館山「永遠の図書室」私営の戦争関連図書館”歴史に出会う場所” -館山⒇

館山の「永遠の図書室」は、戦争関連の資料が大量に保管されている時間貸しの私設図書館。一般利用も可能で、気軽に歴史について学ぶことができる場所だ。
自習室、コワーキングスペースとしても利用可能。歴史好きな方だけでなく、若い方にもぜひ訪れてほしい場所です。
館山「永遠の図書室」/私設図書館
千葉県館山市北条1057 1階 CIRCUS。JR館山駅東口から徒歩10分ほど。南町の交差点角に「永遠の図書室」がある。

「永遠の図書室」は、近代史や戦争関連の図書や史料などの収集・保管・公開を行う民営の戦争関連図書館です。 (ホームページより)
民営の時間貸し図書室。
入館後30分まで無料、以降1時間ごとに500円。誰でも戦争に関する書籍や手記を館内で自由に閲覧することができる。また、自習室、コワーキングスペースとしても活用可能。
店頭、店内左手では古書の販売も行っていた。

永遠の図書室については、地域新聞の記事で詳しく取材されている。→戦争の貴重な資料をアーカイブするコミュニティスペース永遠の図書室~The Eternal Library~

この建物、以前は飯塚薬局だった。2階、3階は住居として使用されていたそう。
薬局のオーナーだった飯塚さんが残した3000冊以上の戦争に関する資料。写真集、漫画、飯塚さん自身の戦争体験を記した手記など…
「古い建物をリノベーションしていく中で、そこに生きた人について掘り下げることが必要だなと思って、戦争も忘れてはいけないと思ったんです」と、館山でまちづくりに携わっている漆原秀さん。
館山には、かつて海軍航空隊があり、終戦後には本土で唯一GHQが直接統治した場所。その館山に、戦争に関する図書館が開館したことは大きな意味がありそうだ。
2022年12月から営業日は土日のみに。
13時~17時
時間を超えて歴史に触れる場所
訪問したのが夕方だったので1時間ほどしか滞在できなかったが、あっというまに時間が過ぎる。興味がある方は早めの訪問をお勧めします。
館内に入ってすぐ受付をする。その後は自由に閲覧可能。「ゆっくりしてくださいね~」と言って頂けて嬉しい。
中央には机と椅子が並び、資料をじっくり読むことができる。※写真撮影も許可済。

3000点以上の資料に圧倒される。全部を読むことは到底できないが、一つ一つの資料が持つ力をひしひしと感じる空間だった。

展示されている資料は全て、実際に手に取ることができる。中には当時の貴重な資料や手記もある。まさに生きた歴史の図書館だ。
さらに、各地からの寄贈品も。昔の教科書や226事件当時の新聞、手記やメモ書き、写真など。ホームページに寄贈品についての記載があるので気になる方は覗いてみてください。
永遠の図書室では戦争関連図書・軍装品・古本等の寄贈を受け付けております。
「ずっと昔から大切にしていたけれど、これから先どうすればいいのかわからない」
「これから先家に置いたまま傷んでいってしまうのはもったいない」
「何代も前のものだし、いっそ捨ててしまおうか……」そんな方がいらっしゃいましたら、ぜひご寄贈ください。永遠の図書室は、当時使ってらした帽子や水筒などの軍装品、勲章や写真、読んでらっしゃった本といった戦争関連のお品の行き先でもあります。

棚の中の貴重な資料は、隣にある手袋を装着して触れることが可能。正直、ここまで触って良いのか…と驚いた。普通の博物館だったらまずあり得ない。資料が傷む可能性が高いからだ。
しかし、それ以上に歴史を体感してほしいというオーナーの意思を感じる。
こちらは、戦争とは関係ないが昔のマッチが保存されたファイル。館山に存在した老舗の「鏡軒」のマッチがあった。大正4年創業。館山に住んでいた方ならご存じかも?

また、店番の女性に案内され、本棚の下にある小さな扉の奥へ…!こんなところに隠し扉があるとは。どこへ繋がっているのだろう?

もう一つ倉庫のような部屋があった。

薬局時代は、薬を保管する倉庫として使用していたとか。しかし、老朽化のためか今後解体する予定とのこと。壁は白漆喰?湿気対策だろうか?

もしかしたら記事を書いている現在、この部屋があるかは不明…
現在は、膨大なスクラップブックが保管されている。こちらの資料も閲覧が可能。

店番をしている女性は私と同年代の若い方だった。若い女性で歴史に興味がある人というのは少なく、一気に親近感が高まった。こんな素敵な空間で、店番が出来るなんて羨ましいな。
店番よりの言葉に胸を打たれる。
永遠の図書室。それは歴史に出会う場所。
令和の世になり、戦争体験者の方々が徐々に少なくなっていく昨今。元薬局から膨大な数の戦争・近代史関連の書籍や生の声が記された手記、資料などが発見されました。
徐々に消えて行ってしまう資料や声を語り継いでいきたい、歴史を守っていきたいーーーーそんな気持ちがこの図書室にはあります。(中略)
「学ぶこと」も、「知ること」も、怖いだけでは決してない。
近代という感情の溢れる時代をぜひ、この図書室で体感ください。
もしなにか気になることやわからないことがありましたら、ぜひ店番までお申し付けください。歴史とみなさまを繋ぐお手伝いを、僭越ながらさせていただきます。永遠の図書室 店番 堀口理沙
膨大な生きた資料に触れることができる永遠の図書室。
永遠の図書室をこれからも残すために、出来る限り通いたいと思う。
Twitterで資料をツイートされているので気になる方はぜひ↓
Twitter:@eientosyo
(訪問日:2022年1月)
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ものすごく貴重なレポートですね。
2020年3月にオープンしたという、この“図書室”、わたしもまったく知りませんでした。
「永遠の図書室」のHPも見てみましたが、いくつもの数奇な偶然が重なって現在に至る…という事実に、深い感慨を覚えました。
戦争に関する資料館(注:エセ資料館)としては、東京九段にある「遊就館」がありますが、「遊就館」の展示は、戦争を賛美、賛美、賛美。そして、お国のために敵艦に体当たりをさせられた10代の若者たちを賛美、賛美、賛美。そうやって、ひたすら「国をあげての自爆テロ攻撃」を称賛するだけの施設なのですが、こちらの施設はそうではない様子が(明里さんのレポートからも)うかがえて興味深いです。
「永遠の図書室」通信 第48号で「特攻」が取り上げられていましたが、わたしは最近『不死身の特攻兵』(講談社現代新書)を読んで、とても面白かったです。これは、劇作家の鴻上尚史さんが「特攻隊として9回出撃して9回とも帰って来た」元特攻兵を取材したものです。鴻上さんが、その元飛行兵(佐々木友次さん)に会った時、佐々木さんは目が見えず、施設のベッドの上にいました。それでも佐々木さんの戦争中の記憶は鮮明で、鴻上さんの質問に的確に答えて行くのです。
「出撃してトイレに行きたくなったらどうするのか?(注:敵艦のいるところまで2時間、3時間かかることがある)」という質問に、佐々木さんは「すべて垂れ流し、小便なら、じきに乾いてしまう」と答えるのですが、そのリアルさに圧倒されました。
ちょっと話題がそれましたが、明里さん、これからも(体調に気をつけて)よいレポートを書いて下さい。
はじめまして。楽しく拝見しています。
永遠の図書室ですが、ご存じかもしれませんが、今年の3月に閉館(休館)となってしまいました。
再開が望まれますね。