「旧芝浦見番」伝統文化交流館としてリニューアル!芝浦花柳界の歴史を今に伝える昭和初期の建築
東京都の芝浦に、花柳界の見番として1936年につくられた建物が残っていると聞いた。最近までは廃墟のような姿であったが、2020年4月に「港区立伝統文化交流館」として生まれ変わった。
歴史好きな方にはぜひ見てほしい、素晴らしい建築だった。
芝浦公園
「港区立伝統文化交流館(旧協働会館)」は東京都港区芝浦1丁目。最寄り駅は「田町駅」。田町駅と浜松町駅の間ほどにあるので、駅からは歩いて15分くらい。
屋形船などが底流している「鹿島橋」。
ビル街の中、広い公園が見えてきた。しかも素敵な街灯がいくつか建っている。
ガス灯かな、と思ったのだけれどどうなのだろう。夜にまた訪れたいなあ。
芝浦公園がある辺りは江戸時代、意味が広がっており、明治3年にはじまった鉄道工事をきっかけに大規模な埋め立て工事が始まった。
「雑魚場(ざこば)」と呼ばれる美味しい芝肴が獲れると評判の地でもあった場所は、昭和52年に芝浦公園に。
芝浦を散策
芝浦公園を過ぎ、左折。建物が密集している通りの中を進むと目的の場所に着くはず。
歩いていると新しい建物の間に、古い木造建築が残っているのが気になる。花街の名残だろうか。
元料亭の建物らしい。奥に長い建物が側面は白い壁がついている。
角にある木造建築はいつまで残っているのだろうか。
もう少し進むと、見番の建物が見えてくる。
駐車場の隣にある立派な2階建ての建物。「港区立伝統文化交流館(旧協働会館)」だ。
ちなみに駐車場の部分や、隣にも木造建築が建っていたようだ。以前の写真はブログを書いている方がいた。かなり雰囲気がある通りだったのだな~
港区立伝統文化交流館(旧協働会館)
昭和11年(1936)に芝浦花柳界の見番として建設された建物。
見番は、三業組合の事務所のことであり、「置屋」「料亭」「待合」からなる「三業」を取りまとめ、芸者の取次や遊興費の清算などをする建物である。
以前までは廃墟の形で残されていたが、「港区立伝統文化交流館」として2020年4月にリニューアル工事を終えて開館。伝統文化に関わる講演、講座、展示などを行う施設に生まれ変わった。
見番の施主は当時の産業組合で、目黒雅叙園の創業者でもある細川力蔵。豪華な建築が有名な雅叙園と同様、細部までこだわった建築様式が見所。
2012年頃の写真はこちら。以前まで廃墟だったとは思えないほど、綺麗に当時の様子が再現されており、感嘆する。
廃墟の様子の写真を情景師アラーキー/荒木さとしさんに、提供していただきました。
戦時中に花柳界が疎開、「協働会館」として戦後から2000年まで、港湾労働者の宿舎として使われていた。
2階は日本舞踊の稽古場などとして使われていたが、平成12年に閉鎖。
その後は老朽化のために撮り壊れる話もあったが、保存活用を願う運動がおこったのだという。多くの建築がやむを得ず壊される中、こうして生まれ変わるのは嬉しい。
銅板の色が落ちている緑の部分にも注目。
リニューアルオープンされたため、とても綺麗でこの日も家族連れが訪れている方がいた。
窓の飾りも金色が輝きを放っていて綺麗。改装工事が無事に行われて建物も喜んでいるように思った。
つい最近までフェンスに覆われて廃墟だったとはまるで思わないくらい、ピカピカの豪華な見番の姿が蘇った。
東京都内で唯一現存する木造見番建築を令和2年4月から一般公開。
昭和19年に東京都の所有になってから、平成21年に港区へ建物移譲、区指定有形文化財に指定された。
工事自体は、平成29年から令和元年まで行われていたとある。廃墟の姿を知っている方は今の姿に驚くのでは。
伝統文化交流館
休館日:1月4日~12月28日(その他臨時休館日あり)
開館時間:午前10時~午後9時
入館料:無料(「交流の間」を貸切利用する場合や、催しによっては別途料金がかかります。)
旧芝浦見番へ
それでは、旧芝浦見番を見学しよう!
受付
入り口の床のタイルがまず素晴らしくて見惚れる。
見学は無料。入り口で受付をしたら自由に館内を見ることができる。
受付は見番時代の事務所の跡。事務所が残っているのは都内でも珍しい。
右側のブロックのような壁は外観を損なわないように耐震工事をしたという。
床の四角い場所は、以前囲炉裏があった場所と伺った。昔の姿を見てみたいなあ。
受付を左に進むと下駄箱。靴を置いて、奥へ。
下駄箱は新しいが、扉は古そうだ。よく見ると墨の文字が残っている。
情報コーナー
1階の情報コーナー。パネルや動画などを見ることができる部屋。
よく見ると天井が格子。1つ1つの部屋が見応えがある。
窓の細工が細かい…細かすぎて何て表現すれば良いのかわからないほど…
新設の事務室
展示室の左にある奥野建物は新設された建物。
この建物は、車椅子の方もエレベーターを利用して2階に行くことができるように配慮したためにつくられたという。スロープがあるので車椅子のまま上がることができる。
古い旧見番の建物を活かしたバリアフリーに感動した。
伝統文化交流館のイラストが展示されていた。
憩いの間
情報コーナーの右側、受付の裏にあるのは憩いの間。
広く感じるが、押し入れや風呂場を撤去し、憩いの間にしたためである。奥の小窓があるところは風呂場だった。
小さな椅子は、正座をしながら座れる椅子らしい。
受付の裏は元々押し入れ。現在はカフェなども行っているらしい。
展示室
奥の展示室へ。
展示室内は撮影禁止なので外から外観を撮影。
芝浦花柳界のことが細かく説明されていて、思わず見入ってしまう。花街についての詳細な展示がされている場所はなかなか少ないので、とても勉強になると感じた。
旧見番の2階へ
そして、お待たせしました、2階へ!!
階段
正面玄関から左にある階段!素晴らしいカーブにうっとり。
曲がった階段、そして手前にある親柱が他ではあまり見かけない。
下駄箱のところから階段の裏側が見えた。
2階から見た階段。昔の人々も使っていた階段だと思うとなんだか感慨深い。
交流の間
2階は交流の間となっている。大広間は「百畳敷」と呼ばれるほどとても広い。
現在は一般に開放されていて、この場所でお昼ご飯なども食べることができるみたい。
そして、正面には舞台も。約30畳の舞台に金色の屏風、当時の華やかな雰囲気が伝わる。
中庭
建物の外から回って中庭へ。
見番の建物を横から眺めることができる。壁の木材は新しいものだが、この空間にいると東京であることを忘れてしまうほど。
周囲はオフィス街なのに、一軒だけ残る見番の建物。
異様な光景だが、各地の建物が取り壊しになる中、こうした再生の例はとても嬉しい。
芝浦花街
現在、周辺は高層ビルが立ち並び、新しい町並みとなっているが見番の周辺は花柳界時代の古い建物が多く存在した。
見番の近くにある割烹「い奈本」は元置屋。現在は新しい建物に。
現在も花街の名残が残るのは数か所のみ。
TOKYO MX のYouTubeに
「都内最後の木造見番 保存・活用へ道筋」2009年の動画が載っていた。
とても貴重な内部の動画。
気になる方は参考に。
(訪問日:2020年10月)
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