

階段から見た景色

「昭和初期の暮らしを体験できる旅館ですよ」と女将さんが話していたけど、まさにその通り。

トイレ内にはタイル、そして今は珍しい下駄が設置されている。

和式トイレ

以前、陶器製の備え付けのスリッパを見たことがあるが、下駄は初めて見たな~!

そしてお風呂はこちら。

お風呂

舟形天井…これを見れただけで今回宿泊して良かったなと思った。照明も昔のまま。
天井が高いので開放感がある。

舟形天井

全面タイル張り。右側には洗濯機と上にエアコン。冬場はかなり寒いのだろう…
10月に宿泊したがそれでも隙間風とタイルで寒かった。お風呂は熱々だったので満足。

タイル張り

シャンプーはあったけどリンスは無かったかな。気になる人は自分で持っていこう。

洗い場の正面が窓で廊下と繋がっているのが気になった。廊下から覗く人がいたのか、それとも換気のため?脱衣所もレトロだったのだけど撮り忘れてしまった!

玄関へと続く廊下

お風呂は沸かすのに30分かかるそうなので20時頃に入浴。バスタオルなどタオル系は貸していただけました!

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夕食~広縁で過ごす夜

旅館内を見学し、夕食の準備。周辺はセブンイレブン、ローソンストア100、スーパー、オリジン弁当もあるので買い物には困らないだろう。

居留地中央通り

部屋で食べたかったのでローソンストアで値引きされたお蕎麦を購入。お茶を入れるお湯はあったけど電子レンジなどはありません。

蕎麦を購入

夕食後は広縁でまったり。お酒も購入!

広縁にて

せっかくなので部屋の電気を消し、外の灯りだけを頼りに広縁での時間を過ごしてみました。かなり暗いですが、この暗さが落ち着くんですよね…

電気を消して

そして、夜、窓から見えるのは隣のアパホテルの駐車場の”満”と書かれた看板。

アパホテル

先ほど、女将さんから「今月は宿泊客が私合わせて3組目くらいかな…お客さんがほとんど来ないのよ」と嘆いていたのを聞いたので複雑な気持ち。

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建物の危機?

1年前に訪れた時から旅館の経営は厳しいという話を聞いていたけど、正直ここまで危うい状態だとは思っていなかった。女将さんの話を伺うと、私は今回で最後になるかもしれないという予感までした。

周囲にホテルや高層マンションが建ったことで水回り、ビル風などに影響があること。修理保全をしてもお客さんが来ないこと。ご主人の体調が思わしくないこと。

手摺

”売却”という言葉も出始めている。

建物内は修理、丁寧に掃除されていて大事に保存されてきたことが伝わる。しかし宿泊客が少ないのでは旅館はやっていけない。

かなり切羽詰まっている様子だった。

文化財登録などはされていないため、そこまで有名な旅館ではないし、ビジネスホテルに比べたら不便だとは思う。

でも、そういう便利さに慣れてしまって良いのだろうか。こういう歴史ある旅館が人知れずに無くなることは私たちの感性が失われているのではとさえ感じた。

チェックアウトの時間は、「朝はゆっくりね」と言われたのでお言葉に甘えてゆっくりさせていただいた。ご主人の体調が良くなると良いのだけれど…

次に訪れたらどうなっているだろう、名残惜しく旅館を後にした。

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ストリートビューから見る旅館の周辺

2008年のストリートビュー

2010年頃に隣にアパホテル、マンションが建つ前までは駐車場、周りにも木造建築がいくつか残っていたようだ。向かいのマンションはつい最近、1年前ほどに建った。そう考えると、この辺りで最後まで生き残ったは奇跡だと言える。

 

少しでも気になった方はぜひお早めに…

1泊6千円。1日2組限定。

TEL03-3541-7152

 

簡単なイラスト

(訪問日:2021年10月)

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