浅草「台東旅館」。昭和23年頃創業の商人宿へ宿泊!素泊まり格安
浅草の旅館「台東旅館」に宿泊。ここは昔、連れ込み旅館としても営業していたという歴史ある旅館。
浅草の観光地からも近いにも関わらず、その詳細をレポートしている人がいないので今回はたっぷりと記録に残したい。
浅草「台東旅館」の存在を知る
東京都台東区西浅草2丁目1−4。台東旅館は、浅草寺の西側、国際通りの裏側に位置する。田原町駅から歩くと近い。
旅館の周辺は大人向けのホテルが並んでいる。
こんなところに古い建物が残っていることが不思議なくらい、ひっそりと佇んでいた。
浅草へは毎年のように訪れているが、西浅草の方面は今まで歩いたことが無かった。旅館がある通りは「菊水通り」の看板が立っている。
菊水通りの雰囲気に似合う街灯が光っていた。
なぜ、今回私がこの旅館を選んだのか。
『東京ディープな宿』に紹介されていたから。この本自体、2005年の出版で廃業になった旅館も多く、貴重な情報が載っている。
パラパラとページをめくっていると、浅草にある台東旅館が気になった。しかも調べると、現在も営業中。ホームページを見ると英語表記。
コロナ以前は、外国人観光客に大人気の旅館だったそうだ。
ちなみに、コロナ禍では一人一泊2,200円のサービスを提供しており、私も2,200円で宿泊することができたが、現在は変わっているかもしれないので注意。(宿泊日は7月)
台東旅館の歴史
『東京ディープな宿』に旅館の歴史が記されている。
昭和23,24年創業の旅館。宿といっても、富山からの薬売りの行商人を泊める商人宿の性格が強く、また、近所には寺が多いため、地方から訪れたお坊さんたちの宿泊所になっていたとか。
その後、一時期は「♨(サカサクラゲ)」と呼ばれた「連れ込み宿」として機能していた時代も。
現在の管理人は、2000年頃に取り壊しの危機にあった旅館を再生し、住み込みで旅館を営業しているらしい。昭和23年頃というと、1950年頃。約70年経っている建物に約2千円で宿泊できるというのは安すぎませんか…びっくり。
今回、なぜか失念していて、管理人さんに旅館の歴史を伺うのを忘れてしまったので歴史はこれくらいに。
台東旅館の外観
台東旅館の外観を記録。
建物の側面。建物が2つ繋がっているように見える。
増築したのかな?意外と広い敷地。
シンプルだけど窓の意匠も凝っているので見逃せない。
そういえば、旅館に宿泊する前に台東旅館のことを調べたが、日本人で宿泊している人の詳しレポートは見当たらず。穴場の旅館なのかもしれない。
旅館のガラス戸、”旅館”の文字だけなのが気になった。屋号は消したのだろうか。
玄関~共同フロア
台東旅館へ着いたのは平日の夕方17時頃。
既に長期滞在者の方々の靴が並んでいた。部屋もいくつかは埋まっているようだ。
左にあるのが管理人さんの部屋。先にチェックイン、宿泊料金を払う。とても気さくな方で話しやすかった。
右にあるのは共同スペース。外国人向けの観光パンフレットや冊子、ポットなども置いてある。自由に利用して良いらしい。
玄関にある窓。暗くてわかりづらいが、鶴のような鳥が描かれていて綺麗なのだ。
そして、びっくりしたのが正面にある階段。手摺に使われている木材が芸術的過ぎる…!美しい。
遊郭の建物にある階段の美しさと似ているなと思った。
台東旅館も連れ込み宿として機能していた歴史があるから、近いモノを感じるのかもしれない。
宿泊レポート(台東旅館)
旅館の案内の前に、今回の宿泊レポートを。
最初に、「1階の広い部屋と2階の狭い部屋どっちが良い?」と聞かれ、とりあえず2階の部屋を見学。
素泊まりで2千円。シーツなどのセットはセルフである。タオルなどの備品はないので注意。
部屋の鍵は、南京錠のような小さなカギ。今まで宿泊した旅館では鍵が無い部屋もあったので、全然許容範囲。
築70年経過しているとは思えないくらい、意匠は綺麗だ。柱が立派でつい見とれてしまう。
素泊まりなのでご飯は外食にした。持ち込みも可能である。
シャワーは1階に、洗濯機もある。トイレ、洗面所は2階のみ。
1階の方が部屋が広々としていたので、結局1階にした。シャワーの隣の部屋で音が気になるかと思ったが、そんなことは感じなかったな。
旅館の案内図。図を見てわかる方もいるかもしれないが、出入口が3か所ある。
そんなに大きな旅館ではないのに3か所…
これも連れ込み宿の時代に、客同士がすれ違わないようにとのことだろうか?勝手に妄想が膨らむ。(管理人さんに聞こうと思っていたのに忘れていた)
旅館2階の様子
階段を上がって2階へ。
館内の様子を紹介。
2階、上と下で分かれている窓ガラス。夏は風が良く通りそうだ。
下を見ると小さな庭。
2階の部屋は7部屋?他の方とはすれ違っていないのでわからないが、とても静かだった。
廊下の天井。数寄屋造りというのだろうか、以前宿泊した本郷の「鳳明館」と似ている。
さらに驚いたのは照明。当時のまま使われているのは珍しい…
洗面所・お手洗い
2階にある洗面所とお手洗い。
お手洗いは、改装されていて洋式。綺麗なのだが造りは昔のままの雰囲気が懐かしい。流す時は天井からぶら下がっている紐を引っ張るタイプだった。
引っ張る?!初めての経験に戸惑ったが、しっかりと説明書きがあったので安心。今まで宿泊した旅館の中で一番古い形式かもしれない。
向かい側にある洗面所。ピンク色のタイルが素敵!!
ピンク色と水色、ここだけファンシーな雰囲気。
ちなみに洗面所の前にも2部屋ある。
どの部屋も入り口や細部の意匠が異なっているので、本当は部屋も見学したいところだが、ほとんどの部屋が埋まっている様子だった。
裏の階段&シャワー
階段も2カ所。
今回宿泊した部屋はこの階段を降りてすぐ。トイレとは近かったので良き。
昔ながらの急な階段。ギシギシと音がする。
行商の人々、連れ込みで訪れた人々。70年、多くの方が駆け上がった階段は良い味が出ている。
階段を降りると、シャワー室と洗濯機。正面が今回宿泊した部屋。
シャワールームがこちら。浅草周辺には銭湯も多いので、せっかくなので私は銭湯に入りに行った。
シャワールームの床はピンク色の玉石タイル。
裏の出入口
正面玄関の真反対にある裏の出入口。勝手口かな。
下駄箱らしき家具も置かれている。現在は特に使われていないようだ。
宿泊した部屋が左側。勝手口から近い部屋。
そして全面ガラス戸だった。もちろんカギもついているので安心。
昭和ガラス、特に部屋の中から見るときが綺麗なんですよね~
この部屋を選んでよかったと思う。
宿泊した部屋
今回宿泊した部屋がこちら。電気をつける前。
中央のくす玉のような大きな照明がオシャレ。古い旅館だけど、そんなに古さを感じないのが不思議。
ちなみに窓を開けると勝手口と繋がっている。昔はどういう雰囲気だったのだろう…
電気のスイッチも時代を感じる。
1階の廊下
最後に1階の廊下。扉に松のようなデザインが施されているのが素敵。
また、廊下には共同の冷蔵庫も設置されていた。自分のものには名前が必須。
冷蔵庫が置かれている場所が、もう一つの勝手口。
1階の廊下。こじんまりとした商人宿。館内の見学といっても全部を見終えるにはそんなに時間もかからない。
だが、普通のビジネスホテルなどとは違って、細部の意匠がすべて違う。天井も扉も床も。それぞれに味があるから見ていて飽きないのだ。
観光客として宿泊しているのは私くらいなので館内は静まり返っていた。
夜の台東旅館
宿泊の醍醐味。夜の写真。
闇夜の中、輝くレトロな照明がとても好きだ。
銭湯の帰り、旅館の外観を撮影。
そして、この日は私の22才の誕生日の前日。
誕生日に渋い旅館に宿泊したいという願いが叶った1日であった。周りの大学生は高級ホテルで夜景を見ながら誕生日を過ごす…というのがステータスらしいが、私はこういう旅館で静かな夜を過ごす方が性に合っている。
しかも、一泊2千円という驚異的な安さ。
2023年現在、宿泊料金は一人8千円ほどに変更となっているそうだ。
またいつか宿泊したいな。
(訪問日:2021年7月)
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古い建築物はよいですね。私も大多喜にある「大屋旅館」というかなり古い旅館に泊まったことがありますが、とても良かったです。
このご時世に素泊まり二千円もびっくり!わりと近くなので、機会があれば泊まってみたいです。
ぜひぜひ。2千円はキャンペーン価格なので現在は変わっているかもしれません。