「布佐文庫」の歴史を知る。明治から現代に受け継がれる図書館  -布佐⑸

「布佐文庫」の歴史を知る。明治から現代に受け継がれる図書館  -布佐⑸

布佐には「布佐文庫」という図書が、明治から現在も受け継がれて存在する。現在は、我孫子市図書館布佐分館に布佐文庫が保管されているようだ。そして街道沿いで気になった「利根文庫」は何だろう?

布佐文庫

布佐文庫の歴史

布佐文庫について。

インターネットで調べるとそんなに情報量は多くない。2006年に書かれた「わが街我孫子を歩く」の「緑地と新田開発の歴史を訪ねる」にて布佐の街歩きと合わせて布佐文庫が紹介されている文章が分かりやすい。

布佐文庫
布佐文庫は、明治41年(1908年)、布佐の各家から寄贈された図書を集めて設立された。当初の蔵書数4400冊は、千葉県内の9図書館のうち3番目だったとか。初代理事長に医師松岡鼎が就任、蔵書の中に松岡(柳田)國男署名のものもあった。
当初勝蔵院に置かれたが、その後布佐小学校に移された。その後図書が散逸し、現在は250冊ほどとか。手にとって見ることは出来ないが、目録は受付で見せてくれる。

現在は、JR布佐駅南口近くの我孫子市図書館布佐分館の中に保存されているそう。近くを通ったのにその存在を知らず入るのを忘れてしまった。次回こそは。

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『我孫子市史研究5』より

布佐文庫の変遷について、明治から現在に至るまでの経緯を『我孫子市史研究5』で約20ページにわたり詳しくまとめられている。

そもそもの設立は、町民の智識向上のために呼び掛けて集まった約5千冊。民俗学者として有名な柳田國男は、明治26年に少年時代を送った布川から布佐へ転居し、長兄の松岡鼎らとともに布佐文庫を開いたようだ。

その後、我孫子市立布佐小学校に保存されるものの、米軍の押収を恐れたこともあり次第に散逸…現在は250冊に。

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千葉県内の図書館の歴史

図書館や文庫は地域の住民や青少年のために読書機会を与えたいということもあり、明治45年までに公立図書が7館、私立図書館が9館、簡易文庫が2館設立された。

明治5年、文部省の書籍館が日本初の近代的図書館として設立された。その後、地方でも図書館がつくられていくようになる。
千葉県では、明治25年の千葉県教育会図書館を皮切りに全国でも早い時期に私立図書館がつくられた。

明治41年度の「千葉県公私立図書館」の資料と本文に書かれている図書館を時系列ごとにまとめる。名称(設立年、位置)。

  • 私立千葉県教育会図書館(明治25年、千葉郡千葉町)
  • 宝米同志会文庫(明治26年、香取郡日吉村)※現横芝光町
  • 天賞文庫(明治30年、大多喜町)
  • 成田図書館(明治34年)
  • 私立匝瑳郡教育会図書館(明治34年、匝瑳郡福岡町)※現八日市場町
  • 私立長尾文庫(千葉郡千葉町)
  • 杜城図書館(明治36年、香取郡佐原町)
  • 米本図書館(明治40年、香取郡久賀村)
  • 源図書館(明治41年、山武郡源村)※現東金市
  • 私立布佐文庫(明治41年)

米本図書館は現在も当時の建物自体も残っており、一番原型をとどめているのではないだろうか。その他は、地名すら怪しい場所もある。地域教育の充実度は現在の町の発展とは必ずしも一致していないが、先鋭的な施設が存在したことはその町にとって誇れる歴史ではないでしょうか。

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布佐の利根文庫

布佐文庫とは関係ないが、利根川沿いの街道を歩いていて気になった「利根文庫」。

利根文庫

栄橋の脇にある。現在は閉まっており館内を見ることもできないが、明らかにただならぬ気配。

栄橋の隣

軒下には巨大な「利根文庫」と彫られた看板。かなり力が入っておる。けど、調べても全く情報が無い。SNSにも情報が無い。

利根文庫の看板

2015年に執筆された「古本屋ツアー・イン・ジャパン」の記事が唯一。2/21千葉・布佐 利根文庫

とうに営業を辞めているお店なのだが、どうにかコンタクトを取ることに成功し、目出度く店内を見られることになったのである。

コンタクト取れたのが凄い… そして実際に訪れたレポート。写真が無いので文章から想像するが、古本屋時代のまま本も揃っているようだ。

しかし訪問を連絡してあるのに、通りに面したカーテンは、前日のように閉じられていた。さらに人影も見えぬので不安になるが、しばらくすると横手のドアがカチャッと開き、鳥打ち帽を被り、袖の無い毛織ダブルのジャケットを着込んだ、老紳士が笑顔と共に丁重に迎え入れてくれた。太い梁が天井を支える横長な店内。窓際には背の低い本棚が横長く続き、その正面に背中合わせの長く立派な本棚が立ちはだかる。壁際には本棚が連なり、中央にはテーブルと応接セット。ドアの左横は少し奥まっており、店主の指定席とさらなる本棚が据えられている。店内は手入れも行き届き、現役感充分…だが!とても硬い!どこもかしこも重厚に教養深く硬い!すでに店内に散った二人の神も、この状況に少なからず戸惑っているようだ。街道側の通路には、海外文学文庫・原発関連・旅・中国・ヨーロッパ・創価学会関連・新潮文庫・講談社文庫・講談社文芸&学術文庫・政治学・マルクス関連・資本論・社会科学系スクラップ…ちなみに文庫も見事なまでに硬めなのである。棚の裏側には、経済学・新書・音楽が並び、壁棚には社会科学・映画・世界旅行写真アルバム(大量)・さらに新書などが、ガチガチガチガチ連続する。

実は店主が元大学の学長らしく。
利根文庫のガラスにその方らしき、石井秀郎さんの2021年に発行された本についてのチラシが貼ってあった。

2021年か、最近だな

意外と最近だな~と思っていたら、2022年4月。訃報報告書が我孫子市から発表されていた…
私が訪問した1か月後…もう利根文庫を案内してくださる方はいらっしゃらないのでしょうか。衝撃でした。

謎に包まれた利根文庫。今後どうなるのでしょう。

 

(訪問日:2022年3月)

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