青堀にかつて存在した「カギサ醤油」を辿り。インディアンソース -青堀⑻
富津市大堀。JR青堀駅からの散策途中で見かけた神社の玉垣に「カギサ醤油」という醤油会社の名前があり気になった。
地元の方からの話も伺い、かつて近くに存在したカギサ醤油について調べてみました。
大堀神明社の玉垣に見る老舗
千葉県富津市大堀1616。JR内房線「青堀駅」で降り、国道16号沿いを歩いていると曲がり角に「大堀神明社」が見える。周辺の街並みについては以前紹介したので割愛。→富津・青堀の商店街の街並み。近代建築・旅館・須藤飲料工業所など -青堀⑶
1年ほど前に来た時は何気なく通り過ぎていたが、玉垣に地元企業の名前が沢山連なっているのを見て歴史を知る手がかりになりそうと思い立ち止まった。
上の写真、「(有)須藤飲料工業所」は廃業しているが建物が現存しているローカルジュース製造会社。(有)加治時計店は近年閉店。「浜田屋本店 青堀石油㈱」が気になる。
下、「アサナギ病院」は現在も建物が残っている。「マルヨーのり製造所」は富津市大堀4-11-、海側のかつての海岸線近くにマルヨーのり製造所直売所が現存!現在も工場直売で商品を購入できる。海苔の佃煮購入してみたい。
海苔の名産地・千葉県富津市で、陸にあがった一人の海苔漁師が始めた佃煮づくり。これが「マルヨーのり製造所」の原点です。その海苔漁師とは、私の父。(JREモールふるさと納税より)
下、「ホテル静養園」はつい最近解体になった…
「相模屋海苔店」は1930年頃、創業者が東京の海苔問屋にて修行し始まった老舗。相模屋海苔店は屋号として現在も営業中。
そして一番気になったのが「カギサ醤油株式会社」。
二カ所見かけて存在感もある。千葉県内の醤油醸造所についても調べているので名前が残っているだけでもありがたい。
左側にある「川岸 隠居」も気になるが・・
今は無いお店も、昭和63年までは存在していたことが分かる証。静養園や喜楽館が営業していた頃の青堀を訪れたかった…
カギサ醤油工場跡地(スターレーン周辺)
カギサ醤油株式会社について調べてみよう。
地元の方に話を伺うのが一番早いと思い、商店街沿いにあるお店の方に聞いてみた。
「20年位前に工場は売却されて現在跡地は家が並んでいる。スターレーンというボーリング場の辺りかな。」との事だった。確か、駅前でボーリング場の看板を見かけたがそこが今回の目的地だったとは。
富津スターレーンがあるのはJR青堀駅東口の一角なので、国道から内房線の踏切を超えて住宅街へ。
ボーリング場「富津スターレーン」へ到着。子どもも楽しめる30レーンのボウリング場だそうだ。青堀駅からも近い。
1982年開業とのことなので、今から50年前… 地元の方の話と相違がありそう。
ボーリング場周辺は新しめの住宅街ではある。
昔の住宅地図を見たら一発で分かると思うが「富津市の歴史」のサイトによると解体後に新興住宅街が映っているのでこの辺りだろう。
カギサ醤油の歴史 インディアンソースの復刻!
カギサ醬油の創業は、延享3年(1746年)。宮内庁御用達として、天然醸造醤油を製造し、キッコーマンやヤマサ醤油と肩を並べるほど、国内において代表的な銘柄だったが、平成15年(2003)に廃業になったそうだ。創業から270年。
その特徴は天然醸造にこだわったことだったそうだが、その点仇となり負債を抱えるに至ったのだろうか。
さて「カギサ醤油」であるが、一度でも味わったことのある方はわかると思うが、コクのある濃厚な味で関東人の舌にあった製品であった。それもそのはず、天然醸造にこだわった製品だったのである。通常、大量生産される製品は、「もろみ」を熟成させるために徹底した温度管理を行い、醸造期間を短縮させて製造されるようだが、「カギサ醤油」は温度管理は自然にまかせ、「もろみ」を1年半から2年かけてじっくり発酵させて造られていた。そのために、当然商品価格は、通常の大量生産品と比べるとどうしても高くなってしまう。このため最近では「健康・安全」を前面に、有機栽培による大豆や小麦を原料にしたり、醤油以外の製品開発にも力を入れてきたが、醤油消費の低迷などの影響も受け、ついには平成15年2月に12億円もの負債をかかえ廃業するにいたったのである。『千葉の中堅120社』で「最近の業績」を見ると、1994年から’99年まで、毎年ほとんど利益が上がっていないことがわかる。時代の変化に対応できなかった結果なのだろうが、地域の経済を考えると、非常に残念なことである。
「富津懐古伝」の方の記事には貴重なカギサ醬油工場の写真が掲載されている。瓦屋根の平屋の工場、煙突、そして下見板張りの研究室跡。これは近代建築好きとしても見逃せない建築だ。
また、かねてより不思議に思っていた国道沿いの巨大な邸宅はカギサ醬油の創業者のご自宅と言うことも判明した。
また、カギサ醬油の「インディアンソース」は大正12年誕生、そのカギサ醬油廃業から20年、市場から姿を消したものの、昨年2022年に復刻されたらしい。→和葬空間「 か志゛屋」
また、その記事の株式会社アフリットさんによるコメントで詳細が記載されている。
当社アフリットは農業法人ですが、グループ会社のケンソーは地域密着の建設会社で不動産業も営んでいます。
カギサ醤油さんとの縁で土地と建物とインディアンソースのレシピを譲渡いただきました。
そのレシピを再現・復刻したのが今回の限定復刻インディアンソースです。元祖インディアンソースは今から20年前の商品ですので、詳細を知る人は少ないと思いますが、
当時に詳しい方に話を伺ったところ、カギサ醤油が醤油メーカーとしては日本で初めてウスターソースを作ったそうです。
大正12年(1923年)なので今から約100年前です。
インディアンソースは天皇の料理番としてドラマなどでも知られる秋山徳蔵の目に留まり、
それが機縁となってカギサ醤油は当時宮内庁御用達にもなったそうです。そんな伝説と幻のインディアンソースを再現・復刻しましたので皆様機会があれば是非ご堪能ください。
和葬空間 か志゛屋(かじや本店)は富津公園の方にある会社だそうだが、その本社隣の築100年の家屋からインディアンソースが残っいた。カギサ醬油の土地売却に携わった株式会社アフリットがカギサ醬油のレシピをもらい受けており、今回再現・復刻したそう。この2022年に!凄い~
そして富津で育ちカギサ醬油を知る木更津焼きそばにインディアンソースが届く。100年の時を超えて。復刻版、いつか試してみたい。
最後にJR青堀駅東口にある「古墳の里ふれあい館」で少し休憩。予想外のカギサ醬油の歴史が濃く、調べていてお腹いっぱいになってきた。
(訪問日:2022年6月)
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