勝浦「松の家」に宿泊! 国の登録有形文化財の旅館、江戸時代創業の宿に泊まろう! -勝浦⑴
千葉県の勝浦にある老舗旅館といえば、登録有形文化財の旅館「松の家」。今回念願だった松の家に宿泊してきました!江戸時代創業の純和風な旅館は建物だけでなく、海の幸も部屋も素晴らしかった!
この素晴らしい旅館の魅力をもっと多くの人に届けたい。旅館業が苦しい中でも、残り続けて欲しい千葉が誇る老舗旅館です。
勝浦の旅館について
勝浦には海水浴客のための旅館が多数ありました。昭和3年、松井天山が描いた勝浦町鳥瞰図にも松の家をはじめとした旅館が載っている。
明治33年4月に発行された「総水房山:房総名勝誌」によると、第一が幸前楼とある。
大正7年に発行された「房総静養地案内」では、勝浦の旅館として幸蔵楼。松の蔵。高砂館。清水館。勝浦館。一文字蔵とある。蔵なのか、前なのか読みづらいのだが、同じ旅館であろう。
1949年発行『全国市町村便覧』(全国教育図書)にて勝浦町の旅館が「全国旅館等級別一覧表」に載っている。(ランク1が最高)
2 三日月
2 勝栄館
3 松の家
3 清水館
4 濱田家
松の家はランク3。
松の家は勝浦を代表する旅館として紹介されてはいないが、逆に大規模な土地ではなかったため、生き残ることができたのかもしれない。往時の勝浦を知ることができる貴重な旅館である。
文化財の旅館「松の家」外観
松の家は、JR勝浦駅から徒歩で10分ほど。もちろん駐車場もあるので車でも行くことができる。
勝浦の朝市で有名なあたり、旧市役所通りにある大きな木造建築が松の家だ。正面中央の玄関には立派な唐破風が目立つ。
松の家の創業は江戸時代末期。現在の建物は昭和初期に建てられたもので、2003年に国の登録有形文化財に指定されている。
千葉県では国の登録有形文化財に指定された旅館は、大多喜町にある「大屋旅館」と松の家の2か所。とても貴重な建物だ。
唐破風の上にある瓦は、松の家の家印を表しているのだと思うが、暗号のようでわからない。
建物の外観だけでも素晴らしい。
玄関
開放的な入り口を入ると…
意匠
タイムスリップした感覚に陥るレトロな雰囲気。天井の格子や、床のタイルも上品。江戸時代からの風格を感じる。
入り口の上、ガラスには青いステンドグラスが控えめに佇んでいる。光が差し込んで綺麗だ。
ステンドグラス靴箱もよく見ると、右奥に1番、2番と古い字が書いてある。
レトロな電話ボックス
そして最も注目したのは電話ボックス!現在は使われている雰囲気は無いが、ピンク色の電話は現在も使用可能だそうだ。
昔の電話番号が書かれている。このような木製の電話ボックスはあまり見たことが無い。とても貴重な文化財である。
貴重な展示物も
至る所に凝った意匠があり、目が離せない。
こちらは昭和初期のすごろく。小学2年生のすごろくと書いてある。今の私たちが見てもとても面白い。
昔使っていたのだろうか、そろばんもいくつか置かれていた。現在は計算も簡単な時代になった。
柱時計には松の家の名前が入っている。ボーンボーンと時を教えてくれる時計だ。
廊下
チェックインを済ませてから1階の廊下を探索。写真撮影はOKとのこと。
古いテレビ
古いテレビと、上にあるのはラジオ?だろうか。初めてこのような形のものを見た。以前使っていたものだという。
箱に描かれていたバラの絵がとても渋くて素敵。
貴重な展示も
廊下にあるスペースには、椅子と机が置かれていた。
大正時代のすごろくという大変珍しい展示物。それほど松の家が歴史深い場所であることがわかる。
こちらは、松の家の昔の写真。女将さんのお父さんがまだ小さい頃の写真だというので、随分と昔のもの。当時は門柱もあり、道幅が違ったのかもしれない。
タイル
廊下にあるお手洗いの床がタイルで敷き詰められていた。
タイル好きな方にとってはたまらない。
大正時代?!貴重な鏡
そして廊下のおくにある鏡に注目してほしい。
ただならぬ気配を感じる鏡。女将さんにお話を伺うと、女将さんが生まれる以前からあったというので大正時代からあるのではないかとおっしゃっていた。
文字が右読み、しかも旧字体の”か”。電話番号も2桁だ。ガラスの表面に文字があるのではなく、ガラスの中に埋まっているので綺麗な状態が維持されているとのこと。昔の方の技術力って凄い。
風呂場
鏡の隣は風呂場。風呂場は貸し切りで事前に予約する。
古代檜(ひのき)風呂。樹齢約二千年の巨木が倒木後に百五十年を経て最も強度が出た檜でつくられたという風呂を贅沢に貸し切りできる。
循環されているのでとても清潔なお風呂である。
2階へ
階段を登って2階へ。ちょっと急勾配な階段も昔のつくりを感じさせる。
松の家が遊廓建築だったのではないかという噂が立つのも無理が無いと思うくらい、立派。女将さんに確認したところずっと旅館として営業していたため違うという。遊廓、赤線はまた別の場所なので次回の記事で。
今回の部屋は階段のすぐそば。
お部屋
本館の部屋は国の登録有形文化財。
登録文化財だけあって、内装だけでなく置いてある小物にも趣を感じる。
窓からは通りが見える。昔の旅人もこのように眺めたのだろうか。
障子戸、中央には開閉式の窓ガラスがある。これは先人の知恵。戸を閉めていても景色を楽しむことができるのだ。
2階の廊下
2階の廊下も探索。本館は昔ながらの作りのため、洗面所は共同。お手洗いは部屋ごとに分けられていた。
左手が廊下とお手洗いだ。
初めてこうした共同の旅館に宿泊した。昔はこれが当たり前だったのかと実感。
廊下の途中にある部屋は大広間。宴会のスペースとして使われているらしい。
食事
今回は、国の登録有形文化財のお部屋指定『地魚の刺身舟盛り』のプランで宿泊した。約1万2000円ほど。時間になると続々と豪華な料理が運ばれてきた。
舟盛り2人前。勝浦漁港で獲れた新鮮なお刺身や貝が並ぶ。女将さんが丁寧に魚の説明をしてくださった。
サービス?してくださったのか、アワビのお刺身も。初めてこんなに美味しいアワビを食べました…
こちらは朝食。旅館で食べる和食はなぜこんなにも美味しく感じるのか…
新型コロナウイルスの対策もしっかりと整っており、建物も料理も申し分ない充実した旅館だった。しかも、GOTOキャンペーンでさらに安くなってしまった…
コスパ最強の旅館。GOTOキャンペーンは高級旅館の方が儲かるというようによく聞くが、こうした老舗旅館が潰れてしまうのはもったいない。私たちにできることをして老舗旅館を応援していきたい。
(訪問日:2020年8月)
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