館山の花街の面影を残す割烹「やっこ」がある「キネマ通り」へ -館山⒃

館山の花街の面影を残す割烹「やっこ」がある「キネマ通り」へ -館山⒃

割烹料理店「やっこ」。看板が見え、その奥に木造2階建ての料亭建築が見えた時は、胸が高鳴った。料亭はほぼ残っていないと聞いていたからだ。

さらにこの通りは、かつて歓楽街として映画館も複数存在した賑やかな道だったという。

割烹料理店「やっこ」

千葉県館山市北条1817。六軒町本通りから見えた看板が気になって、北側に伸びる細い道を歩いてみることにした。今回で館山の探索は最後。

裏通りへ

最後は自分の勘に任せて歩いてみよう、と思っていた時だった。左に「割烹やっこ」の看板が建っていた。これは…

割烹やっこ

看板の指す奥に、ひっそりと木造2階建ての雅な建物が残っていた。全く知らなかったのでびっくり!

奥に…

手前が倉庫になっているので隠れ家のような割烹料理店。かつては倉庫の表側に広告も貼ってあったようだが、薄れている。

手前に倉庫

細い砂利道を進むと、割烹「やっこ」が見えた。なんて美しいんだろう…

割烹「やっこ」

グーグルマップに2017年、口コミと写真を載せている方がいた。

昭和11年創業、現在は2代目とのこと。戦前の建物内の写真も載っているのでぜひ見てほしい。入り口からして凄い迫力…

廊下、天井、大広間、随所に贅を凝らしたつくり…館山には海軍航空隊もあり、戦後にかけても「館山二業地」花街として発展。料亭がいくつも存在したと商店街の方に話を伺った。

現在、看板も撤去されているが営業しているのだろうか?

館山の花街の面影を残す貴重な建物。現存しているだけで嬉しい。コロナの影響で休業中との張り紙があった。

入り口

割烹料理店は気軽に入ることができるお店ではないが、いつか建物内も見てみたい…調べても全く情報が無いのが勿体ないなぁ。

憧れの建物

この裏道、普通の裏道ではないなと確信したのであった。

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キネマ通りと旅館

そして、昭和35年の住宅地図を見ると、割烹「やっこ」の手前、現在「君津信用組合館山支店」の場所には「北条キネマ」という映画館が存在したようだ。

「消えた映画館の記憶」によれば、1942年に開館、1977年頃に閉館したらしい。この通りは地元の方に「キネマ通り」と呼ばれるほど映画館が密集していた。

映画館があった通り

そのため、映画館のある裏道には南側にパチンコ屋が2軒、銭湯「えびす湯」、カフェーなどその他飲食店が多数。

特に気になったのは、北条キネマがあった東側の細い道に存在した「かどや旅館」「㐂代ふじ旅館」「ビリヤード」「料理割烹浅野」。裏通りは鍵状になっていて、まさに大人の裏路地。現在も道は残っていて、元料亭らしき建物だけ拝見できる。

君津信用金庫の向かいのタイル張りの建物。

右の建物

丸石タイルが壁全面に。この辺りにはカフェーが存在したのでその名残かな?

タイル

右手には旧ハヤカワカメラ店。

旧ハヤカワカメラ店

壁には馴染みが無いカメラメーカーの名前もずらり。皆さんはいくつ分かりますか?昭和を感じるな~

カメラ屋さんの看板
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竹沢チェーンストリート

角にある建物は「吉川薬局」。周辺には個人商店の建物がいくつも残っているものの、シャッター通りである。

シャッター通り

角にはタバコ屋の看板も。ここが歓楽街だったことは想像できるが寂しい。

そして、「消えた映画館の記憶」にはさらに竹沢チェーンストリートと呼ばれる由来になった映画館も存在したとある。

両側にスズラン燈が並ぶ竹沢チェーンストリートには、手前から洋画専門館「竹沢映画劇場」、隣に邦画専門館「竹沢銀映」、一番奥に「東映北条キネマ」がある。

両側にスズラン燈…その時代の写真が残っていたら見てみたい。昭和35年の住宅地図には、子の交差点の北東側に「竹映」「銀映」が南北に連なっていた様子。

映画館跡地

竹映は「館山日活」として1985年頃に閉館した。鉄筋コンクリート造平屋建てだったそうで、2軒とも現在はマンション「ミモザガーデン」の駐車場になっている。

キネマの文字

 

電柱のプレートに「キネマ」の文字が残っていた。

キネマ電柱が残っていた
右は貴家医院

映画館が無くなった現在、周辺の商店街も抜け殻のようだ。昭和35年頃には、映画館の向かいに「館山ホール」やカフェーなどもあった。

右手が映画館だった

昭和35年から変わらずに営業しているのは、生地店「みにくや」のみだろうか…

みにくや
可愛いデザインだな
奥に残る古民家

キネマ通りを北へ、2014年までパチンコ屋があったようだがそれも無くなっている。

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旧病院?近代建築

最後に特に気になった近代建築をご紹介。元パチンコ屋の向かいにあった建物である。

気になる建物

一部改修されているが、これは近代建築ではないだろうか。そして元病院の建物では?と直感で感じた。

近代建築?

正面入り口の窓、文字が消された跡が生々しい。

天井の照明、床のタイル…見ているだけで心躍る建物!2014年のストリートビューを見ると、敷地の手前に白い門柱と壁が残っていた。

昭和35年の住宅地図を見ると「小松医院」と書いてあった。やはり病院だったのだ…

小松医院

閉業して久しそうだが、病院建築の魅力は閉業しても尚輝いていた。

最後に見つけた、「館山銀座振興会」の古い街灯…

館山銀座振興会

館山を1泊2日かけて探索したが、まだまだ歩き足りない。また近いうちに訪れようと誓った。館山の16個の記事を最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

(訪問日:2021年8月)

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