大多喜「蔵の宿」に宿泊!素泊まり専用民宿。「斎藤万右衛門邸」洋館と母屋、夫婦蔵を見学

大多喜、いすみ鉄道の西畑駅から徒歩15分ほど。古民家をリノベーションした「蔵の宿」という古民家宿が存在する。
いわゆる民宿で、バーベキューや大勢で宿泊するも良し。お値段もお手頃!
そして、母屋だけでなく戦時中には軍隊に利用されていた洋館も現存しており、近代建築&老舗旅館好きは必見の宿となっております!
大多喜・蔵の宿に宿泊
千葉県夷隅郡大多喜町湯倉175。いすみ鉄道「西畑駅」が最寄り駅で徒歩15分くらい。西畑駅周辺については前回の記事にまとめました。

西畑川に並行して伸びる国道465号沿いに今回宿泊する「蔵の宿」が建つ。
この宿の情報は、Googleマップで旅館を探しているときに偶然見つけた。探しても公式のFacebookと僅かなGoogleマップの口コミしかなかったので手探り状態で宿を予約…

国道沿いに建つ門柱。こちらが蔵の宿、正面入り口。豪壮な門柱…門構えから期待大。

大多喜町の素泊まり専用民宿・蔵の宿は、素泊まり一泊4,000円。
予約は電話予約のみ。

料金:素泊まり一泊4,000円(一人)
蔵の宿 齋藤 Facebook:https://www.facebook.com/kuranoyado/?locale=ja_JP
予約・お問い合わせ・連絡等は090-5569-5425(齋藤)
備品:冷蔵庫・食器類・冷暖房完備・洗濯機常設・バーベキュー場
事前に電話予約!人情深い&パワフルなおばあちゃんが運営していてほっこりする宿です。

敷地内には、明治時代の洋館・夫婦蔵・母屋が建っている。今回は、2人で宿泊したので夫婦蔵を貸切!
古民家をリノベーションした宿は千葉県内にも多く存在するが、一人4千円は格安…普通は一棟貸しで数万単位、そうでないと経営が立ち行かないからだ。蔵の宿はぜひ皆さんにおススメしたい。
夫婦蔵に泊まる
まずは宿泊記から。敷地の東側にある、築180年の夫婦蔵。今回泊まるのはこちらです。

名前からも分かるように、元々は夫婦、二つの蔵が並んでいたという。現在はリノベーションされて快適に宿泊できる宿に生まれ変わった。
1階は大型テレビとリビング。

2月に宿泊したが、ストーブも充実しており寒さは全く感じなかった。素晴らしい!

そして気になる水回り。お風呂もお手洗いも最新で清潔!



1階にあるキッチン。置いてある調味料や食器棚のお皿などは元の状態に戻せば自由に使用してOK。素泊まりなので持ち込んで自炊ができる。お米付き!


事前の情報では、どれくらいキッチンの備品が充実しているのか不明だったので不安だったが割と何でも揃っている。次泊まる方向けに写真を残しておこう。


2階は4~5人は寝れそうな寝室に。こちらもエアコン完備なので快適!

古民家に泊まると聞くと、寒そう、古そう…とネガティブなイメージを持つ方も多いと思いますが、蔵の宿さんは全くそういう心配は必要ないと思います!

これから紹介する母屋の方は、部屋数が多いので多人数向け。20人は泊まれるのでは…合宿にも良さそう。蔵の隣にはバーベキュー場もあるので、大勢で古民家に滞在するのも楽しそうですね!
斎藤万右衛門邸 母屋を見学
敷地の中央にある築200年の母屋。宿泊はしませんが特別に見学させて頂きました!

千葉県の近代産業遺跡にも載っている名家の邸宅。ページに載っている下記の情報は現在住まいとして使用されている洋館のことだろう。母屋の本宅は江戸時代に建てられたと説明がある。
斎藤万右衛門邸
夷隅郡大多喜町湯倉175
木2
建築年 大正5年
設計者
施工者斎藤家は木材を生業とする地元の名家で、貴族院議員を務めた家柄です。 外観は改装されていますが、内部はほとんど建てた当時のままだそうです。昭和60年頃に前の道路の拡張に伴い、 数メートル曳屋したそうです。同じ敷地内にある本宅は江戸時代に建てられたものです。
大正5年とあるが、蔵の宿の情報によると明治時代の洋館とのこと。所有者の情報、明治の方が正しいかな?


蔵の宿のオーナーでもある斎藤さんが母屋の建築としての見所や歴史をたっぷり解説してくださる。録音しておかないと覚えられないくらいのボリュームでした。

まず正面入り口の玄関にある飾り彫刻。これは、房州の名工「波の伊八」の作品ではないかといわれているそうな。

葛飾北斎にも影響を与えたとされる彫刻師で、安房・鴨川をはじめ南関東を中心に50点あまりの彫刻を残しているという。本物だとしたら全然知られていない情報なのでは?

女将さんは「良い建物だから残したい!その為にも多くの方に泊まりに来て欲しい!」と仰っていた。だからこそ、気軽に泊まれる素泊まり4千円なのだろう。
そして、数十年材木商を営んでいた関係で建物の説明がめちゃくちゃ詳しい。


欄間はガラスケースで覆われている。




一体何部屋あるんだ…!
夫婦蔵と同じで水回りもしっかりリフォームされていて綺麗。


また、2階にも部屋があり宿泊が可能。


2階は天井の梁を活かした造りになっており、右側の部屋では昔のままの土壁が敢えて残されていた。建物の歴史を感じてほしい、という強い想いが伝わってくる一角。ぜひ女将さんに案内していただいて説明を伺ってほしい。

1階の廊下の奥の窓ガラスには色ガラスが再利用されていた。美しい。



中庭が見えるように隙間が開いた窓ガラス。昔の方々の知恵が詰まった母屋だった。

戦時中、大隊本部が置かれた斎藤邸
最後に、現在も住まいとして使われている明治の洋館について。一部改装されてますが当時の趣が残っていて美しい。

建物内は和室と洋室が半々。戦時中、九十九里から米軍が上陸する作戦に備えこの建物は指揮を執る為に使われたという話も興味深い。
Twitterで「マンチカン 帝國」さんが詳しく教えて下さった。戦時中の母屋、洋館については『幻の本土決戦 房総半島の防衛第8巻』3〜6頁に記述があるとのこと。
「続・決64部隊② ー勇躍西畑地区へ① 人情深い村人たち 寧日なき将兵にゆとり」という題でまとめらている。
斎藤家がある大多喜地区の南側、西畑村は房総半島を縦貫する勝浦ー上総中野ー養老渓谷道上の要点であり、大隊本部が昭和20年4月16日に西畑村湯倉の斎藤万寿雄氏邸に設置(現在の蔵の宿)とある。
豪壮邸宅に戸惑う様子が描かれている。
立派な母屋もさることながら、ひと際目を引いたのは、この辺りでは珍しい洋館だ。
母屋から渡り廊下によって連接されている。実に瀟洒(しょうしゃ)な洋風建築の別館構えの豪壮邸宅だった。われわれはいささか戸惑いを感じながらも、母屋から独立した洋館を本部事務室および宿舎に使わせていただいた。
将校以下10名近くが本部に寝泊まり。
こうした事例は珍しいことではなく、非常時下であったため当時は大隊本部や連隊本部、あるいは上級の師団司令部はしばしばその土地の有力者や町村長宅を借用することが多かったそうだ。

そして令和の現在、新たに民宿に。特に若い方にも利用していただきたい。
いすみ鉄道の電車の時間に合わせてチェックアウトも遅くしていただき、何から何まで温かい女将さんには感謝です!

2022年2月宿泊後に投稿したツイートは大反響!本当に多くの方に届けたい~~
築180年を越える大多喜の「蔵の宿」
母屋、蔵に素泊まり一泊三千円って…凄い宿を見つけてしまった…(敷地内には明治の洋館も)これは建物好きは絶対訪れて欲しい!そして少しでも気になった方は広めて頂けると嬉しいです…!! pic.twitter.com/TSrl6DDMRe
— 明里 / 千葉のレトロ旅 『昭和ディープ街トリップ』1/24発売! (@HANA_akesato) February 20, 2022
追記:宿泊時、3000円でしたがその後に値上げをされて現在は素泊まり4000円のようです。それでも安い…
(訪問日:2022年2月)
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ちょ、ちょ、ちょ…ちょっと待ってください。
房総半島でも、波の伊八の彫刻って、お寺関係でしか見つかっていないのでは?
もし、こういう個人宅に、伊八の作品が残っているとしたら、それはとてつもないこと(=世紀の大発見)ではないでしょうか。
明里さん、とりあえず写真だけでも、テレ東の「なんでも鑑定団」に送ってみてはどうですか…。←別に「なんでも鑑定団」でなくてもいいですが。
それから、ふすまの「書」もすごいですね…、誰が書いたのでしょう。
なんだか、泊りがけで1点1点、家にあるものを見て行きたい気持ちです。
とにかく…欄間の彫刻が…、スゴ過ぎます。