「神埼町川岸商店街」利根川水運で栄えた宿場町の趣深い街並み -神崎⑶
利根川の水運で栄えた、香取郡神埼町。今回紹介する商店街「神埼町川岸商店街」は『利根川図誌』にも描かれている宿場町だったそうです。
現在も残る商店街の町並みを記録に残します。
宿場町「神埼町川岸商店街」
千葉県香取郡神崎町神崎本宿。最寄り駅の成田線「下総神崎駅」からは国道356号を西へ20分ほど。
駅からの町並みは前回までの記事に書いたのでぜひ→成田線「下総神崎駅」~商店街を歩く。洋館は役場建築? -神崎⑴
国道から利根川へと伸びる一本の道。ここが商店街の入り口。
江戸時代末期から明治にかけて、江戸への物流手段として欠かせない存在だった利根川の水運。
その利根川沿いに存在する神埼町も他の街と同様に宿場町として栄え、街道沿いには多数の商店が並んでいたそうです。鉄道の開通、物流の手段が川から道路へと変化した現在は、商店街もシャッター通りへと変化してしまっています。
商店街にある和菓子屋さんに飾ってあった暖簾に『利根川図誌』の第五巻に描かれている神崎神社の様子が。
暖簾の右側が利根川。利根川から船で上陸し、商店街を通って中央にある神崎神社へ行く人々。
地形は現在とほぼ変わっていない様子。商店街は宿場町として様々なお店が並んでいた様子がよくわかる。
なぜ、駅からこんなに離れた場所に商店街が形成されているのか。それは水運で栄えた街だったから。検索してもほとんど情報が無い商店街を記事で記録に残したいと思います。
現在も営業しているお店があり、よく見ると建物が古い。
向かい側にノスタルジックな雰囲気の建物が…
お蕎麦屋さん「野田屋」だったそうです。神崎神社へお参りに訪れる人が立ち寄っていたのかな、商店街にはいくつかお蕎麦屋さんの面影が残っていた。
こちらは「日東寺書店」。現在は介護施設として再利用されているようだ。
気になる古民家
元書店の隣に、気になる建物が。
武田薬品の「プラッシー」のシールが残っていた!懐かしい方も多いのでは?私は飲んだことがない…
プラッシーの広告があるということは、米屋や酒屋と思われる。
雨戸が開いていたので覗いてみると…
なんだかリノベーションされてオシャレな家具も置いてある…?なんだろうここ。とても気になる。
しかし、扉は開かず。商店街の和菓子屋さんにも尋ねてみたがわからなかった。誰か知っている方いますか?
また、向かい側には神崎神社への近道の石碑。
寺田屋本家
レンガ壁が並ぶのは、日本酒醸造所の「寺田屋本家」。
レンガ壁は、表だけで裏はコンクリートになっていた。
ホームページに素敵な言葉が書いてあった。
微生物も寺田本家で働く人も元気に働く寺田本家。
多種多様な力(微生物・人・モノ・コト)が働いて美味しくて健康に良いものができる。
発酵とは「変化」すること。
「発行の里」として神埼町の町おこしが行われているが、寺田屋本家は創業340年以上の老舗!
創業は、延宝年間(1673~81)。現在は24代目だという。
昔は利根川から江戸へまで船で商品を卸すのに、日持ちする発酵食品が喜ばれたとのこと。
神埼町では日本酒の醸造所が2軒、醤油醸造所が1軒、現在も営業している。
今回はお休みだったが、併設されている「発酵暮らし研究所&カフェうふふ」が人気とのこと。今度は行ってみたい。
千葉県県公式観光物産サイトによると、江戸時代に神崎に移転してきたという。
近江で創業した「寺田本家」は、江戸・延宝年間に神崎に移り、以来約300年に亘って酒造りを行ってきました。原料米は全て無農薬・無化学肥料栽培。契約農家が丹精込めた米と、蔵人たちが自社田で収穫した米を原料に、蔵内の湧水を仕込み水として使用した昔ながらの「生もと造り(きもとづくり)」で酒を醸しています。
また、和菓子屋さんに展示されていた、江戸時代に描かれたと思われる寺田屋本家の絵。
現在とあまり変わらない佇まい。江戸時代から受け継がれてきた伝統が今も残っているのが凄い。
商店街の現在の様子
宿場町として賑わった商店街の現在の様子を見て行こう。
趣のある建物
寺田屋本家の向かい側にある建物。
パッチワークのような素敵なデザインの格子窓に、入り口までつづく石畳。
趣のある佇まい。元々どんなお店だったのか、皆さんは雰囲気からわかりますか?
正解は、お蕎麦屋さん。商店街の和菓子屋さんの方に教えていただきました。
昔の人々にとってお蕎麦屋さんは欠かせませんね!閉店してから既に時間が経っているようだけど、素晴らしい建物。
江戸屋スーパー
3階建てのビル。こちらは最近までスーパーだったという。
しかし、私が訪れた時は閉店していた。
2014年時点では営業していたようだ。閉店したのはつい最近なのかもしれない。
店内。思ったよりも広い。商店街でお昼ご飯を買おうと思っていたので、営業しているお店が少なくて困ってしまった。
普段写真に撮っているコンクリート製のゴミ箱よりも年代が新しそう。
向かい側には2階建ての建物。そば屋っぽい雰囲気。営業していない…
豆腐店「月のとうふ」
商店街をさらに進む。
右手にある建物は豆腐店「月のとうふ」。東京の豆腐店で修業しているときに神崎の大豆に出会い、神崎で独立することを決めたという。
訪れた日は営業時間外のようだった。残念!
かつては”銀座”だった商店街
手前に見えるのは金物店「シロキヤ」。営業中。
そういえば、昔ながらの金物店が営業している商店街も少ないな…今はホームセンターに行く人が多い。
商店街の真ん中あたりに、街灯のアーチが残っていた。
「お買物は神埼町で」
商店街でのお買物を促進するメッセージ。今営業しているのは数軒のみ…
地元の方によると、この商店街が”銀座”と呼ばれていたこともあるほど賑わっていたそうだ。
当時は買い物客が多くて通れないほど商店街が混んでいたというが…
神埼町の名物を販売している「小林菓子舗」へ立ち寄った。次回紹介する。
立派な蔵が現存
アーチの横には、立派な蔵が残っていた。
トタン板で覆われているが、白塗りの壁だろう。住居の部分は改装されているが、蔵だけは当時のまま残されているのかもしれない。
特に気になったのが1階部分。持ち送り?なんと呼べば良いのかわからないが、屋根を持ち上げる木製の板が連なっている。
商店街の現在の様子
”銀座”と呼ばれるほどに賑わっていた、昔の商店街の様子を見てみたいなあ…写真など残っていないか探してみよう。
裏道に可愛いシャッターイラストの建物が。元電気屋さんかな~
こちらは、ハイショップ「今長」。コンビニのような雰囲気。
店内に入ってみたが、すぐに食べることができる食べ物は売っていなかった。カップラーメンなどはあったが…お昼ご飯は買えず。
屋根の看板には「ハイショップ」と書いてあったが、こちらの看板には「マイショップ」と書いてある。
向かい側はリビングショップ「イイジマ」。
商店街、誰も歩いていない…静かだ。
精肉店「木内肉店」は営業している様子だったが店頭に商品が無かった。
私が訪れたタイミングが悪かったのかもしれない。
古い街灯に加盟店の看板だけ残っているのがなんだか切ない。
路地裏に放置されていた、吸い殻入れ。「日本専売公社小見川営業所」と書いてある。
「木内肉店」の隣の「木内電機商会」は横から見ると建物の古さが際立つ。屋根が重厚だな…
茶葉販売店の「河内園」。2014年では営業していたが閉店してしまったのだろう。
利根川へ
左の建物は、2014年のストリートビューを見ると「香蓮堂(こうれんどう)本舗」と看板が残っていた。今は無い。
「古代風味の手作り煎餅」炭火焼きのお煎餅、食べてみたかったなあ。
2014年に存在した小さな昭和シェルのガソリンスタンド「坂本商店」。
現在は面影が無かった。
いよいよ利根川へ。左は「弥六商店株式会社」。名前からして歴史を感じる。
一番利根川に近いところにある建物。元商店かな?
現在は堤防があり、昔のように利根川からの渡し場は無い。
川沿いで一休み。本当だったら商店街で買ったお煎餅とかを食べてゆっくりしたかったけど、思っていた以上にお店が閉まっていて残念。
利根川から神崎神社へ。その宿場町として栄えた商店街の歴史を少しでも残せたら。
駅から商店街まで、歩いて30分近く。
よほどの歴史マニアでない限り歩いて訪れないだろう。だから情報が少ないのだと思う。
でも、利根川水運で栄えたこの街並みは歩いたからこそ、実感することができる。駅からはちょっと遠いけど、頑張って歩いて良かったと思った。(ただ昼ごはんは先に済ませたが方が困らないかもしれない)
(訪問日:2021年6月)
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