【船橋散策④】船橋南側、地図から見るかつての産婦人科、映画館、銭湯…

【船橋散策④】船橋南側、地図から見るかつての産婦人科、映画館、銭湯…

船橋駅周辺散歩、第4回目。2日に分けて散策した船橋の様子を紹介する記事だが、一体需要はあるのか…まあ、ディープなスポットも載せているので、過去の船橋にあった建物について振り返りたい人が将来いたら嬉しいなと思いながら書き進める。

 

今回は、船橋駅の南側、船橋本町3丁目辺りを散策。住宅地図と照らし合わせながら、病院、映画館、銭湯、旅館の姿が浮き彫りに。そして銭湯が日常に溶け込んでいて、穏やかな時間が流れる場所だった。

 

玉川旅館から三田浜楽園へ

太宰治ゆかりの玉川旅館の取り壊しを惜しみながら、三田浜楽園の石碑へと向かった。

その途中には、巨大なスポーツクラブ。入り口に「炭酸カルシウム温泉」と木製の看板があった。玉川旅館の温泉もなくなり、こうした名残も少なくなってくるのだろう。

コナミスポーツクラブ

船橋市役所の近くにある「湊町2丁目公園」に、「三田浜楽園 発祥の地」の記念碑が建っている。

…のだが、公園で遊ぶ元気な子供たちはこの記念碑に乗っかって好き放題に遊んでおり、遊具と勘違いしているようだった。三田浜楽園があった場所は高層マンションに変わり、当時を懐かしむ人も減っているのだろう。それにしても、扱いがひどくて悲しかった…

三田浜楽園 発祥の地

三田浜塩田から三田浜楽園へ。遊園地も兼ね備えた割烹旅館の三田浜楽園には、作家の川端康成も訪れたそうだ。2006年に廃業してしまったようだが、玉川旅館だけがその面影を残していたんだよね。

三田浜楽園の説明書き

市役所の近くから見る玉川旅館。周りの大きな建物に圧倒されて、ミニチュアサイズに見える。

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色彩鮮やかな建物の正体は?

市役所から東側へと歩いてると、赤い壁と青い屋根が特徴の建物を発見した。

建物を囲む塀は黄緑色のようで、カラフルな色彩に自然と注目してしまう。

何かのお店だったかのような入り口。ガスもいくつか置いてある状況から、飲食店だったと推測してみた。

この敷地内だけに残る大きく伸びている木々にも特徴がありそうだ。比較的整理されて建物も残っている。

 

飲食店だった?

繋がっている隣は民家として使われているようだ。

窓は木枠で、カフェのようなお洒落なつくり。和風と洋風がミックスしているような感覚。

建物の裏は駐車場になっているおかげで、建物の構造がよくわかる。

窓の格子も独特だし、裏にある白い建物と繋がっているように見える。

 

赤い建物の裏手の、三階建てのビルのような不思議な建物。さきほどの建物と繋がっているようにも見える。市役所の近くのため、なにかの接待として使われていたとか?でもそれにしても飲食店らしくないつくりだな。

当時の様子が気になったので、帰宅してから住宅地図を開いてみた。
すると…!

昭和61年の住宅地図

赤く囲った部分「木橋産婦人科」であることがわかった。驚き…
3階建てのビルのような建物は、恐らく入院する方の病棟。一階部分が駐車できるようになっているのも納得した。

赤くお洒落な建物が産婦人科だったとは。確かに、女性も通いやすい雰囲気の建物だった。
元病院の建物は独特なものが多く、最近よく惹かれてしまう。こうして予備知識もなく病院の建物に遭遇すると胸が高鳴るな。

 

そしてその近くでは、妖艶な紫陽花が咲き誇っていた。

紫陽花
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新興館通り

船橋本町3丁目の方へ、東へ東へとあてもなく歩いた。電柱には「新道」と書かれている。新町、新道などを見かけると反応してしまうのは癖だ。

新道の表示

この辺りの南北に伸びる道は、住宅地図によると「新興館通り」と呼ぶらしい。現在は、そんな面影もない住宅街なのだが、どうしてそのような名称なのか気になるところ。

昭和30年の住宅地図

昭和30年の住宅地図を見てみると、本町通りに近い場所に「新興館」があるのを発見。どうやらこの場所から名前が来ているようだ。

そして昭和61年の住宅地図には、「船橋東映(新興館)」と書いてある。映画館があったのか…この住宅地の中にあるとは。船橋駅周辺には現在映画館は無い。どんな映画館だったのか、当時の写真があったら見てみたい。

船橋にはかつて7カ所も映画館があったそうだ。

昭和61年の住宅地図

昭和2年に描かれた松井天山の鳥瞰図には、「劇場蓬莱座」とある。新興館となる前から、賑わっていた場所だということがわかった。しかし、焼失してしまったらしい。

鳥瞰図の説明本である『松井天山千葉県市街鳥瞰図』に蓬莱座の記述がある。

宮下館・蓬莱座
船橋の娯楽施設は盛衰が激しかったが、図で「活動常設」とある宮下館、「劇場」とある蓬莱座はその代表的なもので比較的長く続いた。蓬莱座は戦後東映の映画館になり、現在はそれも壊されて駐車場になっている。

 

昭和2年松井天山の鳥瞰図

 

さらに、何気なく歩いていると、建物の間から銭湯の巨大な煙突が…!銭湯があることを知らなくても、遠くからその存在を知ることができるのは嬉しい。

松の湯の煙突

銭湯に惹かれて歩いていたら、井戸?の名残のようなものを見つけた。しかし、何かの衝撃でずれてしまったのか、地面の下の空洞が少し見えている。大きな地震でもきたら壊れてしまいそうで冷や冷やする。

隙間が見える井戸

井戸の隣には、名もなき石碑。道祖神などの類だと思うが、削られてしまったのか風化か、その本来の姿はわからぬまま。

長屋のような建物もあり、閑静な住宅街は昭和のまま時が止まっているかのよう。

また井戸を発見した。

木製の電柱が半分のサイズになって隠れている。船橋を散策していると、かなりの数のレトロ電柱があった。↓

【レトロ電柱沼】船橋で見つけた11本のレトロ電柱~総集編~

木製の電柱

石のゴミ箱も。井戸といい、ゴミ箱といい、昭和の遺産がそのまま残っているのは嬉しい。

石のゴミ箱

こちらは明治牛乳の木箱。今にも底が抜けてしまいそうだが。

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銭湯・松の湯

遠くから見えた煙突は「松の湯」だった。

松の湯の煙突

近づき、下から見上げると大迫力。

松の湯の全体像はこちら!
アパートを継ぎ接ぎしたかのような、雑多な感じが良い。どうやら入り口はコインランドリーで、そこを通って中へと入るようだ。

 

松の湯

昼間から賑やかなお客さんの姿。地域の方の憩いの場になっているようだ。周辺に漂う銭湯の匂いに癒される。

「今日の入浴明日の健康」。最近の若者(私含めて)銭湯に行く人も少ないと思うけど、昔の人の活力の源は銭湯にあったのかもしれない。

廃材置き場

松の湯の二階部分は、新しめの木の板で応急処置がされているように見えた。もしかしたら、台風とか自然災害で被害があったのかもしれない。

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銭湯・ときわ湯

松の湯だけでなく、「ときわ湯」も近くにある。

ときわ湯

こんなに近くにあって、どちらに行くか迷うな~なんて思っていたら、ときわ湯は閉業しているようだ。残念。
昭和30年の住宅地図には常盤湯の広告もバッチリ載っている。

昭和30年の広告

住宅地図によると、ときわ湯がある南北の通りは「川辺横丁」と名付けられている。
海老川の近くだから川辺?それにしても横丁と呼べるだけのお店はもう残っていない。

川辺ではなく、成田街道に面した川奈部書店から由来した通りではないかという見方もある。船橋にゆかりのある太宰治もひっそりと通っていたのだとか。

川奈部書店
川辺横丁

天然ラジウム鉱泉の看板と明治牛乳のベンチが少し寂しそうに語り掛けている。

ときわ湯の向かい側には、飯塚海苔店。飯塚の「イ」が金色で表されている。

この近くの路地は、木造の建物が残っていた。民家だと思われるが、立派なつくり。丸いランプもかなり古いものだろう。

赤茶のような色味が、渋い味を出している。

川辺横丁で見つけた斎藤豆腐店。創業は明治38年。昔ながらの味と書かれているが、現在も営業しているのだろうか。

斎藤豆腐店の近くの建物で見つけた、木製のしゃもじのようなもの。入り口に飾ってある理由を知りたい。

住宅地図には確かに、松の湯、ときわ湯、斎藤豆腐店の存在を確認できた。南北に伸びる二本の通りは、当時どんな様子だったのだろう。

住宅地図
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そして船橋駅へ

南側の散策を終え、船橋駅とへ向かう途中。成田街道に面した場所にある厳島神社が気になった。

厳島神社

そういえば、この辺りにはもう少し老舗が残っていたような…日が暮れてきたが、もう少し足を運ぶことにした。

「つるや伊藤」は創業安政元年(1854年)に徳川家康が宿泊した船橋御殿(船橋東照宮)近くに開業した。染物、織物を中心に扱っている。

つるや伊藤

残念ながら営業時間は終わってしまっていたが、その雰囲気を見るだけでも楽しい。

染物、織物だけでなく、のれんや手ぬぐい、祭り用品と広範囲なものを取り扱っている。

なんと「美術品商」の鑑札を発見。緑色の鑑札が伝統を思わせる。

美術品商の鑑札

つるや伊藤から船橋駅へと帰宅する途中。
鬱蒼と茂る森に誘われて、ふらふら~と向かうと、なんと旅館妙泉があった。

 

坂を下る

地元の人もあまり知らない旅館。気になる方は↓

【船橋】廃墟旅館「妙泉」。樹林におおわれた住宅街に眠る和洋風の旅館

船橋駅周辺もまだまだ開発されずに残っている場所があるもんだなあ。住宅地図と照らし合わせながら歩くと、意外な建物が病院だったりする発見が楽しい。名所には載っていないスポットをこれからも探していきたい。

 

(訪問日:2020年6月)

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