「たかね煎餅」2021年1月末で閉店した老舗せんべい店への愛 -高根木戸⑷

「たかね煎餅」2021年1月末で閉店した老舗せんべい店への愛 -高根木戸⑷

「たかね煎餅」最近私が出会ったせんべい店の中でも、一番思い入れがあるお店。かといって昔から知っているお店だったわけではない。

偶然、閉店2か月前に知ったお店だった。記事を書くのが遅くなってしまったが、今なら客観的に書くことができるだろう…

閉店してしまったお店だが、多くの方に知っていただきたいお店。

「たかね煎餅」を旭通り商店街で発見…

千葉県船橋市高根台6丁目。新京成電鉄「高根木戸駅」の北口に広がる「高根木戸中央商店街」を歩いていた時のこと。以前も紹介したが、「旭通り商店会」を見つけた。

「旭通り商店街」中央通りから脇道にある静かな商店街の名残。たかね煎餅を発見 -高根木戸⑶

何もないかと思ったら、古そうな「たかね煎餅」の看板を発見!

右手に現る

こんなところに煎餅屋が!!
住宅街、細い道に一軒だけ。このお店を見つけた時の衝撃は今でも忘れられない。

たかね煎餅

”味自慢”というキャッチフレーズにもそそられる。これは入るしかない…

たかね煎餅の看板

訪れたのは平日の午後。営業しているのが嬉しい…!

全面ガラスで見やすい

しかし誰もいない様子。勇気を出して入ってみるが、静かだった。すみませーんと何度呼んでも誰も出てこなかったので、一旦退散し、周辺の商店街を探索することにした。

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たかね煎餅、店内の様子

商店街を一通り見終わり、最後にたかね煎餅へ。今度は何度か呼びかけたら奥からおじいちゃんが出てきた。とても優しそうなおじいちゃん。

店内の様子

カーブかかったショーケースには、様々な種類のお煎餅が販売中。どれも美味しそうで迷ってしまう。

ざら丸、磯の花、堅焼大丸

抹茶やおはぎは売り切れていた。人気商品なのだろうか。

売り切れ

商品を選んでいると、おじいちゃんが「このおせんべい良かったら食べな~」と奥から割れた煎餅をもってきてくれる。なんて優しいんだ…惚れる。

優しいおじいちゃんがいるお店

一枚80円で、煎餅に好きな絵や文字を書くことができるサービスも。下の見本は、奥さんが描いたもの。昔は多くの方から注文をいただいていたという。

てづくり体験

手焼きせんべいのお店は各地にあるとしても、自分で体験ができるお店って本当に少ないのではないかな…今まで各地歩いているが聞いたことが無い!

レトロな店内

およそ50年近く営業している老舗店。おじいちゃんは85歳に見えないくらい若いから、話していて楽しい。

話している時間楽しい

たかね煎餅の名物は、「餃子煎餅」。餃子?と思う方もいるかもしれないが、ちょっと辛めのおつまみにぴったりなお煎餅。美味しい。

餃子が有名

鬼棒(440円)。変わった商品も多数販売。地元の方が訪れ、年末は特に忙しくなるという。

鬼棒
ゲンコツ(550円)

閉店するというので、とりあえず全種類購入した。個人的な話、七味せんべいの辛さは異常なくらいだった。大の辛党である私でも、一口食べただけで水が欲しくなるくらい辛すぎるせんべい…

辛党だと話したら、その七味を大量に大量にもらったのだけれどまた使いきれていない。辛くて…でも嬉しい。

棚にも商品が

こわれ(320円)。煎餅は温度調節が難しいらしく、冬の乾燥した時期は慣れていても割れやすいという。割れても味は変わらないのに大変だな。

こわれ

パッケージを見ると、「新京成線高根木戸前 旭通り商店街」としっかり記載されている。旭通り商店街は、かつては23店舗ほど並び賑やかだったと話してくれた。

現存している数少ない「たかね煎餅」が閉店したら、ますます商店街の影は薄くなるなあ…

旭通り商店街

かなり古そうな時計だと思ったら、たかね煎餅よりも古いのでは?と話していた。貴重な時計だな~

かなり古い時計

大きな招き猫も目立っている。

大きな招き猫

実はこの招き猫は、 奥さんがテレビの電話訪問出場記念として受け取った品だという。昭和52年(1977)。今から50年前弱だ。

電話訪問出場記念

たかね煎餅の暖簾が飾られている。50年の歴史を感じる、黄金色の文字。

たかね煎餅の暖簾

また、箱売りにも様々な種類がある。これを見ると、多くの方に愛されてきた煎餅屋だったのだと実感する。

箱売りもしているのか~
おはぎ煎餅が気になる

たかね煎餅の文字入りの大きな鏡。

たかね煎餅の鏡

閉店した後、店内は改装し生活しやすい建物に変えるという。元々「たかね煎餅」は注目されていた煎餅屋ではなく、口コミなどもとても少ない。

だからこそ、私が多くの記録を残しておかなければという強い想いがある。

 

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お煎餅てづくり体験!

せっかくなのでお煎餅をつくってみることに。おじいちゃんにも勧められて。

1回目の挑戦

初めては2枚挑戦した。細筆で醤油のお絵描きをするのだが、つけすぎると焦げてしまう。加減が難しい…

「醤油付けすぎだよ~」と言われながら奥の機械で一枚一枚焼く。

奥にある機械

煎餅を焼いている現場を初めて見た。自動でガタンガタンとひっくり返る仕組みになっていて便利。

焼いている最中

焼き上がり。醤油を付けすぎてちょと濃くなってしまった。冬でも熱さを感じるのに、夏は大変な仕事だろう。

焼いたあと

焼いたあとは刷毛で醤油を全体的に塗って乾かして完成。

世界で一枚だけの煎餅の出来上がり。大人でも楽しいのだが、子供とかイラストに興味がある人もすごく楽しめそう。今までてづくり体験ができるお店があるなんて、知らなかったのが残念…

完成

ふらっと立ち寄っただけなのに、おじいちゃんがお土産としてたくさんお煎餅をくれた。私の話もよく聞いてくれるし、こういう人情を感じることが出来るお店が少なくなっているのは本当に寂しい。

お土産

1回目の訪問では餃子煎餅を中心に購入した。訪れたのは2020年11月末。2021年1月をもって閉店とのことだったので、早速SNSでもひっそり情報を公開した。

1回目の訪問

SNSで情報を知った方で「たかね煎餅」を実際に訪れてくれる方もいて本当に嬉しかった。

閉店前の残り少ない時間だったが、出会えてよかったお店。

2回目は思い思いに

2回目は12月。今度は失敗しないぞ!と意気込み、母と手作り煎餅をつくってみた。

焼く前の様子

実際の様子。やり直しが無いので手が震える~でも楽しい!

書いている様子
たかねせんべい

ちょっと薄いなと思うくらいがちょうど良いのかもしれない。色々なイラストを描いてみた。

母と一緒に

そして奥の部屋で焼く。

作業部屋

50年の歴史が積み重なった道具。しみじみする。

古い道具

現在、奥さんが体調を崩してしまいおじいちゃん一人で営業しているのだが、煎餅を焼きながら接客をするのはとても大変だそうで…

香ばしい匂いが

高齢化のため、新型コロナウイルスの影響関係なく以前から閉店を決めていたという。

回る回る

船橋市内で手焼きのせんべい店はかなり少ないだろう。近くでは、最近まで習志野台にも煎餅屋があったようだが…?

大量の割れた煎餅
焼いたあとの煎餅

焼いたら全体的に醤油を塗る。おじいちゃんは慣れているのでささっと塗ってしまうのだが、これが難しい…かなり苦戦した。

ムラなく塗る
完成!

完成した煎餅をひとつひとつ包装してくれた。優しい…

手作りの煎餅!

母と一緒につくった煎餅。カメラを持っているのは私。友達とかに配ったら喜ばれそう。

どんなイラストかわかりますか?
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閉店する葛藤と

たかね煎餅の閉店する2か月前に出会った私。全くお店のことは知らなかったが、打ち解けるのに時間はいらなかった。しかし、閉店してしまう。閉店を決めたおじいちゃんにも、色々な葛藤があるようで、私自身も聞いていて思わず号泣してしまった。

夜のたかね煎餅

まずは50年以上続けてきたお店を閉める辛さ。
一人で営業を続けていくことが難しいため、閉店を決意。しかし、悪夢にうなされてしまうほど閉店するのは辛いのだと打ち明けてくれた。

そして、多くの人に閉店を知ってほしいけど知られたくない辛さ。私が本格的に取材をして、多くの方に閉店する情報を届けることが可能だったので提案をしたのだが、長年続けてきたお店だからこそ、多くの方に閉店前に訪ねられると悲しくなってしまうのだと。

誰にも知られずにひっそりと閉店したい。地元の方だけで十分だと。
だから私はすぐに記事を書けなかった。

閉店のおしらせ

人情深い個人商店、商店街がどんどん廃れていく。便利になった時代、淘汰されていくものも仕方ないとは思う。でも、やっぱり寂しくて。心温まる場所が減ってしまう。

おじいちゃんと話していると、自然と涙がこぼれていた。私の涙も受け止めてくれる優しい方だった。

シャッターが半分に

2021年1月をもって閉店。

新型コロナウイルスの影響もあり、好きなお店がどんどん消えてしまっている。どうすれば良いのか…いまの私には記録することしかできない。

後悔したくないから、もっと色々なお店を紹介したい。

 

 

(訪問日:2020年12月)

 

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