大屋旅館に宿泊!江戸時代から続く商人宿、つげ義春の聖地 -大多喜⑸
念願の大多喜の「大屋旅館」に宿泊してきました!正岡子規も宿泊したとされる、江戸時代から続く老舗旅館!
昨年、同じく国登録有形文化財の旅館・勝浦の「松の家」に宿泊しましたが、千葉県内の国登録有形文化財の宿はこの2つのみ!とても貴重な旅館です。
今回は、記録用として多くの写真を添付しました。もしこれから宿泊を考えている方で楽しみを残しておきたい方は、全部見ない方が良いかもしれません。笑
大屋旅館とは
まず、そんなに騒ぐ「大屋旅館」ってどんな場所なのよ?と。大屋旅館の歴史、建物の価値を紹介していきます。
大屋旅館の歴史
千葉県夷隅郡大多喜新丁64。大屋(おおや)旅館は、江戸時代からつづく老舗旅館である。大屋旅館の隣にある大きな鳥居は夷隅神社。
古くから城下町として栄えた大多喜。大屋旅館のある新丁地区は、夷隅神社の参道脇にからつづく門前宿としても栄えた。下の写真は、昭和の写真であるが、現在と同じような大屋旅館の姿が映っている。
大屋旅館の他にもいくつかの旅館があったそうだが、今も営業しているのは大屋旅館のみ。
千葉県のホームページに詳しく記載されている。
多喜城下、夷隅神社を核として形成される新丁地区の参道脇に位置する門前宿。江戸期から続く老舗旅館で、明治24年(1891)歌人・正岡子規が学生時代、房総の旅に出た折、当所に泊まったともされている。また、同館では大正期から昭和初期にかけ、旅館業のほかにアメリカの自動車会社フォードの車を使用した乗合自動車事業も営んでいたという。今も旅館を営むが、往時の面影を残す建物として、ドラマや写真集のロケ地としても利用されている。
2015年に宿泊した方のブログによると、
宿帳などによると、当館は元禄の昔から大多喜城下の旅籠として就業しているようですが、創業としては江戸時代後期で、今の若女将で10代目になるそうです。
江戸時代後期に創業した大屋旅館。
正岡子規の書が帳場に飾られていた。
明治35年の書とあるので、大屋旅館とは関係ないものかも。
大屋自動車部も
大正から昭和にかけては、旅館業だけでなく「大屋自動車部」も営んでいたという。フォードの車を利用したバス(乗合自動車)。
アメリカの自動車を使用したタクシー・運送会社も営んでいたというパワフルさに驚く。今は旅館業に専念している。
昭和5年の鳥瞰図には、大屋自動車部は旅館の右側にあったことが確認できる。
今の駐車場のあたりだろうか。
「つげ義春」ファンの聖地?
そして、つげ義春の『リアリズムの宿』に”理想の宿”として、大屋旅館の帳場の佇まいが描かれたことでも有名。
そのため、ファンの聖地巡礼?も今だに絶えないのだとか…
また、「寿恵比須(すえひろ)楼」という同じくつげ義春が滞在したことで有名な旅館があった。
夷隅川の近く、県道231号沿いで、今回は知らなかったので写真が無い。
ストリートビューで見たら建物は残っているが、随分前に閉業して、2019年12月に取り壊されてしまったという。ここの旅館がきっかけで多くの作品が生まれたというエピソードも残っており、つげ義春の作品を読みたくなってきた。
国登録有形文化財の建物
話は大屋旅館へ戻る。
現在の建物は、明治18年(1885)頃の建築で、南北棟、木造2階建。瓦葺切妻屋根の平入で、正面2階左右の戸袋に大きく屋号を漆喰で表している。
国登録有形文化財に登録されたのは平成11年(1999)。
大屋は読めるけど、右の屋号は何だろう?
手前の建物が明治期、奥にある建物は増築部分なので正岡子規が目にしたのは手前の建物だろう。
レンガ壁があるのが気になる。
レンガの裏は、丸く穴が開いていてゴミ捨て場?だったのかな?
大屋旅館の隣は夷隅神社の参道。
大屋旅館に宿泊してみよう
「大屋旅館に宿泊したい!」と決めてから、旅館に実際に宿泊するまでの話。
新型コロナウイルスの影響で、国登録有形文化財だった「玉川旅館」が閉業。次々と旅館やホテルが閉業しているので、大屋旅館も後悔したくないと焦ってきていた。
一方、大学生は春休みで、比較的空いている平日に宿泊しようと計画を立てた。当時、就活で忙しかったので現実逃避をしたかったというのもある。
検索してみると、予約は電話のみ。
0470-82-2020
平日の夕方。恐る恐る、電話をかけてみるが…
一向にでる気配なし。もしや閉業してしまったのか?それとも不在なのか?どうしても諦められず、何度か電話をかけると夜の時間(20時頃)に電話がつながった。
「あの、宿泊したいのですが…」
「…何名さまでしょうか…」
文では表せないのだけれど、か細い女性の声。曾祖母と話しているかのような。電話の予約が初めてだったので、果たして本当に予約ができているのだろうか?と心配になったが、最初から期待を裏切らない素晴らしい旅館だと感じた。
コロナの影響で、現在は1日2グループのみ。
料金は1泊2日、一人10,800円。(夕食・朝食付き)
素泊まりも可能。
夕食は安いプランと高いプランがあるみたいで予約の時に高い方を選んだ。料金もそんなに変わらなかったので。
1週間前に予約したけど、当日のお客さんは他に誰もいなかった。
何でも揃っているビジネスホテルとかと違い、情報が少ない老舗旅館に宿泊するときは備品が気になる。事前に、知っている人から情報を得たり、とにかく不安だったけど、意外と何でも揃っていた。
結論
・Wi-Fi完備
・ドライヤー有
・タオル系も完備
・歯ブラシ有
・駐車場無料
全然不便なことは無かった。他に気になる方います?いたら連絡ください。答えます。
タウンページに詳細が載っている。
房総の食材でスローなお食事を!
低価格にて地産地消のお料理を御提供。
房総の小江戸大多喜町をのんびりとお散歩、
歴史好きな方は博物館の大多喜城や本多忠勝公の墓地などへ。
女性の方なら5日おきに開かれる当館となりの夷隅神社での朝市を目当てに来るのもおすすめです。
新鮮な野菜やお魚をおみやげにできます。
もちろん最中やどら焼きなど近くのお店には美味しい甘味もございます。料金 (税込価格です。)
素泊り ¥5,800
朝食付 ¥6,800
二食付 ¥8,800~
朝市のタイミングで宿泊するのも良いかも。
今回、チェックインは16時、チェックアウトは10時に。夕食は18時、朝食は7時に設定した。
風呂は何時でも可能だった。
大屋旅館の建物を細かく見学
大屋旅館の建物内、宿泊しないと見学できないので今回は隅々まで見学してきました。
大屋旅館の玄関
まず、玄関から。土間と帳場…江戸時代の旅籠の面影がそのまま残っている!夢にまで見た旅館に足を踏み入れられて幸せだわ~!
左にある箱は、昔の下駄箱。番号が振ってある。
帳場。多くの人々をここで迎えていたんだろうな。
旅館に入ってすぐに女性が迎えてくださった。電話の方と同一人物なのだろうか?思ったよりも若い方だったので、電話はその方のお母さまかもしれない。
ストーブ上のやかん。味があるなあ…
大きな柱時計。ちなみに、夜になると「ボーンボーン」と音が鳴るのでちょっと怖かった。
これは昔のレジスター?!すごい!
文字は飯店しているが、「ホライレジスター」と読める。全体的に英語表示が多いので、海外製なのだろうか?
隣にはレトロな電話室。今は使われていないが、電話質の中には当時の紙がそのままだった。
大屋旅館の見取り図。
一体いくつの部屋があるんだというくらい、部屋数が多い。今使われているのは6室ほどだそうだ。
食堂
土間が奥までつづいている。この辺りはキッチンや女将さんの部屋がある。
夕食や朝食をいただいたのがこちらの食堂。
贅沢に、全面昭和ガラスの扉。光がとても綺麗に反射していて幻想的。
ウォーターサーバーが設置してあり、とても親切。
風呂場
風呂場は雰囲気がガラッと変わる。増築した部分で全体的に洋風~!
水色と白。大正ロマンな世界観が乙女心に響きます。うん、何度見ても可愛い。
お風呂は脱衣所が右に。想像していたよりも広くて、開放感のあるお風呂。
脱衣所の棚も趣がる。家にも欲しい…
お風呂の天井も白漆喰で、通気口?の穴が開いていた。昔のお風呂、初めて見たよ…
脱衣所にある照明。うう、美しい。
隠れているが、床はタイルだ。
お風呂、常に温まっていて快適だった。前回の勝浦では自分で温度を調節しなければならず、しかも他の人が設定を間違えていたみたいで大変だったのだ。
洗面台も美しいから見てほしい。
改めて大屋旅館に訪れて良かったと思える風景。
水・湯。陶製の表示が素敵だ。
億にも扉があったが、トイレかな?
昭和感満載なマッサージチェア。
良かった、ドライヤーあって。女性には欠かせない…
今回宿泊したのは、正面の階段を登った2階。洗面台も近くて良かった。
1階の部屋
1階の廊下を進んでみよう。
こちらはお手洗い。
廊下の天井にも大きな穴が。風通し良さそう。
廊下に差し込む光。廊下にもストーブが置いてあって温かかった。
1階から見える中庭。
中庭に面して客室がある。
離れ・大広間
先ほどの廊下から繋がる離れへ。離れの廊下、風情があって素敵。
離れにある小さなお部屋。十三番と表示がある。
奥にあるは大きな大広間だそうだ。
大広間を一周できるつくり。大広間は大正時代の建造だそう。
大広間では宴会が行われていたんだろうな。今はコロナの影響で出来ていないが、いつかまた再開できますように。
客室の隣の便所。
わあっと思わず歓声が出てしまう美しいタイル張り!
陶器のスリッパのデザインが面白い!初めて見た。
黄色に光るステンドグラスが美しい…
ここも風呂場と同時期に増築されたのだろうか?西洋風で素敵。
あと、大きな鏡。エビスビールの文字が入っている。
リボンシトロン。左には大屋の文字。
大広間の壁にあった、ベルは何だろう?
2階を見学
さあ、いよいよ2階へ。写真でもわかる通り昔ながらの急勾配な階段。
浴衣を着ると上り下りがちょっと怖かった。昔の人って凄いなあ。
時代を感じながら階段を登る。
今回宿泊したのは、階段のすぐ近くの十六番。
部屋はこんな感じ!
真ん中にこたつ、テレビ、鏡…必要なものは揃っている。
お布団はとてもふかふか!私の家よりも居心地が良かったかも。
私はぐっすり寝れたけど、夜は部屋の上にある欄間が開いていて向こうの暗い部屋が見えるのがちょっと怖かった。おまけに、この日は強風で部屋全体がガタガタ揺れていた…まあ、そんなもんだよね。
そういえば、部屋は襖でカギはあったっけ。貸し切りだから良かったけど、他にお客さんがいたら防犯気を付けないとな~
中庭の景色
宿泊した部屋から見える参道。
こちらが2階から見た中庭。左の赤い屋根は使われていないが、茶室?みたいな感じ。
中庭、よくみたら池のところに鶴のモニュメントが。
中庭ももう少しじっくり見たかったな~
本館の見学
宿泊した部屋の向かい側が本館。明治期の建物だ。
廊下が一段下がっているのがわかるだろうか?客室から一番近い洗面台が異様に低いのは、増築の証だろう。
普段は主屋の2階に宿泊する人はいないため、とても暗い。
2階の本館部分には、5つの部屋がある。
部屋を一周してみる。が、廊下がちょっと不安なくらいに古かった。
生憎、強風だったので雨戸は閉めっぱなしで、自分から「開けて良いですか」とお願いするのも申し訳ないなと思って遠慮してしまった。
雨戸を開けた2階から眺める景色も見たかったなあ…
大屋旅館でのお食事
大屋旅館でのお食事!夕食は職人さんがつくってくださるそうで。
夕食
夕食は食堂で。女将さんが一つ一つ丁寧に説明をしてくださる。
海の幸・山の幸を贅沢に堪能!
下の写真の右は、ぜんまい?の天ぷら。苦味が絶品。そして千葉の名産ピーナッツがあるのが素晴らしい。
カツは油揚げのカツ。女性に優しい。
筍のサラダ、煮魚(ゆずポン酢で)、アジのお刺身、煮物…
全部好き!!え、こんなにご飯が美味しいなんて聞いてなかったよ??
季節によってもメニューは変わるみたいだけど、高い値段にしたの正解だったな~
そして、アルミホイル焼きの筍丸ごと。味噌?がついていて…
こんな風に筍を頂くのは初。大多喜だからこそ、頂ける新鮮な山の幸。
ご飯まで筍尽くし!!!
今回はボリュームも味も完璧だった。
ボリュームが多すぎても、満腹になって困るし。ちょうど良いバランス。料理のことについてあまり触れている人がいなかったけど、私はすごく好き。
朝食
朝食。質素ながら一品一品が手作りでほっとする。
大屋旅館の素敵な絵が飾られている食堂。
大多喜での1日は夢だったのではと思うくらいに、素晴らしい体験だった。
大屋旅館の夜
大屋旅館に宿泊しているから見れる、夜の風景。
そういえば、一緒にいた人が、夜寝ていると「欄間から視線を感じて眠れなかった」と話していた。
私はぐっすり眠れていたし、私の方が普段勘が良いので「嘘でしょ」と会話を終わらせたが、調べてみると他にも同じ体験をしている人がいた。
信じるか信じないかはあなた次第?笑
今回、新型コロナウイルスが流行しているからか、女将さんとじっくり話す時間が取れなかった。
本当だったら歴史や建物の話を伺いたかったのだけれど…
こういう老舗旅館を続けていくことは本当に大変なことだと思う。どうか、これからも残りますように。
2022年夏 宿泊レポート写真
2022年夏、また泊まりに行きました!その際の写真です。
(訪問日:2021年3月)
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