真壁・花街の歴史。橋本旅館と料理店の鑑札から見る面影 -真壁⑺

真壁・花街の歴史。橋本旅館と料理店の鑑札から見る面影 -真壁⑺

茨城県桜川市真壁町の花街について。今回宿泊した「伊勢屋旅館」が元々は真壁で一番名の知れた料亭であったこと、花街が存在したことを聞き、自分なりに調べてみようと思った。

ネットで検索してもあまり情報が無かったが、実際に歩いてみると意外な発見がありワクワクしました!

真壁・花街の歴史を追って

まずは文献から真壁町の花街について調べてみる。が、普段活用している『全国遊廓案内』、『全国女性街ガイド』には真壁についての記載はない。

果たしてどうしたものか…と。

1949年発行『全国市町村便覧』(全国教育図書)「全国旅館等級別一覧表」に載っている旅館を挙げてみる(ランク1が最高)

3 橋本屋

しかし、現在廃業した「橋本旅館」しか載っていない。

とりあえず、真壁町を探索してみてもしかしたらヒントがあるかもしれないと考えた。

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元料亭「伊勢屋旅館」

今回宿泊した「伊勢屋旅館」。ここは、真壁で最も名の知られた料亭「勢州楼」だったという。

伊勢屋旅館

料亭としては江戸時代末期に創業しており、現在の建物は明治中期頃の建造。

旅館内には現在も「勢州楼」と書かれた提灯や、右読みなので戦前と思われる書も残っている。

勢州楼

女将さんは詳しいことを知らないようだったので、伊勢屋旅館の歴史については詳しく聞けなかったが、2階の部屋に芸者を呼び、他にも数軒料亭があったというので規模も大きかったのかもしれない。

放置された商店街の看板
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真壁陣屋があった通り

何かほかに遺構は残っていないのか、意地でも探したかった私は出来るだけすべての道を歩いてみることにした。

陣屋があった通り

伊勢屋旅館から東側の、かつて陣屋が置かれていた辺りの通り。本当はこの通りにある「伝承館」でお話を伺えたら一番良かったのだけれど、コロナ禍で休業中だった…

惹かれた建物
増田酒店

揚げたてコロッケが美味しいと評判の宮本肉店。

宮本肉店

至って普通の商店街といった雰囲気。裏通りに何か残っているかな~と思ったのだけど…

村上書店

伝承館からさらに北へ、今度は仲町会館の隣に昔の小さな火の見櫓があった。電柱に取り付けられているようだ。

仲町会館の隣

国登録有形文化財以外にもこうした昭和の遺構が残っていることに感動していると、この通りの道幅が細くてなんだか今までと違う雰囲気だなと感じた…

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裏道で見つけた鑑札

立派な観音開きのある土蔵。これは文化財に登録されていないみたいだが、放置されているのだとしたら惜しい建物だなと思った。

裏道にあった土蔵

しかもなぜこの細い裏道に蔵があるのか、この奥に酒屋でもあるのかと思い考えを巡らせていると、隣に気になる建物が。

立派な蔵だ~

蔵と隣接している平屋。元食堂のような佇まいである。

蔵と隣接している

でもこんな裏通りに食堂か…青いタイル張りは後付けだと思うが、緑色のタイルも見えるし、何となく妖艶な雰囲気のような。

と思って軒下を眺めていると、今にも落ちそうな鑑札が残っていた!!これは発見だ。

鑑札!!

「料理店」と書いてある。なんとここは料理店だったのだ。

しかしそもそも料理店とは何だろう?と思い調べていると、「料理店と料理屋(鑑札シリーズ 比較編)」という記事が分かりやすく書いてあった。

料理店とは「主として和風設備の客席を設けて、客席で客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」。

この記事の場合、滋賀県を例に挙げているが、滋賀県では「料理店」でしか芸妓さんを呼ぶこと、お座敷遊びをすることができないとのこと。

茨城県はどうなのか分からないが、料理店、つまりお座敷遊びをする場所と考えても良いと思うので、この小さなお店も花街の面影を残していることになる。

そう考えると、向かいにある斜め扉の建物も何だか怪しいと思ってき始めたが、証拠がないので何とも言えない。赤線とかもあったのかしら。

斜め扉
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割烹二葉

そして、花街の面影は他にも…裏通りを出て「台宿通り」へ。

台宿通り

割烹料理店「二葉」があった。趣のある雰囲気。

割烹料理店「二葉」

2013年にはテレビ東京の番組「アド街ック天国」でも紹介されている。

割烹二葉

しかし、現在は看板が入り口にあった看板が外されてしまっているので閉店したのだろうか…

閉店?

まさか残っていないだろうと思いつつ入り口に近寄ってみると、先ほどと同じような料理店の鑑札が残っていた。

料理店

ここも芸妓さんを呼んでいたのだろうか。建物内は広そうだし、十分あり得る。鑑札だけでも残っていた良かった…

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橋本旅館

新宿通りにある「橋本旅館」。冒頭の旅館リストに唯一載っていた旅館だ。

橋本旅館

割烹橋本旅館の看板…しかし現在は旅館としては営業していない。

看板

幕末に旅館を開業、現在の主屋は昭和4年築とのこと。国登録有形文化財。

橋本旅館

震災後に居間・応接室を改装しカフェとしてオープン。しかし、そのカフェも現在は閉店している。

閉まっていた

なんと現在は、ロケ撮影などのレンタルスタジオとして貸しスペースになっているらしい。「橋本旅館スタジオ」という名前で、6時間8万円…一般人が借りれる値段ではないので建物内を見ることは叶わなそうだ。

国登録有形文化財

ホームページに旅館内の写真と平面図が載っているが、昭和初期の旅館の趣をそのまま残しており、美しい姿で保存されている。これは一度実際に見てみたいな…カフェ営業時に訪れたかった。

全国旅館同業組合の看板

軒下を眺めていたら、料理店の鑑札も!これで真壁では3枚目である。

料理店
欄間も美しい

料理店の鑑札まで撮影している人はいないのか、真壁でこういう情報をまとめるている人は少ないようだ。

橋本旅館裏
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真壁町に存在した映画館

花街と関係して、映画館についてもまとめておきたい。「消えた映画館の記憶」さんのサイトによると、真壁町には2軒の映画館が存在したようだ。

・新映館
1960年頃、下宿通りに存在した映画館。開館時期が短い。

・真壁館
1950年~2000年頃まで、新宿通りと仲町通りの間に存在した映画館。現在は住宅街。

 

映画館について調べたが、あまり歓楽街的な要素は分からなかった。真壁町の花街の情報、今回は鑑札しか分からなかったので、分かり次第追記していきたい。

 

(訪問日:2021年8月)

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