佐原・旅館の歴史「木の下旅館」をはじめ文化財「木内旅館」など -佐原⑽
佐原の旅館についてまとめようと思います。最近まで営業していた「木の下旅館」は現在飲食店として残っており、よく知られていますが、他にはどのような旅館があったのでしょう?国登録有形文化財の老舗旅館も以前は存在したようです。
佐原の旅館について
「お江戸見たけりゃ佐原へござれ、佐原本町江戸まさり」と言われたほど、佐原は近世~明治にかけて賑わっていたという。家数1163軒、人数5647人という数字は、東海道の品川・神奈川(横浜)・小田原などと同等の村の規模だった。
鉄道が開通するまで、東北地方からの物資の集散地として栄えた佐原では小野川に「佐原河岸」がつくられ、人や物の往来が盛んな商業都市であった。そのため、舟運関係の方々が宿泊する旅館が小野川沿いに多数存在。旅館だけでなく料亭や花街も発展し、現在も裏道にその面影が少し残っている場所があるが、その話はまた次回の記事で。まずは旅館についてまとめます。
鳥瞰図で見る旅館
昭和5年、松井天山によって描かれた「佐原町鳥瞰図」から見る旅館。この時すでに鉄道が開通しており(明治31年開業)、駅前にも旅館があるが、小野川沿いの老舗旅館を中心に紹介したい。
鳥瞰図の裏の一覧より抜粋
・深沢旅館 割烹旅館
・浮島屋旅館 水郷旅館
・一力旅館 水郷旅館
・金田ホテル 割烹旅館
・木内旅館 割烹旅館
・いした旅館
・石橋旅館 鉄道省指定
一力旅館は鳥瞰図では「商人宿」として描かれている。
一覧に書いてあるのは大規模な旅館だと思う。上記の一覧以外にも鳥瞰図には旅館が描かれている。
・旅館魚松(小野川沿い)
・旅館川岸屋(小野川沿い、船戸)
・山本旅館(小野川沿い、船戸)
・安宿山多屋(小野川沿い)
・旅館鈴木屋(最近まで営業していた)
・旅館藤屋(駅前)
・丸工旅館(駅前)
・エビス旅館
国登録有形文化財「旧木内旅館」
「木内旅館」は、昭和10年頃築。1階を洋風、2階が和風な独特な外観だったそうだ。平成14年に国登録有形文化財に登録されたものの、平成18年に抹消され、建物は取り壊されてしまった。
「千葉県の近代産業遺跡」に在りし日の写真が掲載されているのでぜひご覧ください。写真を見ると確かに1階がモルタル塗りの洋風な外観…
独特の外観で1階を洋風,2階を和風とした老舗の旅館建築です。2階にある大広間はかつて「木内旅館の大広間」 「木内旅館の100帖敷」などと呼ばれ、ここで結婚式を挙げることが一つのステータスシンボルでした。旅館としては廃業しましたが、 現在では健康食品会社が所有しています。
住所は、香取市佐原イ586。現在は駐車場になっている。
「全国旅館等級別一覧表」より
1949年発行『全国市町村便覧』(全国教育図書)にて佐原の旅館が「全国旅館等級別一覧表」に載っている。(ランク1が最高)
佐原町
2 金田旅館
2 木内旅館
3 石橋旅館
3 川岸旅館
4 木の下旅館
国登録有形文化財だった木内旅館のランクが2。佐原で最もランクが高い旅館だったことが分かる。
最近まで営業していた「木の下旅館」のランクが4。高いランクの旅館は現在存在しないので、規模が大きい旅館ほど維持費などが大変なのかもしれない。
現在営業中の旅館
現在、佐原で営業中の旅館もまとめておきます。(ビジネスホテル、NIPPONIAを除く)
・旅館「一蘭荘」
・川むら旅館
・ビジネスホテル美松
いつか泊まってみたい旅館。ビジネスホテル美松がある場所は、昭和62年の住宅地図では割烹とあるので割烹料理店からビジネスホテルに建替えたのでは?と勝手に思っている。
木の下旅館
唯一残る老舗旅館「木の下旅館」(千葉県香取市佐原イ498)
2018年10月に旅館業はやめてしまったが、現在はとんかつ店として営業中。
明治34年(1901)築の建物。「建物はガラス窓が普及した明治末の特徴が見られる。1階の格子窓下には大正期と思われるタイル張りが、右の壁には鉄板の道案内と天水桶が懐かしさを感じる」
「町並み交流館」に展示されている木の下旅館の模型。旅館として営業していた頃の様子が分かるので合わせてみてほしい。
1階には昔の電話室も。また、箱に入った「手榴弾消火器」もあるらしく一度見てみたい。
現在は「お食事処木の下」の暖簾が出ている。建物をそのまま残し、1階を改装して飲食店をオープンさせているのが素晴らしい。
私が別の日に行った時は営業時間外で未だ入れていないので今度はリベンジしたい…
木の下旅館に宿泊した方のブログ「旅籠宿に泊まる」に旅館内の写真が載っている。多数の旅館が存在した佐原の最後の旅館建築。これからも残ってほしい。
私が中学生の頃、2013年に訪れた時は旅館がまだ営業中だった。
しかしまだその時は老舗旅館に宿泊する趣味などあるはずもなく…泊まってみたかったなあ。
また佐原の旅館の資料が手に入り次第、追記していきます。
(訪問日:2021年8月)
-
前の記事
小野川沿い・中橋「一蘭荘」周辺。廃墟は佐原商家町ホテルに -佐原⑼ 2022.04.26
-
次の記事
佐原・川岸通り西側の近代建築、老舗。「東海酒造」「徳島屋呉服店」 -佐原⑾ 2022.04.28
コメントを書く