鴨川・太海の老舗旅館「江澤館」に宿泊!画家ゆかりの木造旅館 -太海⑴
鴨川、太海に残る老舗旅館「江澤館」へ宿泊!江澤館は、画家ゆかりの宿として大正期からの木造建築を残すだけでなく、鴨川温泉、外房の雄大な絶景、海の幸を堪能できる宿です。古い建物や海鮮がお好きな方にお勧めしたい老舗旅館となっています。
鴨川「江澤館」の歴史
千葉県鴨川市太海浜153。最寄り駅は、JR外房線「太海駅」。「画家ゆかりの宿 江澤館」へ。まずは江澤館の歴史からご紹介します。
大正時代に創業した江澤館。元々は、造船所で画家のアトリエとして現在の建物を作ったことがきっかけで旅館が始まったそうです。宿の方から話を伺いましたが詳しくはホームページにまとまっていました。
『画家ゆかりの宿 江澤館』波太海岸で作品を描いていた石川寅治と中川八郎を泊めたという民家が、当時造船所を経営していた江澤館です。二人の画家との出会いがきっかけで旅館業に転じ、その後、多くの画家が訪れました。波太海岸を描いた作品『外房風景』で有名な安井曾太郎先生が逗留した宿として今の『画家ゆかりの宿江澤館』があります。
現在、本館として使用されている建物は一部改装されていますが昔から変わらず。百年近くの歴史を持つ木造旅館。国登録有形文化財等には登録されていないが、千葉県内では木造4階建ての旅館建築(現役)は残っていないので貴重な建物だと思う。
現在、本館には消防法の関係で4階への宿泊は不可能。3階は宿泊できるそうなので今度泊まってみたい。
新館の方は、昭和50年頃に建てられたそうだ。本館と新館は地下通路で繋がっており、行き来することができる。
家族経営されているようで、4代目の女将さんと5代目の息子さんが優しく迎えて下さった。
宿泊時に、江澤館の戦前の絵葉書を持っていき、比較の画像を撮影してみた。左下の絵葉書と現在の姿、ほぼ変わらないのが凄くないですか?!
5代目の方に絵葉書を見せたら「うちじゃん!!」と驚いた様子でした。(持って行って良かった~)
ちなみに、本館の右手の洋風なベランダ付のような板見下張りの建物は元アトリエで、現在は使用されていないそうだ。それにしても海風に晒されながらほぼ昔の姿を維持していることに感動…
近代建築好きとして宿泊の価値が高いと思う。
安井曽太郎画伯の画室
本館には、「安井曽太郎画伯の画室」があり、”画家ゆかりの宿”と呼ばれる所以がある。本館4階に見学へ。
昭和初期、安井曽太郎画伯が江澤館を訪問し、代表作の「外房風景」を描いた…
<安井曽太郎画伯の画室>
海上ホテル江澤館は「画家の宿」である。
この歴史で安井曽太郎画伯との因縁は
特筆すべきであろう。
昭和六年の夏、江澤館に滞在した安井画伯は、
作風が調子づいた四十三歳であった。
四階の一室からの眺望を好み人も近づけずにこもり、
眼下の海景を写生した。
安井画伯の風景画では代表作の「外房風景」は、
横長の白を多用した色調の大作である。
夏の陽光をうけた水上と生活が幅広く描かれており、
海風さえ感じさせる力作である。
昭和六年九月、第十八回二科展に出品された。千葉県立美術館 元館長 高橋在久
安井曽太郎画伯が滞在した部屋が現在も保存されている。自由に見学が可能。
房総半島の鴨川市太海、波太海岸は
古くから日本近代洋画家達に注目され、
多くの洋画家が訪れました。
その先駆者と言われる浅井忠が、
房総旅行の途中で波太海岸を先駆的に
スケッチしたのが、写生地としての
波太海岸の歴史の始まりです。
その後、多くの画家が訪れ、中でも
石川寅治と中川八郎が仁右衛門島のある
波太海岸の民家に泊まり、海の作品を
描き、その絵が絵画展で受賞した
ことで波太海岸は画家の注目の写生地と
なりました。
太海の外房の風景は、つげ義春の漫画作品『ねじ式』の舞台にもなっている。
そして、現在も本館2階には多くの作家さんの色紙が展示されており、脈々と続く画家ゆかりの宿の歴史を感じることができる。
太海駅「海上ホテル江澤館」に宿泊
そしてここからは、江澤館への宿泊記録。ぜひ、宿泊の際の参考にしてください。
JR太海駅に17時頃着。駅から徒歩15分くらいだけど、無料送迎があったので駅から旅館まで送っていただきました。有難い。
2食付き2人で2万3千円ほど。
宿泊する部屋は本館の向かいにある新館である。平日だったが他にも数名宿泊していた。
海が見える客室
新館の客室に案内してもらった。夜で分かりづらいが、正面が外房の海!眺めが素晴らしい部屋だった。
新館、といっても昭和50年代に建てられた建物なので昭和感は否めない。口コミでネガティブなコメントが散見されているが、清掃は行き届いていると思った。
しかも、部屋にトイレや風呂もついている。古式ではあるが。
風呂はタイル張り。扇形の風呂が客室についているなんて初めて見た。温泉の浴室に入るので部屋のお風呂は利用しませんでしたが…
新館は鉄筋コンクリート造で本館とは対照的な雰囲気。
大きな鏡には「日立製作所労働組合習志野支部」。保養所として使用されていたのかな?
鴨川温泉・浴室
新館にある浴室へ。
女性用浴室の入り口。入浴時間は夜11時まで。
鴨川温泉なぎさの湯。平成15年に温泉組合が共同で掘削したのがはじまりだという。江澤館以外にも多数の旅館で鴨川温泉を楽しむことができるそうだ。→鴨川温泉宿マップ
【温泉の泉質】
単純硫黄冷鉱泉(弱アルカリ性)【温泉の効能】
神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、関節のこわばりうちみ、くじき、冷え症、疲労回復、きりきず
(かもがわナビより)
タンクで運ばれてくる加水循環消毒ではあるが、温泉成分はしっかり堪能できる!
江澤館、女性用の浴室がこちら。タイル張りで扇形のお風呂。洗い場は2人ほどで大浴場ではないが、泉質が良く少人数でゆっくり楽しみたい温泉だと思った。
ちなみに男性用はこちら。窓からは海の波の音が聴こえ、心身ともに癒されるような。
卓球も無料!温泉卓球を楽しむのもアリですね~
本館を見学
そして、新館は海の真上に建っているが、本館とは地下通路で繋がっている。秘密基地みたいでワクワク!
バリアフリーではないので高低差ありのため注意。
そしてこちらが本館の玄関。
夕食・豪華な海鮮!
そしてお待ちかねの夕食!部屋食でした。
想像上の豪華さ…!!海の幸がここまでか!というほどふんだんに。目の保養です。
伊勢海老や鮑は、鴨川の宿泊キャンペーン(2022年1月)での特典かもしれないので、現在は変更されているかもしれません。ご了承ください!
完食するのに2時間くらいかかったのだけど、片付けに来てくださった方に「綺麗に食べてくれてありがとうございます」と褒めて頂いたのが印象深かった。
これだけの美味しいご飯を残すなんてもったいない!と全て美味しくいただきました。
朝食は、本館の2階にある大広間で。
朝食も豪華だった。伊勢海老の味噌汁が身体に染み渡る…
太海の旅
目が覚めたら海と朝焼け。海上ホテルということもあり、さざ波の音が心地よく聞こえる。
次回の記事でも紹介しているが、太海は昔ながらの漁村の風景が広がっており、細い階段や坂を歩いてみるのも楽しい。また、すぐ近くには新日本百景にも選ばれた「仁右衛門島」も。
客室の「乙姫」と「龍宮」。由来を伺うのを忘れてしまったが、この旅館はまるで竜宮城に繋がっているのではないかと思ってしまう。
そして、最後に驚いたのが江澤館の木製の鑑札!この情報は今まで無かったぞ…
鴨川では二番目の許可が下り、料理店としても繁盛していたとか。芸者さんも呼んでいたのだろう。鴨川の花街、太海のことは調べていなかったのでまた調べなくては。
最近では、「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」もロケに訪れていた。
Googleマップの口コミを見るとネガティブコメントが多くて…
そりゃ、古い建物だし、これだけの年月を姿かたちを変えずに残っていることの方が奇跡。そして値段も良心的なので、老舗旅館としての魅力は十分だと思う。海鮮好き、近代建築好きとしては1年に一度は訪れたくなる老舗旅館だった。
(訪問日:2022年1月)
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