木内ギャラリー(旧木内家別邸)市川真間の大正モダンの洋館 -真間⑷

木内ギャラリー(旧木内家別邸)市川真間の大正モダンの洋館 -真間⑷

大正モダンを感じることができる西洋館。千葉県市川市真間山に眠っているのをご存知でしょうか。

市川市は戦前、「東の鎌倉」と呼ばれるほど、永井荷風、井上ひさし、東山魁夷をはじめとして様々な文化人が住んでいた別荘地であった。その名残を感じることができる西洋館「旧木内家別邸」は無料で観覧できる隠れスポットである。

旧木内家別邸

旧木内家別邸へは、京成国府台駅から徒歩10分ほど。国道14号線から松戸街道へ、千葉商科大学の手前の東側の坂を登っていくと木内ギャラリーの入り口が見えてくる。

木内ギャラリー正面入り口

気が鬱蒼と茂るまるで森の中に洋館が建っている。

真間に眠る洋館

しかし、あれ?入り口が道沿いにない…どうやら反対側にあるみたい。不思議だなあ~

洋館側面

木内ギャラリーの正面。市川市木内ギャラリーは観覧無料。周辺はマンションや住宅なのでとても静かな雰囲気である。

旧木内家邸

新型コロナウイルスの影響で窓がすべて開いていた。

木内ギャラリー

旧木内家別邸跡地周辺の緑地保全についての看板も。周辺のことについても保全活動が行われているのが凄い。

旧木内家別邸跡地周辺
Advertisement

木内重四郎について

旧木内家別邸を建てた木内重四郎(1865⁻1925)は明治~大正時代の官僚・政治家である。慶応元年(1865年)に千葉県山武郡にて生まれ、県立千葉中学校(現千葉高校)を首席で卒業、東京帝国大学文学部政治学科に入学。政治家を志す。

明治25年(1892年)に三菱財閥の創業者・岩崎弥太郎の次女磯路と結婚した。

大正3年(1914年)に市川市国府台の丘、約1万坪の敷地に洋館と和館を併せ持つ別邸を建造。重四郎自らが建設や造園を指揮し、当時としては珍しい鉄骨づくりの別邸であった。高さ12m(地上4階相当)の塔屋も特色で、眼下に江戸川や京成電車の様子が眺められたそうだ。

大正14年(1925年)を千葉県市川市国府台の別邸にて61歳の生涯を終えた。

移築・復元された旧木内家別邸について

旧木内家別邸、現在の木内ギャラリーは、平成16年(2004年)に洋館部分だけを移築・復元されたものである。和館は以前まで生活をしていた方がいたため、老朽化が激しく、保存するのは困難であったとのこと。

洋館の位置も50mほど東に移動し、旧木内家の邸宅の他の敷地は現在マンションになっている。洋館を市川市木内ギャラリーとして建築様式を公開しているだけでなく、市民の芸術文化に関する活動の場として貸出されているようだ。

先ほど感じた入り口の違和感も、建物が移築されたため当初の場所ではないということがわかった。

Advertisement

玄関

では、市川市木内ギャラリーへ!

市川市木内ギャラリーの看板

玄関の照明も素敵。照明器具も当時から残っているものもあり、貴重だ。

玄関の照明
玄関の天井

玄関に入り、ここで靴を脱ぐ。手摺りもあって親切。

洋館の玄関

扉もオリジナル。

玄関の扉
細かい意匠

玄関の先にあるのは棟札。移築の際に発見され、「明治45年6月起工、大正3年7月竣工」ということが確認できたそうだ。当時の名高い大工、建築家の名前が見える。

棟札
入り口を振り返る

ホール・塔屋

塔屋は非公開。奥に続く階段。かつては塔屋の先に和館の廊下が続いていた。応接室、書斎へと続く廊下。木内家に関する資料が展示されている。

廊下

旧応接室

廊下左手にあるのは「旧応接室」。

旧応接室

クリーム色の縞模様の壁紙と暖炉で、とても明るい雰囲気の部屋である。飾り戸棚はオリジナル。暖炉周りはマントルピースの大理石で、現在は使用不可。

温かみのある部屋

木内家別邸の昔の写真の展示。

木内邸別邸外観
木内邸敷地内

旧書斎

旧応接室の隣にあるのは「旧書斎」。応接室とは違い、クラシカルな雰囲気である。感動して思わずため息。書斎に利用されていたなんて素敵…

旧書斎

床は当時の様子に近い感じで再現されたもの。ぴかぴかの床に、邸宅の豪華さを実感。

寄木張りの床

そしてなんといっても、暖炉と風景画!ヨーロッパのアルプスの風景?みたいな日本とは思えないハイカラなデザインだ。

風景画が素晴らしい

ここではコンサートも行われているらしい。

コンサートにも
風景画

セセッションという、水平線、垂直線を強調し、幾何学模様を多用するデザイン様式が壁から戸棚にかけて利用されている。

幾何学模様

暖炉は緑色のタイルのマントルピースを設けたフランクリン型暖炉が設置されている。

暖炉

暖炉の傍の椅子は「イングルヌック」と呼ばれるもの。

イングルヌック

ヌックは14世紀スコットランドで生まれた家の中の90度のコーナー。イングルヌックは「暖炉脇の暖かく居心地の良い場所」と言われている。

窓際

窓は現在も紐で開閉しているそうだ。

紐を使って開閉

壁紙は後からのものかもしれない。

壁紙
ピアノ
見事な格子天井
Advertisement

旧ベランダー

旧ベランダーは90度に広がっており、白を基調とした明るいサンルームになっている。窓がとても大きいので晴れている日は明るく、景色も良かったのではないかと思う。

旧ベランダー

扉の取っ手の位置が低いと思ったら、ベランダーはバリアフリーのために段差をなくしているようだ。

段差をなくしている

かつての洋館、和館の模型が展示されている。

模型の展示
旧木内別邸
写真付き

旧木内家別邸について手描きで書いたもの↓ 右下の青く囲っている部分が現存しているものであることを見ると、現存している敷地の何倍もの大きさだったことを実感する。

旧木内家別邸の地図

旧木内家別邸は、和館部分は取り壊されたものの、移築・復元された素晴らしい建築だった。

市川市でも保存・利用の活動が活発であり、歴史を後世に残していく姿に感銘する。真間山にひっそりと眠る洋館をもっと多くの人に知ってほしいなと思った。

木内ギャラリー(旧木内家別邸)

営業時間:9時~17時
定休日:月曜日
入館料:無料
駐車場:なし

 

(訪問日:2020年9月)

error: このコンテンツのコピーは禁止されています。