登録有形文化財「武蔵屋」。旧旅籠を移築保存、現在はレストランに -木下⑸

木下街道沿いに、国登録有形文化財に登録された古民家を利用したレストランが営業している。
印西市で初の国登録有形文化財。そしてリノベーションされ、一流のシェフがもてなす料理が評判とのこと。今回は見学だけだったが、ランチに訪れてみたい!
木下駅近くに佇む「武蔵屋」
千葉県印西市木下1645−1。成田線「木下駅」北口から徒歩5分ほど、木下街道を歩いていると黒い板張りの壁が見えてくる。

向かい側に駐車場があるので車の方もぜひ。
平成19年に国登録有形文化財に登録された「武蔵屋」。印西市では初の登録だそう。

建物は全体的に補修がされており、綺麗な状態。地域の人々に守られているのが伝わる。

武蔵屋の歴史
町屋カフェ武蔵屋のホームページに歴史がまとめられているので引用する。

「武蔵屋」は江戸から明治にかけ、木下河岸で旅籠を営んでいたと伝えられる岩井家の主屋です。明治末から大正初めに行われた利根川の堤防改修工事に伴い、現在地に移築されました。印西市では初めての登録有形文化財であり、2003年より「まちかど博物館」として市民に開放されています。
2011年3月11日の東日本大震災により大きな被害をうけ解体の危機にさらされましたが、2014年には国及び市の助成と地元のボランティアの方々の支援により耐震改修工事に着手し、2015年9月に完了しました。
元々は東にある木下河岸の方で旅籠を営んでいたとされる、岩井家の住宅。現在、岩井家の蔵が残っていると聞いたので、この建物が存在したのもそのあたりだろうか。

「震災で半壊した江戸時代の町屋を、周辺住民の協力で復活」
震災の影響で半壊したが、取り壊しになるのではなく復活したというのは本当に凄い。地元の方にとっても大切な建物なのだろう。

印西市のホームページに建物の説明がある。
岩井家住宅主屋(旧武蔵屋店舗)
木造2階建、瓦葺、建築面積は約99平方メートルです。
通りに南面して、桁行5間半、梁間3間、切妻造桟瓦葺2階建を建て、その北側に桁行2間半梁間5間半の切妻造桟瓦葺平屋建を直角に付けています。通り側に広く土間、2階と背面突出部に居室をとります。1階土間まわりや、2階の手摺付縁などに旅籠の雰囲気を残しています。
この家は利根川の囲堤上にあった旅籠屋で、堤防工事に伴い大正3年ごろに移築、改築。その後、米・肥料商を営み、現在は住宅として使用しています。
ホームページの情報は、カフェになる前の話のようで住宅として使用されていると書いてある。

レストランの営業時間は終わってしまっているので、恐る恐る入り口に近づいてみると、店員さんが見学を許可してくださった。

最近、古い旅館に宿泊することが好きなので、旅館だった時代に宿泊してみたかったなあ…

「武蔵屋まちかど博物館」を見学
扉を開けるとタイムスリップしたかのような…空気が変わった。

これは素晴らしい。当時の小物などもそのまま残されており、すべてが博物館の展示品。

右に下駄箱。奥に調理室がある。


大正時代以降、肥料商を営んでいたときのもの。「岩井鷹太郎商店」と看板に書いてある。

レストランでは、シェフが自ら育てている有機野菜を使った料理が評判が高く、都内からも多くの方が訪れるらしい。ホームページから予約必須です!

階段の手前には、写真が展示されていた。

お祭りが開催されている様子。現在の商店街の辺りかな?


ラジオやアイロンも年代物!どれも普段は見ることができないものなので興奮する。

1階の奥は畳だが、テーブルとイスが置かれていて、古民家カフェならではのおしゃれな雰囲気。

庭から入る緑の光が反射してとても綺麗。癒される空間。

扉の障子のところにある細かい細工が気になった。

座敷の奥は廊下、庭も出ることができるらしいがこの日は雨。

トイレは綺麗な現代的なものだったが、手を洗う水くみは昔からのものが残っていた。

廊下の奥にある一部屋は書などが飾られている部屋。桐たんすが綺麗。

昭和20年、岩井家長男が戦地から送ってきた手紙が展示されている。

古民家の2階へ
いよいよ、2階へ。急な階段なので気を付けて…

2階は2部屋。そんなに広くはない。2階の窓がひざ下にあるのが気になった。

でも全体的にリノベーションされているのでとても綺麗だ。維持するの大変だろうな…

こちらは大正初期の利根川を高台から撮影したもの。左にあるのが移築前の武蔵屋だ。

これは説明が無いが、木下河岸の昔のイラストだと思う。多くの舟が行き来している様子が伝わる。

武蔵屋は歴史、人をつなぐ交流の拠点とすることが描かれている。地域活性化でこのように古民家を中心に据えて取り組んでいる例は多くはないので、勉強になる。

こちらは、木下から手賀沼を利用した通運のイラスト。武蔵屋が描かれている。

隣の部屋はレストランのスペース。

コロナの影響で建物が次々と取り壊されるニュースばかり耳にしているので、こういう活用の事例を知ることができるのは嬉しい。

武蔵屋の昔の様子を描いたものだろうか。

江戸時代の旅人もこの建物を利用したと考えると、とても感慨深い。

木下の観光スポットとして、若い人にもこの建物、そしてレストランの良さを知っていただきたいと思った。
(訪問日:2021年5月)
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