行徳街道「澤木酒店(澤木勘七)」。老舗酒店で心温まる時間を -行徳⑸
行徳街道を歩いていて立ち寄ったのが「澤木酒店」。佇まいも素晴らしいだけでなく、店内の品揃えも昭和にタイムスリップしたかのような心がほっとするお店でした。
行徳街道の「澤木勘七」
千葉県市川市本行徳21。最寄り駅としては東西線「妙典駅」。駅から寺町通りを歩いて、行徳街道を進むと見えてくる。
が、今回は行徳駅から街道を歩いている。「株式会社 澤木勘七」と書かれた大きな看板と倉庫らしき建物が視界に入ってきた。
キッコーマンのホーロー看板も綺麗な状態で残っているのは嬉しい。
ただ、ここはたぶん倉庫で立ち入ることはできない。今回の目的地はもう少し進んだところにある「澤木酒店」だ。
澤木酒店の建物
行徳の歴史を感じさせる立派な佇まいの「澤木酒店」。
外観は改装されて綺麗になっているが、建物の側面に見える青銅の戸袋、雨樋などが建物の古さを感じさせる。令和の今も残っていることが素晴らしい建築。
お店の方に話を伺うと、この建物が建てられたのは昭和元年(1925)頃だという。そう考えると、もうすぐで100年が経つのか…戦争や震災にも耐えて、100年前と変わらない佇まい。奇跡だ。
塩小売店のホーロー看板も残っている。
行徳の街並みは、建物が点在しているため、観光地としてはあまり有名ではないのが惜しい。こんなに素晴らしい建物が残っているのにな…
2013年の写真
中学生の時、成田街道を歩いた際の写真(2013)。
10年近く前と比べてもそんなに変わっていないのかな?
懐かしい雰囲気
営業している雰囲気だったので入ってみた。
今回澤木酒店に立ち寄るきっかけは、船橋市の老舗菓子店「廣瀬直船堂」の方に勧められたからだった。「ぜひ澤木酒店に行ってみて」と。
店内に入ると、奥から高齢の女性が出てきた。とても優しそうな方だ。
店舗の入り口の枠は木製のまま、そして棚も木製。
今まで博物館などでしか見たことが無いような、古い商店がそのまま今も生きていることに感動する。
また、棚の上には特約店の大きな看板。老舗酒店に行くと、お店によって特約店の看板が異なるので見るの愉しみ。
右から読むので「シンキ正宗」。正宗は、全国各地にあるけど販売元が「鈴木商店」と書いてある。
こちらの看板に、「サクラマサムネ」と書いてあるので、兵庫県神戸市東灘区魚崎南町にある「櫻正宗」のことかな?創業は1625年!
ホームページに詳しく歴史がまとめられている。
こちらは千葉県野田市の醤油の看板。一つの看板だけど、右と左で会社名が違うような…右はヒゲタ醤油かな?
これだけ大きな特約店の看板が飾られているということは、澤木酒店も行徳も賑わっていたことがわかる。こんなに大きな看板は他ではあまり見たことが無いので貴重だと思う。
澤木酒店は江戸時代創業。建物は昭和元年に建て替えたものだという。
店内は、酒だけではなくお菓子や食料品も少し販売しており、地元の方が利用しているみたい。店員の女性もかなり高齢だが、地域の人が世間話をしに訪れるので、お店を開けているのだとか。
だから、いつまでこのお店も開いているかはわからない…
「正田醤油株式会社」の昔の写真?も展示されていた。正田醤油は、群馬県にある明治6年(1873)創業の老舗だ。
現在の行徳街道には、人通りが全然ないとのこと。コロナの影響もあり、さらに観光客も少ないのだろう。
私は行徳を歩いていて銭湯が見当たらなかったのが疑問に思ったので、訪ねてみたが…
「昔は銭湯がたくさんあったけど、今は廃業しちゃって0軒に…」
哀しい現実に遭遇した。
似たような港町である、千葉市の検見川と比べると、銭湯が全くない実態に驚いた。行徳の歴史は完全に廃れている…
せっかくなので休憩がてらアイスを購入することにした。
そしたら、なんとチョコレートを一袋おまけでくれたのだった。友達も一緒にいたので、「一緒にわけて食べな」と渡してくださった。優しい。
行徳街道で唯一といっていいほど、他にお店が営業していないので貴重なお話を伺うことが出来て良かった。
心が温まる時間。こういうお店がどんどん少なくなっていくのは寂しい。
(訪問日:2021年4月)
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