鐘ヶ淵駅前商店街(旧商栄会)。アーチをくぐると、昭和の八百屋に驚く… -墨田⑶

「鐘ヶ淵駅」。カネボウ化粧品のカネボウは鐘ヶ淵で創業した紡績会社であることから、その名前がついている。かつては多くの人が集まった鐘ヶ淵駅周辺は、4つほどの商店街が枝分かれしていることからも、その繁栄の様子がわかる。
現在はというと、商店街としての組合の機能は無くなり、商店街の名前は消されてしまったが、商店街に残る建物がそのかつての姿を教えてくれる。
鐘ヶ淵駅周辺の商店街
鐘ヶ淵駅を中心に羽を広げるように、商店街が4つほど広がっている。

その中のひとつは「梅若商栄会」。商店街にはお馴染みのレトロな街灯。比較的綺麗な街灯はクリアな白色。夜になったら幻想的な雰囲気になるんじゃないかしら?


通りには、錯覚で薄っぺらく見える中華料理屋の建物。「光陽苑」とあるが、現在は営業していなさそう。その手前には「大鳥百貨店」という、昭和の古き良きデパートが並んでいたのだが、現在は跡形もなくなってしまった。駅前がやけに広く感じたのは、大鳥百貨店が無くなってしまったからだろう。

踏切の反対側は、「鐘ヶ淵通り商店街」「平和会」。
鐘ヶ淵通り商店街もかなり魅力的だったので、また次の記事に。

鐘ヶ淵駅前商店街へ
鐘ヶ淵駅を降りて右側、建物の間にアーチの看板が見えるのが「鐘ヶ淵駅前商店街」。以前の写真を見ると、左手にはマクドナルドがあったが、現在はファミリーマートに。

商店街の入り口には店名がずらっと書かれたアーチが残っていた。商店街の名前が書かれていないのは、商店街振興組合がなくなってしまったためであるらしい。旧商栄会として活動していた歴史が終わってしまっても、アーチはそのまま残っているのが嬉しい。

訪れた曜日が悪かったのか、シャッターが目立つ商店街には地元の方の通り道になっていた。

「渡辺せんべい」は戦後すぐに開店したせんべい屋。

こちらは定食屋かな?でも看板がなく、店名がわからない…

と、思ったらドアの部分に掘られた文字。き、まるだ?だるま?アーチの店名を重ねてみてもわからず。

見て驚き「肉のブッチャー」
「肉のブッチャー」というチャーミングな看板。なのに、販売しているのは野菜…

店からも溢れる野菜の数…色とりどりでとても美味しそうだけど、下町らしさ全開ですわあ…と目が点になっていた私。
調べると、テレビや映画でもよく使われている八百屋らしく、この雰囲気を気に入った山田洋次監督がロケにも使用したこともあるのだとか。このお店の個性が評判になっていて素敵。

テレビ東京の「出没!アド街ック天国」の紹介によると、
青果店。 店名は、元々お肉屋さんだった店舗をそのまま利用しているため。目玉は夕方に始まる「ブッチャータイムサービス」。5~9割引も当たり前で、儲け度外視で売り切ります。それでも売れ残った野菜は、閉店後になんと無料で提供しています。 ※日曜定休
想像以上に強烈なインパクトの紹介。地元の方にとっては恵みの店なのかもしれない。

さくらんぼとか転がって落ちてるけど、細かい部分は気にしないで…
飲食店が密集した路地
ブッチャーの隣の路地は、喫茶店や飲み屋が密集しているみたい。

スナック&パブの「やなぎ」と、お好み焼き・もんじゃ、割烹の「ぶんぶく」。ぶんぶくは、商店街のアーチには記載がなかった。

その向かい側には、美容院と福祉サービスの建物。高齢化にともなって商店街に今必要なのは福祉関連のお店なのかもしれない。

「喫茶志摩」は、外観が茶色を基調としている建物は喫茶店のお手本のよう。

入ってみたいな~と思ったら、「十八歳未満禁止」の表示。普通の喫茶店じゃないの?!
ちょっと怖気づいてしまった。店内も見えないし…
調べると、グーグルマップには記載がないが、店内は広く普通の喫茶店のようだ。レトロゲーム機が置いてあるらしい。ゲーム機があるから大人の遊び場ってことなのかしら。

手前には「カフェコロラド」。こちらは純粋にカフェのようで、窓から店内も見ることができる。一度お茶をしてみたい。

路地を抜けて再び商店街を歩くと、看板建築風の建物が角に。周りの商店と比べても、明らかに目立っている。柱には「土橋」とだけ残っており、どんなお店だったのかはわからない。

前面ガラスで覆われた開放的な店舗部分から、衣料品店とかだったのではないかと勝手に想像する。
レトロな理容室
商店街をさらに進んでいると、右に傾いた建物を発見。

右側がちょっと埋没しているような気もする水色の建物は「小沢理容室」。昭和33年からの営業の理容室には、カネボウで働いていた方も多く通っていたのだとか。

建物の隣には小沢と書かれた防火用水。しっかりと右読み。

最近は1000円で時短カットなんかも流行っているため、こうした下町のレトロな理容室はますます珍しくなっていくだろう。
少し進んだ先、反対側にある建物も理容室。新しく理容室GOLDの看板が設置されている。

「カネボウバーバーチェーン」と鐘のマーク。加盟店ということだろうか?カネボウバーバーチェーンとは一体?

野いちご
スナック「野いちご」というかわいらしい店名に負けず、看板建築が2軒続いている。

「太平食品」の隣に空いた空き地から、長い煙突が見えた。銭湯が近いらしい。

銭湯「田中湯」
角を右に曲がると、銭湯「田中湯」。

墨田区の最北端にあるレトロ銭湯「田中湯」は口コミを見ても「アットホームで良い」と書かれている。人気の銭湯のようだ。
戦前から営業しており、建物は昭和27年頃のつくりで、唐破風の日本の銭湯の特色が色濃く残っている。

営業時間は16時~(月曜定休日)

帰りは東武伊勢崎沿いに沿って鐘ヶ淵駅へ。線路沿いは空き地がとても目立っていた。再開発でもするのだろうか?駅前ということもあり、マンションでも並びそうな勢いの広大な空き地。

鐘ヶ淵駅前商店街は、商店街の名前がなくなっても個性溢れる昭和レトロなお店が多く残っていた。このまま名前とともに消えてしまうのは惜しい商店街だ。
(訪問日:2020年7月)
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