安房小湊誕生寺門前・小湊温泉を歩く。誕生寺の建造物や売店など -小湊⑷
鴨川市にある小湊には、日蓮ゆかりの誕生寺と温泉、鯛の浦遊覧船など房総を代表する観光地として古くから知られている。
私は建築と歴史の視点から、小湊の街並みを記録に残します。
誕生寺門前・小湊温泉
千葉県鴨川市小湊176。前回からの続きで小湊を歩いている。やっとJR外房線「安房小湊駅」から目的地の「誕生寺」の門前へ。参道らしい飲食店や旅館の姿が見えてきた。
左手に見えるホテルは「海の庭」。格子と瓦のひさしがある和風エントランスを備えた温泉旅館らしい。
「小湊温泉」は比較的新しく、平成15年に「小湊温泉願満の湯」が開湯したことに始まる。まるごとeちば!の「宿中屋」の紹介より。
温泉の泉質は単純硫黄冷鉱泉です。効能は神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、冷え症、病後回復期、疲労回復、健康増進、切り傷、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病などに効くといわれています。
宿中屋は現在地とは違う場所で古くから営業していた老舗旅館。資料も持っているのでいつか宿泊してみたいが高級旅館なので足踏みしてしまっている…
右手の海側には温泉旅館「吉夢」。海側見渡せる大浴場や天空露天風呂など、ゆっくり過ごせそう。
小湊の旅館はどれも新しく建替えられている様子。ネット上には戦前の小湊の街並みの写真は載っていなかったが、パンフレット等でしか私も見たことが無いのでまた見かけたら載せます。
門前にある足湯はコロナ禍で休業中…(2022年3月)。現在は再開したみたい!
共同浴場は無し。そのためこの日は温泉を感じられず泣
鯛の浦遊覧船は広瀬屋の裏手に入り口がある。幼少期に家族で訪れた覚えがあり懐かしい。
誕生寺と歴史的建造物を見学
大本山誕生寺へ。2021年2月16日、日蓮聖人誕生から800年の年ということで訪問時も看板が残っていた。
誕生寺の歴史
誕生寺は、日蓮聖人の直弟子・日家上人が建治2年(1276年)に日蓮聖人生家跡に堂宇を建立し、高光山日蓮誕生寺としたのが始まりとされています。
その後、何度かの天災を受け、宝暦8年(1758年)の大火では、仁王門を残して焼失してしまい、日蓮聖人を安置する祖師堂は、現在の地に移り、小湊山誕生寺と改称されました。(まるごとeちば!より)
総門から仁王門の参道。昭和期、誕生寺を中心とした絵葉書が多く発行されており、現在も多数存在する。山門や建造物の様子はあまり変わらないが、灯篭は新しく設置されたもののようだ。
絵葉書と現在を比べる記事もいつか作りたい。
門前の土産物店
そして参道の右手には土産物店が入る平屋の建物が並ぶ。
手前にあるのは、鯛せんべいで有名な「亀屋本店」。しかし、閉店のお知らせが…これもコロナの影響なのか。
真ん中には鴨川市出身の彫刻師の展示施設「波の伊八館」。楽しみにしていたがこの日は休みだった。不定休らしい。
松孝商店のみが営業中。グーグルマップの口コミには色々書かれているが…
戦後の写真を見たことがあるが、右手の土産物店の場所はもっと賑わっており、ごちゃごちゃと看板や商品が並んでいる様子だった。
コロナ禍で仕方がないとはいえ、門前の土産物店を見ると房総の観光地の変化を感じられずにはいられない…
誕生水井戸・誕生堂
売店向かいには誕生堂。
こちらは誕生水井戸。日蓮聖人がお生まれになったとき、産湯に使ったと伝えられる誕生寺の井戸とのこと。
石造りの井戸枠は、一辺が1メートル27センチの正方形で、高さは53センチですが、最近造られた囲みによって埋められた部分を含めると75.5センチあります。厚みは20センチもあります。このようにかなり大きい井戸枠ですが、複数の石材を組み合わせているのではなく、一個の石材を刳り貫いて造られたものです。
井戸枠は、近年まで覆い堂に覆われていました。このお堂は嘉永6年(1853)に建てられたもので、老朽化して危険なため解体され、周囲は五十万人講事業の一環として整備されました。誕生水は、蓮華潭と並び日蓮聖人誕生の霊地として真にふさわしい遺跡なのです。(誕生寺ホームページより)
現在の覆い堂は近年再建されたもの。子授けや安産のご利益があるとのこと。
誕生寺仁王門(文化財)
千葉県指定文化財の仁王門。宝永3年(1706)建立。平成3年大改修している。
宝暦年間の大火の際焼け残ったそうで、仁王門以外は焼失。そのため、誕生寺最古の建造物とのこと。
両側の金剛力士像は松崎右京作とのこと。松崎右京は、上総国上野村植野(現勝浦市植野)の大佛師。
ウィキペディアによると「山門と仁王門の柱には戦時中に張られたと思われる「震洋特攻」と書かれた千社札が貼られている。」とのことだが、今度詳しく観察してみよう。
仁王門を抜けると灯籠がずらっと並ぶ参道が続く。
日蓮聖人御幼像など
灯籠には、小湊鯛の浦遊覧船の協業組合の名も。一つ一つ見て行くのも楽しい。
参道の左手に誘われて少し寄り道。
設置された看板によると、鯛塚(妙の浦鯛のお墓)とのこと。毎月六日に鯛の精霊のご供養をしている。
そして、こちらは日蓮聖人御幼像。
高い台に乗っている銅像で、昭和10年に建造されている。昭和6年に迎えた日蓮聖人650遠忌報恩の記念として発願されたそうだ。しかし、戦時中の金属供出によって一時期なくなったものの、偶然にもほとんど無傷で発見され、昭和21年に現在の姿のように安置されたという。
戦中の供出から助かった事例は初めて聞いた。不思議な偶然だなあ…
祖師堂
参道の正面にある祖師堂。弘化3年(1846)に建立した、総欅づくり。日蓮聖人像を安置している。
また、祖師堂の前に設置されている建物の屋根と並ぶ高い碑。
「紀元二千六百年記念」と刻まれている。1940年(昭和15年)に神武天皇即位紀元(皇紀)2600年を祝った一連の行事で各地でこうした碑などが設置されているが、誕生寺のものは一際目立つな~
横浜や東京からの献納者の名前が散見される。
祖師堂、建材は江戸城改築用として、伊達家の藩船が江戸へ運ぶ途中遭難し、譲りうけたものとのこと。迫力がある美しい建築で、1周じっくりと見学した。
また、鴨川市内最大規模の木造建築であり、建築当初の状態をとどめている貴重な建物だという。
隣には龍王堂。
カメヤマローソクのベンチ。神仏用ローソクらしいが、このベンチは初めて見た。
昭和な土産店 面影
また、誕生寺周辺に残る昭和な土産物店を探していると、祖師堂から東、伊南房州通往還沿いに一軒残っていた。広い駐車場の奥にある。
角熊製菓本店製菓工場。鯛せんべいの製造直売店と看板が出ている。
房州おみやげ、カドクマの鯛せんべい…外観が昭和な雰囲気そのもの。現在もこの場所で手作りされているとのこと。鯛せんべいは亀屋本店が有名だと思っていたが、こんな裏手にも販売しているお店があるのは知らなかった!
そして誕生寺の周辺、宝物館の裏手から駅へと戻る。
昔の写真を見ると松が並ぶ右手の芝生のあたりにも昔は店舗が存在していたように思ったが気のせいだろうか。
南房総国定公園にも含まれているとのこと。
そして最後に誕生寺西側にある売店。
駐車場奥にあるアサダ水産、魚介類がカラフルな文字で紹介されていて昭和の売店の面影が濃い。
予約制で炉端焼きも出来るとのこと、誕生寺・波の伊八館・美味しい魚介を食べて温泉旅館でゆっくり、1日過ごせる小湊は今も変わらず房総を代表する観光地でした~
(訪問日:2022年3月)
-
前の記事
小湊の老舗菓子店「かまた」昭和4年創業。名物は”あんもり” -小湊⑶ 2023.07.02
-
次の記事
勝浦タンタンメンカップ麺販売中!小湊漁業協同組合直売所にて -小湊⑸ 2023.07.10
コメントを書く