赤線「鳩の街」商店街の裏路地を散歩。※商店街の渋い魅力を探る‐鳩の街⑵

「鳩の街通り商店街」。かつて都内の赤線の中でもかなり知名度の高かった鳩の街は、その名残を片隅に留めながら、現在は平和な商店街が広がっている。
前回は、鳩の街通り商店街のメインストリートを散歩したが、メインストリート以外にも鳩の街の魅力は詰まっている。今回の記事では、鳩の街通り商店街の裏道を歩きながら、昭和の残り香をさがしていこう。
鳩の街通り商店街のメインストリートは、水戸街道に面したピンク色のアーチが目印。鳩のイラストが描かれたアーチから、真っすぐ進む道がメインストリートである。
最初は、メインストリートの西側、向島の手前まで。その後は鳩の街商店街の東側を散歩する。※かなり渋い内容なので鳩の街のカフェー建築、華やかな建築に興味がある方は次の記事をご覧ください。笑
【鳩の街・赤線】社会現象にまでなったアプレ派・鳩の街のカフェー建築巡り!
鳩の街のランチはここ!
広範囲な鳩の街商店街を散歩していると、お腹が空いてくるだろう。日曜日定休日が多い商店街で営業中のある一軒を見つけた。
「三好弥」。
水戸街道に面したショーウインドウには、長年の日光浴でカピカピになってしまった食品サンプルが。いや、こういうお店の方が実は美味しかったりする。
入店するのは緊張するが、常連客に混じってランチを頂くことにした。

コスパが最強。という表現が適している。絶妙に美味しく、そして安い。
詳細は以前の記事で↓
【鳩の街】赤線の歴史探訪で一息「三好弥」でコスパ最強の定食を頂く
鳩の街商店街の西側へ
お腹を満たし、商店街の西側を路地に誘われながら散歩。
早速、「若松」と屋号が残る扉を発見。現在は民家のように見えるが、商店街の裏通りには飲み屋が多かったのかもしれない。

薬局の建物がお気に入り
今回の散策の中でも、かなり好きなフォルムの建物がこちら↓

でも、店名がわからず…スサ〇調剤薬局。
木製の文字が素朴で可愛い。

裏通りもだいぶ新しめの建物で埋まってしまっているものの、所々に昭和の建物がある。

グレーの看板建築と、緑色の外観が不自然にマッチしている。どんなお店だったのかな?

分岐は不思議な雰囲気が漂う。異世界へ迷い込んだみたいな…
今は静かだが、何かしらの商売をしていたと思われる2軒。

左の分岐を進むと、鳩の街で2回目のポンプに遭遇。「路地尊」と書かれた掲示板には地域のお知らせが貼ってあった。

美容室の名残。装飾が西洋風でアンティーク調なのが推せる。

境界線?質屋の登場
複数に分かれた分岐に現れた「質」の看板。
この質屋を境に、向島の花街と鳩の街の赤線の世界が分岐しているのではないかとも言われている。

かつて庶民にとっても重要な場所であった質屋。同じく赤線地帯として知られた玉の井でも数多く存在したが、残っている場所は数軒…。

ある記事を読んだところ、店内も昭和の雰囲気が色濃く残る質屋らしい。現在はどのような方が利用しているのか…

裏には、立派な3回建ての蔵が構えている。
2階建ての蔵はよく見かけるが、3階建てとなるとかなりの迫力。周りの民家からも浮き出ている。

質屋から鳩の街商店街の方へと戻ろう。
扉が2つと、渋い赤色が印象的な建物。

榎本武揚旧居跡
まさか、こんな住宅街に…
予想していなかった「榎本武揚の旧居跡」。もちろん旧跡は跡形もなくマンションになっているわけだが、歴史好きにとって親切な丁寧な看板。最近新調されたものだろう。

近くの細い道には、「目時電気商会」。
日立カラーテレビが時代の移り変わりを感じさせる。今は携帯電話一つあれば電話もテレビも見ることができるなんて、昔の人が知ったら目から鱗だろう。

鳩の街商店街の繁栄を求めて
昭和30年代~40年代が最も栄えていたという鳩の街商店街。
令和2年の現在。半世紀近く経った鳩の街には、シャッターが日常の風景に溶け込んでいる。

ストライプ柄の屋根の名残が浮きだっている木造の建物。

中華料理屋だったのではないかと思われる「菊華」。

奥にある電信柱に「羽子板の鴻月」と書かれた広告があるが、手前のお店のことらしい。
墨田区の伝統工芸品である羽子板を販売、また小さな博物館として開放しているのだとか。商店街の裏通りにひっそりと素敵な場所が残っているものだなあ。

中から楽しそうな声が聞こえる茶色の建物。喫茶店といったところだろう。

緑色の瓦と茶色の壁がシックにまとまっていて裏通りの風景に馴染んでいる。

夏場はよく見かけるもじゃハウス。

んじゃ松…もんじゃ焼きが食べられる食堂だったのだろう。

水戸街道の方まで戻ってきた。最初の定食屋「三好弥」に近い。
「岩竹医院」は3階建ての建物なのだが、見るからに後付けされた3階が気になる。温室のような…

商店街の東側を散歩
さて、鳩の街商店街巡り後半戦。商店街のメインストリートの東側を散策しますよ~

何気ない日常の風景
磯貝荘…商店街の磯貝米店とは関係がありそうな。

一家団欒?の様子。

住宅街に溶け込むように、文化財レベルの建築が残っている…

道路脇に、貯水槽?か何かわからないが、無造作に放置されているのが下町らしい。

駐車場としてポカンと空いた空間も多いが、奥には密集した建物が鳩の街の歴史を感じさせる。


向島に存在した「大倉向島別邸」と文豪の街
鳩の街のお隣は、花街としてよく知られた向島。
かつて接客・宴会を目的につくられた大倉喜八郎の別邸「蔵春閣」という建物が存在した。明治45年に建てられた地位と権威を象徴する、豪華絢爛な建物は、一時期、船橋のららぽーと東京ベイの近くに移設され、現在は大倉の故郷である新潟へ。
となぜ、この話をしたかというと、鳩の街からも近かった「蔵春閣」は、赤線時代はカフェーとしても利用されていたとか。現在残っている鳩の街のカフェー建築以外の場所、建物にも注目して散策したい。

蝸牛庵物語
カタツムリのモニュメントがかわいらしい公園。
「蝸牛庵物語」にちなんで設置されているものらしい。

「露伴児童遊園」と名付けられた公園は、幸田露伴の住居の跡地につくられたものであり、その経緯が石碑にまとまっている。
「向島文学散歩」と大々的に看板が設置されているように、文豪にとっても住みやすい街だったのかもしれない。

遠くから見ると銭湯のように見える建物。


住宅街に紛れて、「でんでん虫 1班」の看板がぶら下がっていた。
先ほどの蝸牛物語にちなんで親しまれているのかな。

独特な注意看板。
同様の看板は、玉の井でも見つけたがこのあたりでは主流?一度見たら忘れられないイラストだ。

アパートが目立つ
古いアパートが本当に多い。鳩の街という土地柄もあって、少し曲がった見方をしてしまう。


赤線があった場所として知られている地帯以外にも、鳩の街商店街の奥に名残があるのではないかとついつい疑ってしまう。


開校141年の学校の近く
増山商店の「文房具天心堂」の看板。
学校も近いため、需要があったと思われる。

遠くから見える「カバンは井上」。それほど主張は激しくないのに惹かれてしまう看板だ。

井上では釣り具ケースも販売しているらしい。以前の写真を見ると、溢れんばかりのカバンが目立っていたが、今日は定休日なのかしら?

「開校141年」
区立第一寺島小学校には堂々たる看板が。141年前というと、1879年?!明治12年に創立というのは文豪と多く関係している町というのも納得。

鳩の街で3回目のポンプとの遭遇。一般の家庭でも利用されているのね。


灰色に染まってしまったアパート?

建物の角の扉がなぜか埋められてしまっているのが気になる…
よく見たら窓に、民泊用の建物として登録されていると記載があった。墨田区は民泊用として再利用されている建物がなんと多いこと…

仲井歯科医院
水戸街道の近くで病院建築を発見。

「仲井歯科医院」と「仲井薬局」。
看板は割と綺麗だ。日曜日は定休らしいため、シャッターが閉まっていて残念。口コミを検索するとそれなりに出てくるので良い病院なのだろう。

窓の格子のデザインが独特…昭和の病院建築って病院ごとの個性が溢れていて、とても魅力的に映る。

後付けされている2階のベランダに隠れて、青色のスペイン瓦が素敵。

伝統工芸品のある街
住宅街をぶらぶら歩いていると、立派な石碑が現れた。「伝統手猫 江戸友禅すみだ川染之碑」。
東京手猫友禅について、東京都工芸染職協同組合のホームページより抜粋
「東京の地域ブランド」でもある「東京手描友禅」は、創造的で洗練されたモダンとも言われたその都会的なセンスは江戸の昔から現代まで庶民文化の中に脈々と育まれて来ました。古くから「江戸友禅」、「江戸模様染」として親しまれ、今日では「東京手描友禅」は「東京友禅」や「東京染友禅」としても、日本国内のみならず海外においても高い評価を得ています。「東京手描友禅」は、経済産業大臣指定伝統的工芸品、東京都知事指定伝統工芸品です。

昭和55年頃から、墨田川の浄化対策によって川の水が綺麗になり、墨田川友禅流しを復活させたとか。向島の花街も近いことから、芸者さんたちが着る着物、江戸友禅がつくられていたのだろう。
また、その近くには「伝統工芸 墨泉庵」の石碑。建物には民泊の張り紙。

何か所目かな…民泊。「KOMA」という英語表記は外国人観光客に向けての民泊だからだろうか?

鳩の街商店街に戻ってきた。
楽しみは最後にとっておくタイプなので鳩の街のカフェー建築は、いよいよ次回まとめます!お楽しみに!
(訪問日:2020年7月)
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