「呑んべ横丁」京成立石、再開発が迫る余命僅かの飲み屋横丁の儚くも美しい姿。
昭和レトロ好きにとって、聖地とも言える京成立石の「呑んべ横丁」。多くの方が書籍やブログで取り上げており、新参者である私が改めて取り上げるほどのことでもないのだが…でも、再開発が刻々と迫る立石の現状を伝えたいと思い、記事にすることにした。どうすれば呑んべ横丁の魅力が伝わるのか…今回は写真がメイン。試行錯誤しながら撮影した立石の現状を一緒に見守ってほしい。
京成立石「呑んべ横丁」とは?
立石には赤線が存在したことで有名だが、ここ呑んべ横丁にも…?という噂がある。しかし、どうやらその話は嘘のようだ。赤線が存在したのは、商店街を挟んだ反対側。(次の記事で詳しく書くことにするが、赤線の名残は令和の現在も残っている。)
呑んべ横丁の歴史を日も解くと、なぜ赤線ではないのかが見えてくると思う。
確かに、昼までもどんよりとした暗い雰囲気が醸し出されている呑んべ横丁の二階建ての建物は、赤線、もしくは青線(非公認の売春地帯)だったのではないかと勝手に想像するのも無理はない。
が、もともとは「立石デパート」という食料品や衣料品を売っているお店がはじまり。かつては立石デパート時代の看板も残っていたそうだが、現在は見当たらない…再開発によって取り壊された模様。
商店がやめた後、飲み屋が入り、現在のような形態になったようだ。
再開発が迫る立石
立石は再開発が刻一刻と迫っている。葛飾区のホームページを見ると、「立石駅北口地区第一種市街地再開発事業」との見出し、細かく再開発の計画が書かれている。それによると、立石駅北口地区、約2.2haが再開発エリアにあたるという。商店街や呑んべ横丁、赤線の地域もすっぽりと覆われている。
その跡地には、高さ120メートルの高層ビル、駐車場など、近代的な街並みに生まれ変わるらしい。再開発に対する住民の意見は割れているようで、再開発反対運動も起こっているようだが、今後どうなるのか気になる。災害が起きてしまってからでは遅いが、古き良き時代の名残を一掃して、全く新しいぴかぴかの建物に生まれ変わってしまうのもなんだか悲しい。
呑んべ横丁へいざ!!
呑んべ横丁へ向かおう。京成立石駅北口を降り、駅前の商店街の東側に呑んべ横丁がある。横丁への道は、「鳥房」の横にある細い道。鳥房も昼間からかなりの人で賑わっており、あたりには香ばしい匂いが漂っている。
道沿いには、かなり古びた感じのSEGAと「夢幻」と書かれた楽し気な看板。ほほう、大人の遊び場ってことか…
いよいよ見えてきた「呑んべ横丁」の看板。遠くからでもはっきりと見える。建物と似つかない新しさなのは、立石デパートがなくなってから地元の方によって取り付けられたという歴史があるため。
再開発がよくわかる見取り図
私が訪れた時にはすでに、再開発によって半分の建物が取り壊されていた。
『赤線跡を歩く』など他の方のブログを見てあこがれていた赤いハートの扉が見当たらず、駅側の歯科医が開けていたこと。すぐには気づかなかったが、今まさに工事中のこの場所にも建物があったらしい。
呑んべ横丁を散策
1列目の建物
呑んべ横丁の入り口から、ぐるっと散策してみた。まずは一列目の建物から。昼間なのにこの薄暗さ…!撮影にも一苦労。
まず初めに視界に入ってきたのは、「マツコ立寄所」のステッカー。マツコ・デラックスさんも訪れているのか…
上を見上げると、「宝来亭」の看板。
その向かい側には、「さくらんぼ」というかわいらしい店名のお店。
土壁?のようなどっしりとした素材の壁と窓が気になる。さくらんぼの面影はどこに?
そして、キューブ上の紫色の看板が目立つ「バーニュー姫」。紫色に、緑、黄色、赤の文字がしびれる…!
セロハンテープで補強しあるのがバレバレだが、かなり壊れやすいものなのだろうか。
ネオンが光る夜は、どんな雰囲気なのだろう?ネオンがまるで蜘蛛の巣のように絡まっているニュー姫は、身動きが取れないいばらの姫のように思う。
まっ黄色!!の壁は、「カラオケバー宙~(ソラカラ)」。
読み方が面白いのと、なぜまっ黄色なのかが気になる。ほかのお店とは雰囲気がかなり異なっている。
「れとろ」は平仮名であるのは理由があるのだろうか?営業時間の変更のおしらせが貼ってあった。時折、小さな扉からお店の方が出入りするため、撮影をしていると鉢合わせをすることがある。
2列目の建物
次の建物へ。こちらは先ほどとは雰囲気が異なったお店が並んでいる。縦構図で撮影すると、横丁の良さが引き立つ気がする。
丸い、風船のようなサイズの電球は薄明かりがついていた。
顔を少し上げると、店名?なのかよくわからない文字の痕跡。
上から覆われてしまっているのだろうか、赤い塗料だけが少し見えている。
「青空」「しらかわ」「ことぶき」、そして奥に「春夏秋冬」。なぜ、こんなにもネームセンスが良いのだろうか。ちぐはぐな店名も、きっと何かの意味があるに違いない。
和な雰囲気があることぶき。
木製の魚が素朴で良い。
暗い横丁の奥に見えるのは、再開発の工事。以前は向こう側にも同じような建物が広がっていたのだとしたら、もっと雰囲気があったのかな。現実を向き合うのはいつでもつらい。
広角レンズがこれほどまでに役立つ日はないのだろうと思う。それくらい、細く狭い横丁の全体像を表現するのは難しい。
ことぶきの巨大な看板。錆びなのか、茶色の涙が流れているようだ。
天井を見上げると、建物が繋がっていないことに気づく。ちぐはぐな色で覆われた天井は、雨漏りも心配になるが、木漏れ日が美しい。
まだまだあるよ呑んべ横丁
呑んべ横丁の建物の隣にも、「春夏秋冬」などが立ち並ぶ建物がある。
瓦が隙間に積み上げられているのが気になる…
一歩引いて、立石デパートだった建物の全体を見てみよう。
まさに昭和の遺産。これだけ密集して残っている場所は、都内ではもう珍しい。
色々な角度から撮影をしてると、通りすがった男性2人組もスマホで撮影を始めた。「こんなに良い場所あったら撮りたくなるのもわかるね~」と話していた。
日曜日に訪れた際には、気持ちよくカラオケで熱唱する男性の声が聞こえてきた。スナックのママと、男性。建物だけでなく、人も年を重ねている。それはしょうがないことだ。再開発で呑んべ横丁が一掃される前に、もう少しでいいから、この雰囲気を味わいたいと思った。
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(訪問日:2020年6月)
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