【松戸散策③】松戸宿、坂川のほとりを散策。豆腐屋、染物屋…街の中に川が溶け込む景色
松戸の歴史散策第三弾。今回は、松戸駅から出発して水戸街道を中心に栄えた松戸宿周辺の歴史を探る。
松戸には、平潟遊郭や旧陸軍工兵学校の遺跡も残っているが、街の至る所に古い建造物が数多く残っている。想像以上に多く残っていたため、松戸宿に関する記事を2つに分けることになった。一つでも気になる場所があったら嬉しいです。
①松戸裏飲み屋街
松戸駅西口から出発。最初に立ち寄ったのは、松戸駅近くのレトロな飲み屋街!といっても、知らない場合は通り過ぎる可能性大です。高砂通りに並ぶ数軒の居酒屋…
その裏を少し覗くと、昭和レトロな飲み屋街が広がっている。
夜になるとまた違った顔を見せる飲み屋街…気になる方は前回の記事で↓
【飲み屋横丁】松戸のビル裏に広がる、昭和レトロな飲み屋横丁に憧れて
②質ふじや
質屋を発見!創業35年?というのは看板が設置された時のものだろう。
歓楽街に欠かせないのが質屋。旧赤線地帯などを巡っていると、必ずと言っていいほど質屋を見かける。現在は、福祉もかなり充実しているため、日常的に質屋に行くことは少ないが、昔は一般庶民も質屋を利用することが多かったらしい。質ふじやは、①のビル裏の飲み屋街のすぐそば。
③着物葛西屋
駅前大通りと旧水戸街道の交差点。これから進む、水戸街道の方面を見ると「かさいや」と書かれたオレンジ色の看板がよく見える。なんと、この看板は左右両方から見ても「かさいや」と読める仕組み。遠くからでも目立つ工夫が素敵。
昭和5年に松井天山が描いた松戸の鳥観図でも、「かさいや呉服」として描かれている。当時、隣は「川崎第百支店」だったようだ。
鳥瞰図を詳しく解説した『松井天山千葉市街鳥瞰図』によると、「相模屋呉服店は番頭が残って小さくやっていて、もとの主人は裏でビルの管理業をやっている」とのこと。かさいやのようにビルやマンションに転業したお店も多いようだ。
近くには、「くだもの遠州屋」。~屋と店名に残っているものが多いのは、水戸街道の宿場町として栄えた名残だろうか。「くだもの遠州屋」も松井天山が描いた鳥瞰図において「遠州屋青果店」として描かれている。
④かつびしや
「かつびしや」は、レンガ建造物としても注目したい建物。
開店の時間になると、色とりどりのたばこで埋め尽くされた店内を見ることができる。こんなに酒類が多い場所を見たことがない…!葉巻やパイプの取り扱いもあるらしい…
かさいやの近くには、大きな時計が目印の「SEKI」。一瞬、SEIKOかな?と思ってしまうが、老舗らしい。
⑤そば処関やど
お昼をどこで済ませよう…と思っていたところ、良い雰囲気のお蕎麦屋さんがあると聞いたので寄り道。その途中で、かなり渋い建物を見つけた。料亭だったのかな?と疑ってみたが、一般の住宅のようだ。
よく見ると、瓦が塀に埋められている!粋があるな~
この種類の塀は、「瓦塀」というものらしい。土壁に古い瓦を再利用したもの。建て替えの時にいらなくなった瓦を捨てずに再利用したのだろうか?よく捨てられている瓦を見かけるので、こういった再利用はとても興味深い。
お蕎麦屋さんの近くの通りにあったもじゃハウス。入口には18歳未満禁止の表示があった。
ここが松戸では知っている人は知っている?有名なお蕎麦屋さん「そば処関やど」。
ランチタイムの時間に合わせて訪れよう。蕎麦がなくなり次第閉店らしい。
松井天山が描いた鳥瞰図では、水戸街道沿いに「生そば関宿屋」がある。移転したものだろうか?当時は生そばと寿司を扱っていたようだ。
おしながきを見ているだけで、お腹が空いてくる…!
私はなめこそば(990円)を注文。こんなにも上品で、心が満たされるお蕎麦は初めて。あっという間に完食してしまった。店内には、松戸の貴重な地図も展示してあるのでチェックしてほしい。
お店を後にすると、ちょうど私の組で閉店となったようだ。それを知らずに訪れている他のお客さんもいて、人気店だということを改めて知る。
⑥水戸街道の裏道・相模屋
水戸街道の一本裏を通って散策してみよう。外観は今どきのカフェ?に見えるが、創業60年以上の和菓子屋「さがみ屋」。
少し進むと、豆腐屋の「相模屋」を発見。創業80年と看板にあるが、かなり老舗のようだ。お店のたたずまいも素敵。
豆腐屋のおいなりさん…とてもおいしそう。最近、こういった豆腐屋も少なくなってきたなあ。
相模屋の前にある道には、暗渠(川の名残)ではないかと思われる痕跡。川の近くには、その水を利用した豆腐屋や染物屋が多いと聞いたが、どうやら本当のようだ。
⑦わたてつ
同じ通りに、手焼きせんべい「わたてつ」を発見。こういうせんべいにとても惹かれてしまう。散策の休憩にぴったり。
ショーケースには、様々な種類の手焼きせんべい。実際に、店の奥で焼いているらしい。わたてつを長年切り盛りしているおばあちゃんが色々なお話をしてくださった。
焼いたせんべいを熱い状態ではショーケースに入れることができないため、缶箱に入れる。その箱もかなり年季が入っていた。以前はかなり賑わっていた通りも、次第に変化しているようで…
⑧展望レストラン
丸い円盤がついた建物が気になったことがある方も多いのではないだろうか。ここはかつて伊勢丹が存在していた時に営業していた展望レストラン。今ではその姿が逆にレアなものになっているが、あちこちに存在していたものだった。
現在は、ショッピングモールやハローワーク松戸として地域の人々の生活を支えているようだ。
近くには、「松戸市立中部小学校跡記念碑」。
⑨坂川ひろば
川の音に惹かれて散策していると、稲荷神社を発見。散策をしていると、なぜこんな場所に…と思う稲荷神社がある場合があるが、周辺の歴史を探る上で重要な手掛かりになる。
坂川ひろばと名付けられた開けた場所。街の景色に川が溶け込んでいるのが涼しげ。
坂川ひろばでは、旧松戸本宿の敷地内で使われていた敷石を再利用しているらしい。
歴史遺産を継承する強い想いが伝わってくる。
⑩松先稲荷神社
坂川の一角に、とても雰囲気のある場所…昭和57年に再建された「松先稲荷神社」である。
鳥居の前には、橋らしきものが残されているが、かつては川が流れていたのだろうか?暗渠マニアにとっては嬉しい場所かもしれない。
境内には、庚申塔をはじめとした石碑がいくつか残されており、とても雰囲気がある。
松先稲荷神社の前には、川にかかる橋。しばらく、坂川に沿って散策を進める。
⑪松戸神社
松戸神社へ到着。休日ということもあってか、多くの参拝客で賑わっていた。寛永3年(1626年)に創建された松戸神社は、水戸光圀公も立ち寄ったとされる由緒ある神社。新しめのフクロウの置物もかわいらしい。
街道の宿場町「松戸宿」として賑わう中、水戸徳川家からも崇拝を受けていたそうだ。境内には、数々の石碑があり、見所が多い神社だった。
手水舎の彫り物も立派。
夏なのに、赤い紅葉…秋に訪れてみたい。
玉垣には、料亭「富吉」や、「葛西屋」の文字。いすれも現在も旧水戸街道沿いにあるお店だ。
松戸神社の正面にある鳥居。近くにはレトロ電柱もあり、松戸の歴史が詰まっている場所。
⑫松屋京染店
松戸神社を「陣屋口橋」の方面に出ると、坂川のほとりに、「松屋京染店」があった。グーグルマップには店名が表示されているが、果たして営業しているのだろうか。かつては松戸神社の参拝客に向けた染物で繁盛したのかもしれない。
⑬須田染物店
松戸神社の裏手の道へ入り、駅へと戻るように進む。至る所に暗渠らしき場所を見かけると思いながら歩くと、またしても染物屋。「須田染物店」。ドブ川と勘違いしてしまう、古い川「神田川」も近い。
川の近くに染物屋…ここまで顕著に残っている場所は珍しい。
グーグルマップに表示がないが、灯りがついているように見える。ほのかな灯りと入口のガラスが当時の面影を漂わせている。
⑭江戸組紐「中村正」
さらに駅の方へと進むと、江戸組紐「中村正」の看板。一般住宅街に突如現れる看板に驚いた。グーグルマップに表示はあるものの、どの建物が組紐店なのかわかりづらい。
松戸駅から、坂川のほとりを中心に散策した。川が街の中に溶け込んでおり、松戸宿として栄えた当時の名残が今も残っている。松戸の住宅地図を手に入れるのを忘れてしまったため、今度さらに追記して深めたい。
原田米店・解体予定(2023年追記)
2023年に惜しくも解体が発表された建物も追記します。
JR松戸駅西口徒歩3分、旧水戸街道沿いの旧原田米店。訪問時は2022年9月、飲食店が営業中でした。
大正~昭和に建てられた母屋、離れを含めた5つの建物。2023年9月に解体に。
旧原田米店については、MADCityさんが詳しく記載しています。→古民家スタジオ 旧・原田米店
古民家スタジオ 旧・原田米店とは
かつての宿場町「松戸宿」の一角、そして松戸駅前のマンション群のど真ん中に、まるで奇跡のように残っている古民家群です。400坪近い敷地に大小5つの建物が並ぶ物件です。今では道向かいに移転した「おこめのハラダ」さまから敷地全体をお借りしてMAD Cityが運営しています。
私も解体前の見学会に参加できれば良かったのですが…
外観のみの撮影で終わってしまいました。残念です。
周辺には古い石畳のみ残る敷地も。年々、松戸の古い建物も無くなっています。
松戸宿散策MAP
色々な場所を書きすぎて、散策する際に混乱すると思い、イラスト地図にまとめた。位置関係だけでも把握できるかな。
(訪問日:2020年6月)
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